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自由電子レーザのシンポジウム、創薬分野などに期待

December 6, 2011, 東京--SACLA(さくら)をテーマとしたシンポジウムが12月3日に丸の内で開催された。SACLAはSPring-8 angstrom compact free electron laserの略で、世界で2台目となるX線自由電子レーザ(XFEL:X-ray free electron laser)である。シンポジウムではSACLAの概要や現在の状況を紹介するとともに、評論家・ジャーナリストの立花隆氏がSACLAの使用によって将来期待される成果について講演した。
SACLAは今まで得ることが難しかったX線領域のレーザ光を発振する全長700mの実験施設。大型放射光施設SPring-8の十億倍と従来光源よりはるかに高い輝度をもつ。またパルス光により瞬間的、かつ現在1μm程度にビームサイズを絞っており局所的な観察が可能。また日本独自の技術により施設の小型化および世界一の短波長を実現している。各種産業および研究利用が期待されている施設だ。
2006年に兵庫県の播磨科学公園都市にあるSPring-8に隣接して建設が開始され、2011年6月に初めて波長0.12nmのレーザ光を観測。現在のSACLAはパルスエネルギーがサブmJ、波長は0.063~0.28nmを実現している。繰り返し周波数は10Hzで、今後60Hzにまで調整する予定だという。 XFELは従来の光源に比べて輝度が桁違いに大きいため、サンプルは基本的にビームを照射した瞬間に蒸発する。レーザなどの光学実験に使われていた従来の検出器やサンプル保持環境は使えず、新しい手法が必要になる。今後も引き続きこれらの開発を進めていく予定。
立花隆氏はとくに生命分野において期待される成果について紹介。なかでも将来的には製薬の分野に革命を起こすことになるだろうという。薬は基本的に、細胞を包む膜の膜タンパク質に働きかけることで効果を得ている。しかし現状では膜タンパク質の構造はわかっておらず、ほとんどの薬が「経験的に効くことは分かっているが、そのメカニズムは分かっていない」(立花氏)。膜タンパク質をXFELで解析できるようになれば、目的の機能を設計する「創薬」が可能になり、大きなインパクトをもたらすだろうという。そのためにもXFELの設計者である物理学者と生命分野の研究者が協力して実験環境を構築していくことが必要だと述べた。

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