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東大、光の進行方向によって吸収量が変わるエレクトロマグノンを発見

December 6, 2011, 東京--東京大学 大学院工学系研究科の十倉好紀教授とJST戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「十倉マルチフェロイックスプロジェクト」の高橋陽太郎研究員の研究グループは、マルチフェロイックスと呼ばれる磁石の性質(磁性)と分極(強誘電性)が共存する物質に光をあてたときに、光の進行方向を反転させると、光の吸収量が変化する方向2色性という効果が巨大になることを発見した。
通常の物質では、光を表から入れても裏から入れても、光吸収率などの光学応答に差は出ないが、磁性と強誘電性とを併せ持つ物質では、光が表から入った場合と裏から入った場合とで光の吸収率が異なる光学応答を示すことがある。
今回の研究では、磁化の振動でありながら電場に対して応答するエレクトロマグノンと呼ばれる励起状態が、マルチフェロイックス物質群に広く存在することを発見した。
このエレクトロマグノンは強誘電分極と磁化が結びついた振動で、ギガヘルツからテラヘルツの周波数帯に現れる。このエレクトロマグノンでは、物質中で対向して進む光の間で2倍以上の非常に大きな光吸収係数の差が生じることが分かった。さらに、強誘電分極、磁化のいずれかの方向を反転させると、光透過率の光方向依存性が入れ替わることを確認した。
このエレクトロマグノンは物質や磁場を選ぶことでギガヘルツ(GHz)からテラヘルツ(THz)帯まで周波数が変わり、方向2色性の大きさも同時に制御することができる。また、外部の磁場や電場で吸収係数のオン・オフを切り替えることができるため、GHz帯の高速通信用の素子などへの展開が期待される。
研究グループは、代表的なマルチフェロイックス物質であるマンガン酸化物Eu0.55Y0.45MnO3において、新しいエレクトロマグノンを観測した。このエレクトロマグノンは強誘電分極の振動と、それと強く結びついた磁化の振動から成っていて、GHzからTHzの周波数帯に現れる。このような励起状態の存在は、近年新たなマルチフェロイックス物質が発見されたことにより理論的に予言されていたが、これまで実験的には観測されていなかった。研究グループによると、今回の発見は、エレクトロマグノンが広くさまざまなマルチフェロイックス物質に共通して存在していることを示すものであると言う。
物質中で強誘電分極と磁化が直交すると、両者に対して垂直に進む光は、進行方向の左右の違いでそれぞれ透過率が異なる応答を示す。このような条件下で今回発見したエレクトロマグノンによる光の吸収を観測すると、対向する光の間で2倍以上の吸収係数の差を持つ巨大な方向2色性が確かに観測された。この方向2色性は強誘電分極、磁化の方向のどちらか一方を反転させることで、その光透過率の方向依存性が入れ替わる。この現象は、電気磁気効果(物質中で磁化と電気分極が相互作用する現象)によって説明がつく。通常の電気磁気効果は静的な分極と磁性の間の現象として観測されるが、今回発見されたエレクトロマグノンは、マルチフェロイックスに特有の巨大な電気磁気効果をギガヘルツからテラヘルツ帯での高速運動を示す動的過程に拡張したものであるということができる。
(詳細は、2011年12月4日発行Nature Physics)

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