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産総研、生体内で発電できる光熱発電素子を開発

November 7, 2011, つくば--産業技術総合研究所(産総研)健康工学研究部門ストレスシグナル研究グループ、都英次郎研究員の研究グループは、光によって容易に発熱可能なカーボンナノチューブ(CNT)の特性(光発熱特性)を熱電変換素子に組み入れることにより、生体内で発電できる新たな光熱発電素子を開発した。 CNTは、ナノ炭素材料の一つとして大きな注目を集めているが、溶媒に分散しにくい点が応用上の制約となっていた。今回、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いると、CNTをシリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン;PDMS)中に均一に分散できることを見いだした。このCNTを分散させた樹脂は生体透過性の高い近赤外レーザ光によって発熱する。この樹脂フィルムをビスマス-テルル型の固体熱電変換素子の表面に接合した光熱発電素子は、近赤外レーザ光によって樹脂フィルムが発熱して熱電変換素子に温度差を生じ、それによって体内で効果的な熱電発電動作を示した。今回開発した光熱発電素子により、心臓ペースメーカーなどの数多くの体内埋め込み型やウェアラブル型医療機器などへの光による遠隔電力供給システムの実現が期待される。 生体内に埋め込まれたデバイスなどに電力を遠隔から供給するためには、周辺の臓器等へ影響が少なく、生体透過性の高い近赤外光を利用することが望ましい。産総研はそのため、CNTを近赤外光で発熱させ、それによって生じる温度差で熱電変換素子に発電させるという新しいメカニズムによる光熱発電素子を作製した。光発熱層としてCNT-高分子複合材料を用いるが、CNTをそのまま高分子材料中に分散させようとすると、CNT間の強い相互作用により、束状や粒状に凝集する。今回、導電性ポリマー[P3HT]を用いて、単層CNT(SWCNT)をシリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、PDMS)中に分散させることに成功した。 P3HTは、SWCNT表面との親和性が非常に高く、表面に吸着してSWCNT間の強い分子間相互作用による凝集を防ぎ、SWCNTをPDMS中に分散させる。また、このCNT-高分子複合材料は柔軟性や加工性が非常に高いため、熱電変換素子表面への接合が容易。作製したP3HT-SWCNT-PDMS複合材料に近赤外レーザ光を照射するとCNTの光発熱特性によりレーザ光による温度上昇が観察できた。 作製したP3HT-SWCNT-PDMS複合材料をビスマス-テルル型熱電変換素子表面にコーティングして、最小で幅4.0 mm×高さ4.0 mm×厚さ4.4 mmの小型光熱発電素子を作製し、レーザによる発電量を検証。試作した素子に各種レーザ光を30分間照射すると、熱電発電動作を示し、各レーザ出力に応じて効果的に電気エネルギーを得ることができた。また、SWCNT、多層CNT(MWCNT)、グラファイト、フラーレン(C60)などのさまざまな炭素材料を用いた場合の発電量を比較し、P3HTによってPDMS中に高分散化させたSWCNTが最も高い発電量(≒185 mV)を与えることが明らかとなった。 研究チームは、このCNT光熱発電素子を用いることで、生体外においてゼブラフィッシュの心筋を効果的に電気刺激できることを見いだした。さらに、この光熱発電素子をラット背面に埋め込みレーザ光を30分間照射し、生体内においても発電動作が起こることを実証。また、CNTの光発熱特性により、ラット体表面(素子埋め込み部位)の温度が30℃から40℃付近まで上昇することがわかった。このとき、この光熱発電素子は、生体外と同様の発電挙動を示し、P3HT-SWCNT-PDMS複合材料を用いたときには、最大の発電量(≒8 mV)が得られることがわかった。 研究チームは今後、CNT-高分子複合材料や熱電変換材料のナノ構造制御、レーザの効率的な照射システムの構築などによって、素子自体の光熱発電効率のさらなる向上を目指している。同時に素子の生体適合性評価や耐久性試験を行い、生体内で安心・安全に利用できる光熱発電素子の開発を目指す。 (詳細は、www.aist.go.jp)

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