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Caltech研究者がフォトニックチップ技術の難問を解決

August 8, 2011, Pasadena--Caltech(California Institute of Technology)の研究者たちは、シリコンチップ状の光信号を分離する新技術に関する論文「シリコンフォトニック回路における非相反光伝搬」(Non-reciprocal light propagation in a silicon photonic circuit)をScience August 5に発表した。
同誌掲載の論文によると、アイソレートされた光は一方向にしか伝搬しない。光がアイソレートされていないと、フォトニック回路上の異なるコンポーネント間で送受される信号が相互に干渉し合い、チップが不安定になる。電気回路では、ダイオードデバイスが電流を一方向にのみ流し、他の方向には流さないようにすることで電気信号をアイソレートする。研究の目的は、フォトニックアナログダイオード、つまり光アイソレータデバイスを実現すること。Caltech電気工学ポスドク、Liang Feng氏によると、このようなデバイスは20年前から研究されていた。
通常、光ビームの特性は、前進するときと反射されて戻ってくるときと全く同じだ。光をアイソレートするためには、その光が反対方向に進むとき何らかの方法でその特性を変える必要がある。光アイソレータは、この変えられた特性を持つ光をブロックすることができる。つまりチップ上で光信号は一方向にしか進めない。
光ビームの特性が同じなら、対向して立つ2人の人間は相互に相手を見ることができるが、Feng氏は、「自分の方から相手を見ることはできるが、相手からはこちらが見えない何かを造りたい」と説明する。つまり、信号が片方向にしか進まない、こちら側のデバイスがアイソレートされている。言い換えると周囲から影響を受けないということになる。したがって、このようなデバイスは安定している。
光波のモードは電磁場の力線に対応しており、これが波を作っている。新しい導波路では、光はある1つの方向には対称モードで伝搬するが、その反対方向には非対称モードに変わる。光のモードが異なると相互干渉しないので、2つの光ビームは相互に通り抜けるだけとなる。
従来、この種の光アイソレーションを実現するには主に2つの方法があった。1つは1世紀ほど前に開発された方法で、磁場を利用する。磁場は、光が逆方向に伝搬する時、光の偏向(光の電場の方向)を変える。これは、ある方向に進む光が逆方向に進む光と干渉しないようにするためだ。「問題は、コンピュータのそばに大きな磁場を設置できないことだ」とFeng氏は言う。
2つ目の方法は、いわゆる非線形光学材料を用いて、偏向ではなく周波数を変える方法だ。この方法は約50年前に開発された。集積回路のベースになるシリコンが線形材料であるという点が問題になる。コンピュータが非線形材料で作られた光アイソレータを使うことになると、シリコンはリプレースされることになり、全てのコンピュータ技術が全面改定になる。しかし、この新しいシリコン導波路によって、研究者たちは初めて線形材料で光をアイソレートすることができた。
この研究成果は原理実証実験ではあるが、研究者たちはシリコンチップに集積できる光アイソレータの作製にとりかかっている。光アイソレータは、集積タイプのナノスケールフォトニックデバイスやコンポーネントの実現に不可欠である、これによって将来、チップ状に集積情報システムが実現可能となる。現在、最先端のフォトニックチップは10Gbpsで動作する。次世代のチップは、40Gbpsで動作するようになる。しかし、光アイソレータを組み込めないとすれば、そうしたチップは電子回路に比べて遙かに単純なものにしかならず、市場に出せるようなものではない。今回、研究者たちが設計したような光アイソレータは、実用的なフォトニックチップの商用化を左右するものと言える。

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