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産総研、高温溶融材料の屈折率を簡便に測定する装置を開発

July 12, 2011, つくば--産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門メゾ構造制御グループ桑原正史 主任研究員は、高温溶融材料の屈折率を簡便に測定する装置を開発した。
共同研究者は、サーモ理工の森笠福好技術開発部長、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(ウーラム社)堤浩一テクニカルチーフ、東京工業大学(東工大)大学院理工学研究科 材料工学専攻 須佐匡裕教授、遠藤理恵 助教。
この装置は、サーモ理工社の赤外線加熱技術、ウーラム社の分光エリプソメーター技術、産総研と東工大による高温溶融材料の封じ込め技術を融合して開発したもので、従来の装置に比べて簡便に高温溶融材料の屈折率を測定できる。これにより、光情報デバイスの開発や金属精錬プロセスの精密制御への貢献が期待される。
産総研は、サーモ理工社、ウーラム社、東工大と協力し、屈折率評価法の開発に取り組んできた。それぞれの主な役割は、サーモ理工社は加熱部や加熱炉の開発、ウーラム社は光学系や解析方法の開発、東工大と産総研は試料調製法、機器設計、高温溶融用セルの開発など。今回、光ディスクの記録材料について、高温で溶融した状態の屈折率測定に成功した。
新開発の装置では、試料の加熱には赤外線加熱装置を用いた。これは最大消費電力2 kWの強力なランプから放出される赤外線を試料に集中させることで、温度を急速に1000 ℃以上に上げる装置。赤外線ランプから出た赤外線は、回転楕円ミラーによって集められ、石英のロッドへ導かれる。赤外線は石英ロッド中を通り、下端から放射されて試料を加熱する。ヒーターなどの発熱体を用いて加熱すると、試料周辺まで加熱してしまうため、断熱材などが必要であり、装置が大掛かりとなるが、赤外線加熱は集中して試料を加熱できるため、非常にコンパクトな構成で済む。屈折率の測定は分光エリプソメーター(ウーラム社製M2000)。このエリプソメーターは非常に高感度であり、表面の原子一層分の屈折率でも測定できる。
安定に測定するために、高温で溶融している材料の取り扱いが課題となっていた。1つは、高温で溶融している材料は、蒸発や酸化が生じるため大気中では加熱できないこと。産総研と東工大は、試料を石英で作製した容器(石英セル)に真空封入することでこれを解決。容器の形状や厚さ、作製方法を最適化した結果、十分に測定に耐えられる容器を作製できた。2つ目の課題は、分光エリプソメーターの測定に必要な平坦面を作り出すこと。面が平坦でないと、照射された光が散乱されて測定できない。この課題については、溶けた試料が重力により容器の底に沿って平らになることを利用して平坦面を測定することで解消。多角形プリズムの全反射を利用して光を石英セルの底面に導き、試料からの反射光も多角形プリズムで検出器へと導いた。鏡ではなくプリズムを用いた理由は、鏡を用いると鏡の材料による情報が試料による情報と重なり解析できないため。プリズムの全反射の場合は、測定結果から一定値を差し引くことで解析できる。既知の屈折率のシリコン基板や金の薄膜について今回開発した装置を用いて測定と解析を行い、測定値がこれまでに報告されている屈折率と同じであり、プリズムを用いた光の導入系に問題がないことを確認した。
産総研では、装置をより使いやすく小型化し、2年後の実用化を目指している。ウーラム社より国内外の金属精錬メーカーや光ディスクメーカーに提供される予定。また、高温溶融状態での材料の屈折率測定を進め、理論的な計算(第一原理計算)を併用し、屈折率の変化を物理的な面からも解析する予定。
(詳細は、産総研またはThe Joint International Symposium on Optical Memory and Optical Data Storage Topical Meeting (ISOM/ODS 2011))

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