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物質・材料研、人間のように記憶も忘却もする新しい脳型素子を開発

June 28, 2011, つくば--NIMS国際ナノアーキテクトニクス拠点は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校と共同で、脳の神経活動の特徴である2つの現象「必要な情報の記憶」と「不要な情報の忘却」をたった一つの素子で自律的に再現する新しい素子“シナプス素子”の開発に世界で初めて成功した。
開発にあたったのは、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、大野武雄 博士研究員、長谷川剛主任研究者、青野正和拠点長らの研究グループと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校J. ジムゼウスキー教授。
現在のコンピュータシステムは高性能化の限界が近付いているとされ、さらなる高性能化には脳型回路・脳型コンピュータの開発が必要とみられている。その実現に不可欠なのが今回の素子で、いわば1つ1つの神経細胞に相当する。人間の脳は、情報の入力頻度が高いほど確実に記憶し、逆に入力頻度が低ければ曖昧な記憶しか形成されずに忘却する。これらの仕組みは脳の神経回路におけるシナプスの結合強度の変化によって実現されていると考えられている。
今回実現したシナプス素子は、電気信号の入力頻度によって自身の結合強度を調節することができる。信号強度とその入力回数が同じであっても、入力頻度の高い信号は長時間持続する高い結合強度を誘発し、入力頻度の低い信号は一時的にのみ結合強度を増大させる。このようなシナプス素子の動作は脳内におけるシナプスの結合強度の変化とよく一致することが分かった。
シナプス素子は、金属電極とイオン・電子混合伝導体電極で構成。電気信号の入力頻度に依存したイオンの動きを利用し、電極間に形成される金属原子架橋の状態(シナプスの結合強度)を制御することに成功した。
神経回路の重要な構成要素であるシナプスの人工的な再現は脳型回路や脳型コンピュータにとって不可欠。複雑な回路やソフトウェアによって実現されていた従来の人工シナプスは、予め設計された通りの動作しかできない。シナプス素子は事前の動作設計無しに多様な動作が可能であることから、将来、まるで人間のように経験によって賢くなる人工知能の構築に大きく寄与することが期待される。
(詳細は、2011年6月27日2:00英国科学雑誌「Nature Materials」オンライン速報版)

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