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NICT、光通信理論のビット誤り率限界を世界で初めて打破

June 28, 2011, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、産業技術総合研究所(AIST)及び日本大学と共同で、光通信のための新しい原理の量子受信機を開発し、光通信理論のビット誤り率限界を打破する実証実験に世界で初めて成功した。
将来、この量子受信機を実用化し、これまでの光通信の受信機と置き換えることで、光ファイバ中の送信電力を上げずに大容量の通信が可能になるほか、宇宙空間での超長距離通信にも有効となる。
光通信の性能は、0と1の信号を識別する際のビット誤り率によって決まる。ビット誤り率は、伝送システムの雑音を除去することで小さくできるが、それでも原理的に消せない雑音(量子雑音)が存在する。このため、従来の光通信理論では、ビット誤り率はある一定の限界(ショット雑音限界)より小さくすることはできないとされている。一方、量子通信理論では、量子雑音を制御することができれば、ビット誤り率をさらに低減できることが知られていたが、信号を受信する過程での量子雑音制御は技術的に難しく、ショット雑音限界を打ち破るような量子受信機は、これまで実証されていなかった。
今回、NICTは、光を波として制御する従来の光通信技術に、粒子(光子)としての性質までも制御する技術を加えることで、量子雑音の影響を減らす受信方式(量子受信機)を発案した。この量子受信機に、AIST及び日本大学が開発した世界最高感度の光子数検出器(超伝導転移端センサ)を組み込み、光通信理論のビット誤り率限界(ショット雑音限界)を打破することに世界で初めて成功した。
今回の成果についてNICTは、「従来の理論限界を超えるもので、超長距離・低電力・大容量の量子通信の実現に向けた大きな突破口となるもの」と説明。さらに、今後の展望として、「この量子受信機を現在のコヒーレント光通信の受信機に置き換えて、既存の光ネットワークインフラに組み込めば、低電力で大容量の通信が実現できる」とNICTは考えており、当座の目標として「10年後をめどに衛星-地上間の光通信の高性能化に利用できるよう開発を進める」としている。
これ以外での展開では、同技術が極めて高精度に光子を検出できることから、「光エネルギーの計測標準技術などへの適用」、「長距離光ファイバ通信の中継増幅器の数の削減、光ファイバ中の送信電力を上げずに、通信の大容量化を実現すること」等を挙げている。
(詳細は、米国物理学会速報誌「Physical Review Letters」(米国時間6月24日付オンライン及び誌面))

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