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NTT、光ファイバ網の伝送品質劣化区間を検出する新技術を開発

March 16, 2011, 東京--日本電信電話(NTT)は、光ファイバ中継網において、伝送品質劣化の一因となる偏波モード分散(PMD)が高い区間(高PMD区間)を把握する、位相雑音補償光周波数領域反射計(PNC-OFDR)技術を開発した。
従来のC-OFDR技術では、高PMD区間を検出可能な測定距離は2km程度にとどまっていましたが、新方式を使うことで従来の20倍近い40kmの光ファイバ長でも高PMD区間をピンポイントで検出することができる。
同成果は、中継ビル間が80km程度である通常の光ファイバ網構成において、両端から測定することにより、光ファイバ網全体の高PMD区間を検出することができることから、光ファイバ網の品質向上、効率的な光ファイバケーブルの運用が期待される。
光ファイバケーブルは、光の複屈折という現象によりPMDが発生する。特に光ファイバの黎明期に敷設されたケーブルには高PMD区間が存在する場合があが、当時は通信速度が数Gbps程度とあまり高速でなかったことから、高PMD区間による影響はほとんどなかった。
ここ数年の間に、ネットワーク上で伝送される情報量は爆発的に増加し、それに伴って光ファイバネットワークがめざましい勢いで高速化されたことから、高PMD区間の存在による伝送品質への影響が顕在化してきた。そのため、NTTのアクセスサービスシステム研究所(NTT研究所)では、高PMD区間を検出し、該当部分の光ファイバケーブルの張替えを実施することで、伝送品質の維持と効率的な光ファイバケーブルの運用を図ることができるよう、高PMD区間検出技術の研究を進めてきた。
NTT研究所では、光ファイバの新たな計測技術であるPNC-OFDR方式を開発したことにより、光ファイバから発生する微弱反射光を、長距離のファイバの中からも高精度で測定することに成功し、世界最高水準の距離分解能を達成した。
OFDRは光ファイバからの微弱散乱光を高精度に計測する技術として従来より知られていたが、微弱散乱光を検出するためにファイバの中に送り込む光源に混在する雑音が、長距離のファイバの測定においては検出を阻害するため、同方式で測定できるファイバ長は2km程度とされていた。今回NTT研究所は、位相雑音補償(PNC)という手法を使い、光源に混在する雑音を取り除くことで、約40kmの光ファイバ長でも高PMD区間を検出することに成功した。
新開発のPNC-OFDR技術による測定試験では、実験室で、測定距離40kmの場合に2cmの分解能を達成。また、フィールド環境の試験においても、測定距離40kmで分解能5cmという、実験室の場合とほぼ同等の世界最高水準の性能を確認している。

高PMD区間検出技術
高PMD区間特有の極めて短い偏波変動周期を観測することで当該区間を特定できる。高PMD区間の偏波変動周期は、数十cm程度であり、かつ中継網を測定対象とするため、数cmレベルの分解能にて40km以上を探索可能な光反射計が必要であり、PNC-OFDRは測定距離40kmにわたって5cmの分解能を実現しているため、高PDM区間の特定が可能になった。

長距離高分解能反射計技術
従来のC-OFDR技術は光源の波長揺らぎ(位相雑音と呼ばれる)の影響で、測定距離が長くなると分解能が著しく劣化し、長距離に渡って高精度な測定を実施することが困難だった。PNC-OFDRはその位相雑音を光干渉計でモニタリングしながら測定を行い、モニタした位相雑音の情報を元に測定信号から計算処理で雑音成分を取り除く。これにより、通常2km程度に制限されてしまうOFDRの高分解能測定可能な距離を40kmまで拡大した。
今回得られた成果では、測定可能距離が40kmであるため、中継区間が80kmまで延伸している現在の伝送路においては、両端からの測定が必要となる。NTT研究所は、今後、測定距離を80kmまで延伸し、片端からの測定のみで検出可能になるよう研究を進める。同時に、一層の検出精度の向上に向け、研究開発を推進し、2~3年後の実用化を目指している。また、PNC-OFDRは、光ファイバ網のPMD区間検出に応用可能であるだけでなく、光ファイバケーブルの製造時におけるPMD 検査のほか、温度や歪みの検出機構として各種製造装置や常時モニタリングシステムなどへの応用が可能であるため、NTTは「産業界へ広く普及できるよう多分野への幅広い技術の応用を模索していく」としている。

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