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産総研、世界最高速の光可変分散補償動作を実証

September 30, 2010, つくば--産業技術総合研究所(産総研)を拠点とする「光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点」(産総研拠点)においてネットワークフォトニクス研究センター光信号処理システム研究チーム、並木周研究チーム長、谷澤健 特別研究員は、産総研拠点協働機関であるトリマティスと共同で、マイクロ秒オーダーで高速動作する光可変分散補償技術を開発した。
 光ファイバ伝送の阻害要因である波長分散(CD)を自動で取り除く技術である可変分散補償は、従来技術では原理的に高速動作が不可能であった。これに対して産総研は新しい原理に基づく独自のパラメトリック可変分散補償方式を提案してきたが、同方式にトリマティスの小型波長可変レーザの高速制御技術を適用することによって、従来技術の100分の1以下であるマイクロ秒(μs)オーダーの応答時間を達成した。この成果は、産総研が推進する将来の高精細映像情報を極低エネルギーで転送するダイナミック光パスネットワーク技術開発に貢献する。
 パラメトリック可変分散補償方式の応答速度は、波長変換のために高非線形ファイバファイバの四光波混合を励起する光(ポンプ光)の波長切り替えの応答速度に依存する。産総研は、およそ10μs程度で波長の切り替えが可能な小型波長可変光源の高速制御を開発し、これを用いた高速パラメトリック可変分散補償装置を開発した。
 信号光(周波数ω0)は、前段の波長依存分散媒質を伝搬後に、高速・小型波長可変光源からのポンプ光(周波数ωp)とともに高非線形ファイバファイバを伝搬する。縮退四光波混合により、ポンプ光の周波数ωpを変えることで、ω1=2ωp-ω0の関係を満たす周波数ω1の変換光を得ることができる。光フィルタで変換光のみを選択的に取り出し、後段の波長依存分散媒質を伝搬することで、変換光は、変換波長に応じた分散を受ける。この構成が補償する分散は、ω0の周波数における前段の分散媒質の分散と変換後の周波数1における後段の分散媒質の分散の差となる。高速・小型可変光源を用いることで、ポンプ光の波長の切り替え、つまり、分散の可変補償を高速に行うことが可能となる。
 この技術を用いて、距離の異なる2つの光ファイバ伝送路を通った光信号が、光スイッチで切り替わり交互にパラメトリック可変分散補償装置に入射する場合に、それぞれの伝送光ファイバの異なる分散を可変補償する伝送実験を行った。光スイッチによる経路の切り替えで、異なる分散による影響を受けた信号光が交互にパラメトリック可変補償装置に入射する。実験では、パラメトリック可変分散補償装置の波長依存分散媒質として、前段に9.31km、後段に7.82 kmの分散補償ファイバ(DCF)を用いた。高速波長可変レーザからは、2つの波長のポンプ光が光スイッチに同期して交互に出力され、信号光とともに高非線形ファイバを伝搬し、信号光が波長変換される。変換光は、後段の分散補償ファイバ(DCF-b)を伝搬することで、それぞれの波長に応じて可変分散補償される。ポンプ光の波長は、両伝送路の分散を適切に補償するようにそれぞれ設定した。
 伝送状態を評価するために分散補償後の光信号のビットエラーレート(BER)測定を行った。このように、光スイッチによる切り替えを行う場合、エラーフリー伝送の実現には、光スイッチの応答時間とパラメトリック可変分散補償装置の応答時間、ビットエラーレート測定装置の測定開始に要するクロック同期時間の合計より長いガードタイムを設定する必要がある。光スイッチの応答時間が300ns、開発した高速制御を用いた波長可変レーザの応答時間がおよそ10μs、BERTのクロック同期時間がおよそ100μsであることから、ガード時間を125μsに設定して測定。BERが<10-9となるエラーフリーの良好な伝送特性をそれぞれのルートにおいて確認。また、スイッチングを行わない状態での測定も参照データとして取得し、これらの間に大きな相違がない、つまり、パラメトリック可変分散補償装置を用いて高速な可変分散補償ができることを確認した。開発した高速パラメトリック可変分散補償装置単体の応答時間は、高速・小型波長可変レーザの波長切り替え速度から見積もられ、およそ10μs程度であった。
 今回の成果で、産総研独自の新しい可変分散補償技術の原理的な優位性が示された。今後は、波長可変光源の高速化によるパラメトリック可変分散補償のさらなる応答速度の向上と、より多数の光パスが複雑に切り替わる状況での実証を行う予定。

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