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光スイッチの消費エネルギーを世界最小化

May 7, 2010, 東京--日本電信電話(NTT)と科学技術振興機構(JST)は、光を極小領域に強く閉じ込めることが可能な性質を持つフォトニック結晶と呼ばれる人工周期構造を用いて、超小型の光スイッチを作製し、アトジュール領域の極小エネルギーでのスイッチ動作に初めて成功した。
 この消費エネルギーはこれまでに報告されている光スイッチと比べて200分の1以下の値。従来の光スイッチは、スイッチ速度の高速化と低消費エネルギー化がトレードオフの関係にあるため、高速でかつ低エネルギーで動作させることが困難だった。今回開発した光スイッチは超小型のフォトニック結晶光ナノ共振器を利用して素子のサイズを大幅に小型化し、高速でかつ極低エネルギーで動作するスイッチングを実現した。
 これまでもフォトニック結晶を用いた光スイッチの初期的な研究は行われていたが、今回の素子では、(1)スイッチングのエネルギー効率が高いInGaAsPを採用し、(2)光共振器構造として共振器有効体積が1立方μmの40分の1の大きさの超小型フォトニック結晶ナノ共振器を用いて光スイッチを作製したために、素子の超小型化及び大幅なスイッチングエネルギー低減が可能となった。
 素子は、420アトジュールのエネルギーの光制御パルスよって、信号光の透過強度を20〜40ピコ秒(ps)の時間内2分の1に遮断するスイッチする動作(660アトジュールでは10分の1に遮断)を達成。また、同様の素子により40Gbpsの連続パルス列から、特定ビットを選択するスイッチ動作にも成功した。
 これまでの通常の光スイッチは1ピコジュール(1アトジュールの百万倍)以上のエネルギーを必要としており、フォトニック結晶を用いた光スイッチでも 0.1ピコジュール程度のエネルギーが必要とされていたが、今回NTTの研究所が開発した素子は、消費エネルギーを通常素子と比べて1000分の1以下、これまでのフォトニック結晶型素子と比べても200分の1以下に低減し、アトジュール領域でのスイッチ動作を達成している。
 10Gbpsで動作するスイッチを1チップ上に1万個集積することを考えると、消費エネルギーが1ピコジュールであれば、1万個集積した場合消費パワーが100Wにもなるが、この素子の場合では、1万個集積しても100mW以下で済む。サイズだけでなく消費エネルギーの観点からも大規模集積化に向いていることがわかる。
 マイクロプロセッサチップの中に光情報処理ネットワークを導入するためには、高速動作する光素子を1チップの中に多数個集積することが必要となるが、その目的のためには単体素子のサイズと動作エネルギーが鍵となる。今回開発した光スイッチは、高速動作を保ったまま小型化と低エネルギー化を同時に達成しており、本格的なチップ内光集積の可能性を切り開くものと言える。
 今後光共振器をさらに小型化し、光閉じ込め性能を高くすることにより、光スイッチの消費エネルギーをさらに下げることを目指すとともに、光スイッチだけでなく光メモリ、レーザ、受光器といった他の光デバイスの超小型化、低消費エネルギー化を、フォトニック結晶をベースにして進める予定。それらの技術をもとに、小さなマイクロプロセッサチップの中に様々な機能を持った高速光素子を多数個連結して集積する技術を開発し、消費エネルギーが小さな大容量情報処理チップの実現を目指している。

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