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産総研、半導体内部の発光を世界最高効率で外部へ取り出すことに成功

March 23, 2010, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ナノテクノロジー研究部門近接場ナノ工学研究グループの王学論主任研究員は、表面にリッジ(うねり)構造を作製し、さらに酸化シリコン薄膜(SiO2)をコーティングすることで半導体の内部で発生した光を世界最高効率で空気中に取り出せることを発見し、そのメカニズムを解明した。
 半導体材料の屈折率は一般に空気より大きいため、半導体と空気との界面では、光の全反射現象が起こることが多い。そのため、半導体の中で発生した光を高い効率で空気中に取り出すことが極めて難しい。
 これまでに、半導体材料の表面に微小なリッジ構造を作製することで光の取り出し効率が向上することを見出していたが、今回、さらにリッジ構造の表面上に半導体より屈折率の小さいSiO2などの薄膜を堆積させるという簡単な方法によって、半導体の発光を従来の構造に比較して1.5倍以上の効率で外部に取り出せることを発見した。この方法は、さまざまな半導体光デバイス、特に21世紀の省エネルギー照明・表示用光源として期待されている発光ダイオードの高効率化技術として期待できる。
今回作製した試料は、微小なV字型の溝を持つGaAs基板上に有機金属気相成長法を用いてGaAs/AlGaAs系のナノ構造が形成されている。隣接する2つのV字型溝の間に、1つの平たん面と2つの傾斜面によって構成される微小なリッジ構造を形成。平たん面の横幅は約0.5 µm。この試料の表面に厚さ約150 nmのSiO2膜をプラズマCVD法によって堆積した。
この試料の発光特性をフォトルミネセンス法で評価し、リッジ平たん面の下に形成したGaAs量子井戸発光層の発光強度が、SiO2膜をコーティングしていない場合に比べて約1.7倍強くなっていることを確認した。これは、SiO2膜によって光の取り出し効率が増大したため。このような発光強度の増大は、100〜600nmの非常に広いSiO2膜厚範囲にわたって観測された。また、室温においても同様な効果が確認されている。発光強度の空間分布データを定量的に解析した結果、SiO2膜が堆積されている試料の光取り出し効率はSiO2膜のない試料に比べて1.5倍以上に達していることがわかった。これは、GaAsやAlGaInPなどの屈折率の大きい半導体材料(屈折率>3)では、これまでにない光取り出し効率。
 SiO2膜による光取り出し効率増大現象のメカニズムは、電磁波強度の理論シミュレーションにより解明した。SiO2膜が存在する場合、半導体とSiO2膜およびSiO2膜と空気という2つの界面のそれぞれでエバネッセント光が発生。これによって、リッジ平たん面でのエバネッセント光の干渉効果が増強され、空気中に取り出される光の量が増えると考えられる。
 今回発見した現象は、SiO2膜に限定したものではなく、半導体層より屈折率の小さい材料、例えば、LEDの電流拡散層として広く使われているITOや酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜によっても生じる。この成果を利用することによって、既存の LED作製プロセスを変更することなく、高い光取り出し効率を実現することが可能になる。
今回の成果は、GaAs/AlGaAs系材料のフォトルミネセンス法による評価によって得られたものであるが、産総研は「今後は、可視光LEDに重要なAlGaInP 系およびGaN系材料において同様な現象を発現させるとともに、それを利用した光取り出し効率の極めて高い超高効率半導体発光ダイオードの開発を行う」としている。
(詳細は、www.aist.go.jp)

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