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ダイヤモンドLEDで殺菌を確認

February 9, 2010, つくば--産業技術総合研究所(産総研)エネルギー技術研究部門、山崎聡主幹研究員および電力エネルギー基盤グループ牧野俊晴研究グループ員らは、ダイヤモンド半導体を用いた紫外線LEDの高出力化に成功し、岩崎電気株式会社技術研究所と共同で大腸菌の殺菌を確認した。この研究には、物質・材料研究機構(物材機構)、株式会社シンテックも協力している。
新型インフルエンザなど世界的な流行性疾患の増大傾向から、社会や生活の中での殺菌の必要性が今後ますます増していくものと考えられている。殺菌手段の中でも紫外線による殺菌はドライ方式で多くの場面で使われており、水銀灯による紫外線が利用されている。しかし、環境に好ましくない水銀を使うことや装置が大掛かりなことから、水銀フリーで手軽に殺菌できる紫外線LEDの開発が望まれている。LED照明はクリスマス電飾など省エネ的な光源として利用が広まっているが、紫外線発光するLEDはまだ実用化していない。水銀を使わない紫外線LEDの開発ができれば、どこでも簡便に使える殺菌灯として応用できる。
 産総研では究極の半導体と呼ばれるダイヤモンド半導体の高品質化を進め、電子デバイス応用を目指した研究開発を進め、励起子と呼ばれる状態を使った新原理で235 nmの波長をもつ紫外線の光を発するLEDの開発を進めている。今回、ダイヤモンドの品質の向上とデバイス構造を改良することにより、0.3 mWという実用化に近づく発光出力を持つダイヤモンドLEDの開発に成功し、実際に大腸菌を殺菌することを確認した。この成果は、どこでも使える殺菌灯として実用化が期待されている。
 ダイヤモンドは半導体としての性質でも優れた性質を持っていることは知られていたが、高品質化や加工が困難であったため、シリコンのように応用されることがなかった。産総研の研究グループはダイヤモンドの作製技術から電子デバイスに必要な技術やダイヤモンドの物理に関する知識を蓄積してきた。その積み重ねに基づいて、ダイヤモンドの最初の電子デバイス実用化を目指して、ダイヤモンドに特徴的な励起子と呼ばれる状態を使って高効率の紫外線発光に成功した。この新原理LEDの光は波長235 nmであり殺菌に有効な紫外線。今回、ダイヤモンドのさらなる高品質化とデバイス構造の改良により、発光効率の向上に成功し、殺菌に有効なことを実証した。
 今回開発したLEDは、n層、i層、p層からなる3層構造。チタン電極を裏側は全面に、また、表側は直径0.15 mmの円状に堆積した。これらの構造体は産総研の培ってきた技術であるマイクロ波プラズマCVD法によって作製した。
 動作原理は発光層であるi層にn層側からは負の電荷をもった電子が流れ込み、p層側からは正の電荷をもった正孔が流れ込み、励起子と呼ばれる電子と正孔のペアーが生成される。ダイヤモンドLEDはこの励起子が消滅するときにi層で発生する光を利用する。一般のLEDは負の電荷をもった電子と正の電荷をもった正孔が直接消滅するときの光を利用するのに対し、ダイヤモンドLEDは励起子を利用した新しい原理のLEDであるという特徴を持っている。
 今回の構造ではi層で発光した光のほとんどは電極に遮蔽されて内部で吸収されてしまい、電極の周りから漏れる発光だけによって殺菌されていることがわかった。それでも殺菌能力の確認ができる程度の光強度はあることがわかった。
産総研では「今後はデバイス構造を改良することにより、発光強度をさらに増強していき、短時間での殺菌を実証し、ダイヤモンド紫外線LEDの実用化に繋げたい」としている。
(詳細は、www.aist.go.jp)

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