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通常のチップ製造プロセスで光チップを設計

November 30, 2009, ケンブリッジ--MITの電子/マイクロシステム技術研究所のVladimir Stojanovic 教授とRajeev Ram教授の研究グループは、通常のチップ製造プロセスを用いて光チップを設計することでデータの光伝送が実現すると主張している。
 電気の代わりに光でデータを伝送するコンピュータチップの消費電力は通常のチップと比べると遙かに小さい。しかし、現在のところ、これは実験室の関心事にとどまっている。
 サンディア国立研究所の研究者Michael Watts氏は、「それを実現した人を知らない。もし、彼らがそれに成功したら、主要なプロセッサメーカー、メモリメーカーに、それが極めて簡単なアプローチであることを説得できるだろう」とコメントしている。
 TIが携帯電話のチップやマイクロプロセッサの製造に使用しているのと同じ製造設備にアクセスが認められているMITの研究者たちは、極めて多くの正常に機能する光コンポーネントやエレクトロニクスを同一のチップ上に置くことができることを実証した。しかし、これまでのところ、エレクトロニクスは直接オプティクスを制御することはできなかった。TIや他の大手半導体メーカーからこの冬に戻ってくることになっている新しい一群のチップを用いて、Stojanovic教授が実証しようとしていることがある。
 光データ伝送ができれば、チップの設計でプロセス問題となっている点を解決できる。チップの計算能力が増大するにつれて、データをメモリに送るためにより多くの接続帯域を必要とする。これができないと、プロセスパワーを追加しても無駄になってしまう。しかし、電気接続で転送するデータ量を増やすにはパワーを増やす必要がある。
 トランジスタは、小さくなるほどエネルギー効率がよくなり、チップ全体の消費電力はほとんど変わらないが、「通信に使用するパワーは増加する」とWatts氏は指摘する。「あるポイントで、すべてのパワーを通信に費やさざるを得なくなる。そのポイントは、それほど先のことではない。では、計算のためにどの程度のパワーが残るか。何も残らなくなる。」将来のチップが単純に引き出せるパワーはもっと多くなるが、そうすると冷却が難しくなる。ラップトップやハンドヘルド機器のバッテリー寿命は劇的に短くなる。
 したがって、チップメーカーは、データ転送のためにエネルギー効率の優れた方法を歓迎している。ただし、それが経済的であればの話だ。既存の製造プロセスとのコンパチビリティを示すことが大きな説得力になる理由がここにある。
 チップメーカーは、異なる材料、シリコン、SiO2、コパーなどの層をシリコンウエハに連続的に堆積することでチップを製造し、次にレイヤーをエッチングして3D構造を造る。光コンポーネントの作製に既存のプロセスを使用する上での問題は、堆積層が理想の値よりも薄くなることだ。Stojanovic氏によると「表面粗さによる損失を最小化するために正常なフォトニックデバイスは少し高く、薄くなければならないが、製造では膜厚は決まっているので、それを実現することはできない。」
 光チップは、いわゆる導波路を使用して光を送る。光コンポーネントをシリコンチップに集積しようとしている研究者たちは、一般にシリコンの単結晶に導波路を作製しようとする。しかし、単結晶シリコンで導波路を造ろうとすると、その上下に絶縁層を設けなければならない。これは、TIやIntelのような標準的なチップ製造プロセスでは作製できない。しかし、ポリシリコン層の上下になら作製できる。これは小さな個別の一塊のシリコン結晶でできていて、通常トランジスタのゲートの一部に使われている。MITの研究者は、ポリシリコンから導波路を作製した。
 現在までのところ、TIはMITの研究者のためにプロトタイプを2セット作製した、1つはチップを65nmサイズでエッチングできるプロセスを用い、もう1つは32nmプロセスを用いる。ポリシリコン導波路から光が漏れないようにするために、研究チームはチップが戻ってくると、導波路の下に空間を設ける。これはTIの内製プロセスでできない唯一の製造工程。しかし、「どのようにするかが決まれば、メーカーはもっとうまく作製できると考えられる、そうなると利点は大きい。ほんのわずかな変更だと考えている」とWatts氏は言う。
 MITの研究グループの設計では、チップ外のレーザ光を使用する。しかし、ビームを導波する以外に、チップはそれに情報をのせ、それから情報を取り出さなければならない。この両方のプロセスにリング共振器を使用する。リング共振器は、チップに形成された小さなシリコンリングで、導波路から特定の周波数の光を取り出すことができる。共振器を高速にON/OFFすることで効率よく光信号をON/OFFでき、光のバーストとその間のギャップによってデジタル情報の1、0を表現することができる。
 しかし、次世代チップの帯域要求に応えるには、導波路はデータをエンコードした128の異なる波長の光を運ばなければならない。受信端では、リング共振器は入力信号を復調するためのフィルタを提供することになる。プロトタイプチップでは、フィルタバンクのパフォーマンスは、Stojanovic氏の表現では、「驚嘆すべき結果だった」。「共振器フィルタはそのリングサイズによって決まり、それが光波長だ。通常の製造プロセスがその微小差の精度に対応できるとは、TIもMITも、誰も確信できなかった。」
 光コンポーネントをエレクトロニクス制御できるようにしたチップの次のプロトタイプでは、データを光ビームに乗せたときに共振器が狙い通りに動作することを実証する。同時に、研究チームはこのアプローチをメモリチップにも拡張しようと考えている。「メモリは遙かに難しい。メモリはコスト主導のビジネスであり、そこではすべてのプロセスが重要になるからだ」とStojanovic氏は言う。「そこでは物事を変更することは極めて難しいので、オプティクスはプロセスフローとコンパチブルであることが必須となる。」とは言え、もしメモリチップやプロセッサがデータを光伝送できるようになると、消費電力抑制だけでなく、コンピュータは遙かに高速になる。「プロセッサだけにフォーカスしても、フォトニクスで4倍高速化できるだろう。もし全ての接続にフォーカスするなら、システムパフォーマンスは10倍、20倍の高速化が実現する」とStojanovic氏は見ている。

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