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NICTが衛星を用いた量子鍵配送の可能性を検証

November 25, 2009, 東京--情報通信研究機構(NICT)宇宙通信ネットワークグループは、低軌道地球周回衛星を利用して、世界で初めて高精度なレーザ光による衛星〜地上間の偏光特性の測定に成功した。衛星実験の実施は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究契約に基づき行われたもので、NICT独自に解析を行った。
これまで、高精度な光源を用いて衛星−地上間で偏光特性を実際に測定した例はまだなく、宇宙光通信に役立つとともに、将来の宇宙量子鍵配送のシステム設計を高い精度で行うことが初めて可能になった。
 現在広く普及している暗号は、コンピュータの能力が飛躍的に向上すると、解読される危険性がある。量子鍵配送では将来どんなに科学技術が進歩しても、絶対に盗み見られないのが特徴。量子鍵配送技術は、光ファイバ伝送では減衰や雑音のため300kmが伝送限界といわれているが、人工衛星を用いるとさらに遠方に伝送が可能で、地球全体へのグローバルな量子鍵配送が可能となる。これまで、高精度な光源を用いて衛星—地上間で偏光測定された例はなかった。 
 NICTでは、宇宙光通信や量子鍵配送の研究開発を行っている。今回、NICTの光地上局において、JAXAが2005年8月に打ち上げた低軌道地球周回衛星「OICETS(きらり)」を用いて、衛星—地上間での偏光度の劣化が、2.8%以下という結果を、世界で始めて観測に成功した。空間での量子鍵配送には、そのシステムの簡便性と安定性が得られる点から、光子の偏光を用いた鍵配送が一般的に用いられるが、もし偏光の度合いが劣化してしまうと安全な鍵の共有を行うことはできない。今回の実験結果から、上層大気を含む大気の影響は、量子鍵配送に問題ないレベルに抑えられていることが確認された。 
 衛星—地上間の偏光特性が実測できたことにより、量子鍵配送の回線計算が可能になり、人工衛星を用いた地球規模での量子鍵配送の実現への大きな手がかりを得たことになる。また、実際に宇宙光通信の実用化を目指した実験衛星の設計を進めることが可能となる。
この成果は、米国オンラインジャーナル『Optics Express』(11月20日版)に掲載予定。

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