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物質・材料研、光アイソレータ用ガーネット型単結晶の開発に成功

October 30, 2009, つくば--物質・材料研究機構(NIMS)の島村清史グループリーダ、ガルシア・ビジョラ主任研究員らは、フジクラの直江邦浩室長らと共同で、高出力・広帯域化するレーザ光源に対応した光アイソレータ用ガーネット型単結晶の開発に成功した。
近年、高出力光源を持つレーザ加工機による精密加工において、光源の更なる高出力化が進んでおり、光源の安定化と破壊防止が必要とされている。光ファイバケーブルを用いた光通信においても、情報量の増大に伴うレーザ光源の高出力化と広帯域化、伝達情報の信頼性の向上のため、光源の安定化と破壊防止が必要とされている。光アイソレータは光源の安定化と破壊防止を担う重要なデバイスの一つであり、性能やコストの点で優れた磁性ガーネット型単結晶が必要とされていた。
今回開発したのはテルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット単結晶。この結晶は従来用いられるテルビウム・ガリウム・ガーネット単結晶と比較し、波長により最大30%を超えるファラデー回転角の増大、大型単結晶育成の容易性、優れた波長透過性を有することがわかった。このため、コストダウンが可能な、高出力・広帯域化するレーザ光源に対応した光アイソレータ用磁性ガーネット単結晶として期待されている。
光アイソレータは光源の安定化と破壊防止を担う重要なデバイスの一つ。従来は鉄系の磁性ガーネット薄膜単結晶が主として用いられてきたが、光源の高出力化に伴う薄膜単結晶の劣化、光を透過する波長域が狭いため、使用できる波長領域が限定されるといった点などが問題となっている。特にレーザ加工機に使用される波長1μm帯において、鉄系磁性ガーネット薄膜単結晶の透過性は十分でなく、光アイソレータとして利用可能な波長域の拡大が必要とされていた。
近年、テルビウム・ガリウム・ガーネット(Tb3Ga5O12:TGG)単結晶が注目を集め始めている。TGGは可視から近赤外まで透明で適度なファラデー回転角を有するが、回転角の増大、結晶育成の容易性、更にはコストダウンなど、様々な要求もなされてきている。
物質・材料研が開発したのはテルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Tb3(Sc,Lu)2Al3O12:TSLAG)単結晶。TSLAGはTGGと比較し、波長により最大30%を超える大きなファラデー回転角を示し、大型単結晶の育成が容易であるという特徴を持つ。透過率においてもTGGより優れた特性を示し、400nm〜1300nmの波長域での利用が可能と考えられる。TGGの結晶育成が比較的困難であることに比べ、今回1インチのTSLAG単結晶が引上げ法により容易に得られたことは、2インチへの大型化が容易であることを示している。結晶育成が容易であることはコストダウンと資材の安定供給において大きな意味を持つ。また一般にAl系ガーネットはGa系ガーネットよりも優れた熱伝導率を有することが知られており、TSLAGの優れた熱伝導性と安定性は高出力レーザに対する高いダメージしきい値につながるとも期待される。
今回の成功により、レーザ加工機による精密加工・光通信分野へのブレークスルーがもたらされるだけでなく、実現へ向けた現実的な道が拓かれ、今後広く産業界に波及する材料、技術として期待される。今後は大型2インチ単結晶の育成、高品質化による透過率、熱伝導率、レーザ耐性など各種物性の向上など、実用化を視野に入れた研究の展開が予定されている。
(詳細はwww.nims.go.jp)

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