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「光トライオードを事業化」するベンチャー企業設立

April 16, 2009, 大阪--「光トライオード」開発メンバーが出資し、平成21年4月1日、「光トライオード株式会社」を近畿大学発ベンチャー会社として設立された。“光版トランジスタ”、「光トライオード」は、平成18年度に開始した研究開発課題「光トライオードを用いた負帰還光増幅器の開発」(開発代表者:前田佳伸 近畿大学准教授、起業家:辻正人)で開発に成功。新会社は、この成果をもとに設立された。
 光エレクトロニクスの一層の高速化には、電気信号によって電気信号を制御する従来の仕組みではなく、光信号で光信号を制御できる“光版トランジスタ” による制御が有望視されていた。しかし、これまで、小さな制御光パワーで入力信号光を制御・出力でき、製品化が視野に入る、実用的な装置は開発されていない。
 今回の開発では、新開発のファイバ型フィルタを活用し、入力光信号に対して強度の反転した周囲光をフィードバックする負帰還光増幅機能を取り入れた負帰還半導体光増幅器(SOA)を開発し、従来型のSOAに比べて大幅に雑音を抑制することに成功した。さらに、負帰還SOAを2段用いた構成の“光版トランジスタ”=「光トライオード」を開発し、これを活用した16mm×20mmの小型モジュールも実現。
 「光トライオード株式会社」は、光トライオードの事業化後5年で、年間1億円の売り上げを目指している。汎用化されれば、光通信、車載光LANや光コンピューティングをはじめ、幅広い分野での光制御技術の向上に寄与することになる。
エレクトロニクスにおいては、3端子信号増幅素子であるトランジスタによってコンピューターをはじめとする全ての電子回路が制御されている。また、アナログ電子回路のほとんど全ては負帰還増幅器で構成されており、低雑音な増幅が行われている。一方、光エレクトロニクスの分野では、3端子の信号増幅素子および負帰還光増幅器が実現されていない。
 今回、半導体光増幅器(SOA)を用いて、エレクトロニクスにおけるトランジスタや三極管が有する信号増幅作用と負帰還増幅機能を全光信号で実現した。
 ファイバ型フィルタを用いた負帰還半導体光増幅器では、従来型SOAの雑音が8〜9dBであるのに対し、3dBまでNFを抑えることができている。さらに、SOAの相互利得変調を用いた2段の負帰還SOAからなるタンデム波長変換型構成により、光信号で光信号を制御可能な3端子信号増幅素子である「光トライオード」を開発。数十μWの小さな光信号により、mW単位の光信号を制御することが可能になった。
 また、タツタ電線株式会社(東大阪市)と共同で、光トライオードを活用したファイバループ型CRD(キャビティリングダウン)分光分析システムの製品化に向けた開発を行っている。これまでに、今回開発した低雑音機能を持つ光トライオードモジュールを使用することで、EDFA のもつ周回増幅の動作の不安定さを減少させ、高感度測定が可能なCRDの安定性増大(発振を抑制)を実現した。
 新会社では、初年度は、「光トライオード」を将来のメイン市場と期待する通信・民生市場のメーカーに研究開発用として提供し、光トライオードを搭載ファイバループ型CRD分光分析システムの試作機を技術展示会などで展示して事業展開を行う予定。さらに、光ジャイロスコープをはじめとする光センサシステムメーカーに対し負帰還光増幅技術を採用提案するなど、多分野に広く展開していくことを計画している。
 さらに同社では、「光トライオードの集積化および光トライオードの一層の高性能化(高速・高利得・低雑音化)を進め、次の製品化目標である波長変換素子、光バッファメモリ素子および光クロスコネクト中継装置といった全光通信産業を支えるキーテクノロジーとしての事業展開を図っていく」としている。

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