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NINS、原子のさざ波をナノテクノロジーの1000倍の精度でレーザ加工

February 26, 2009, 東京--自然科学研究機構(NINS)分子科学研究所の大森 賢治教授の研究チームは、科学技術振興機構(JST)基礎研究事業の一環として、分子の中を10兆分の1秒スケールで動き回る量子力学的な原子の波の形状を、ナノテクノロジーの1000倍の精度で超精密加工することに成功した。
 光を使うと、工作機械では不可能な細かい加工が可能だが、波長(1万分の1ミリ程度)以下のサイズのものを加工することはできない。今回、研究チームは、原子や分子が持つ量子力学的な波の性質を特殊なレーザ光を用いて制御するという全く新しい発想によって、波長の10万分の1の微小空間で多彩な加工を行うことに成功した。
研究チームは、まず、10兆分の1秒の時間幅を持つ2発のレーザパルスの時間間隔を、さらにその1万分の1の精度で調節できる装置を開発した。この装置から発射された2発のレーザパルスをヨウ素分子に照射して、5億分の1ミリ程度の微小な空間を観察できる特殊な手法で分子の内部の時間変化を観察。レーザパルスのエネルギーを吸収して2個の原子の波が発生し、これらがぶつかって2億分の1ミリ間隔のさざ波が現れ、これが美しいカーペットのような時空間模様を描いた。照射するレーザパルスの間隔を微妙に調節すると、さざ波の配置が変化し、この量子のカーペットを多彩にデザインできることがわかった。
このようなミクロな世界では、原子は粒であると同時に空間的に広がった波のような存在でもあり、ある瞬間に原子がどこにいるのかを確定することは原理的にできない。カーペットの山の部分は原子が「存在し得る」空間、谷の部分は「存在し得ない」空間である。つまり、カーペットの山と谷の位置を入れ替えることは、原子の存在しない空間の位置を4億分の1ミリの精度で操作することに対応している。これは現代の最高精度を誇るナノテクノロジーの分野で新材料として期待されるカーボンナノチューブの直径の1000分の1に相当する史上最高の精密加工。
 今後、粒子性と波動性が共存するミクロな波の世界の謎を解き明かす検証実験や、1個の分子で膨大な情報を処理する量子メモリー、あるいはナノテクを超える精度で物質内の化学結合を操作する未知の量子テクノロジーの開発への寄与が期待される。
 この研究はフランスのツールーズ大学との共同研究である。本研究成果は、近日中に米国物理学会誌「Physical Review Letters」の電子版で発表される。

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