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レーザによる清浄

ジョージ・ハイダーマン

レーザ表面処理は大きな労働力を要する従来型の洗浄法に代わる魅力的な選択肢だ。

 先進的な産業用レーザは、単なる切断/溶接アプリケーションをはるかに越えて発展した。今やレーザ技術は、コスト効率が高く環境に優しい産業用のコーティング除去/表面洗浄ソリューションになった。金型の自動清浄から精密なコーティング除去や酸化物除去まで、レーザ表面処理は大きな労働力を要する従来型洗浄法に代わる魅力的な選択肢であることが徐々に実証されている。
 過去10 年間、レーザによる塗料除去/清浄装置は、従来の洗浄/塗料除去技術に置き換わる実行可能な技術として高い関心を集めてきた。1980 年代の後半に、切断/溶接レーザ装置を表面処理レーザ装置へと改良する方向で、信頼性が高く可動式の清浄/塗料除去操作用ハイパワーレーザ装置の研究が開始された。しかし、このアプローチは、切断や溶接とは著しく異なる表面処理要件を満たさなかった。
 1990 年代初期に、表面処理用の高効率で信頼性の高いレーザ装置の研究が世界中で始まった。実験室装置から日常の生産工程用の信頼でき装置へと技術を発展させるためにさらに数年を要した。今日では、多種多様な産業が表面処理業務にレーザ装置を採用している。そのアプリケーションは金型の清浄、塗料除去、接合前処理、油やグリースの除去など様々である。

動作原理

 一般に、レーザは、パワー密度を高めるために極度に集束され、指向性の単色光ビームとして放射される。焦点位置で高強度レーザビームのエネルギーは汚染物質または塗料層によって吸収され、塗料や汚染物質などのターゲット材料を熱的に焼却または昇華させる(図1)。これらのプロセスは、発生したマイクロ熱衝撃波との組合せによって、ターゲット材料が入射するレーザエネルギーの吸収を続ける限り、ターゲット材料の除去を続ける。エネルギー吸収の良いターゲット材料ほど、速く除去される。
 ターゲット層の色、化学組成、厚さのすべてがプロセスの有効性に直接影響を及ぼす。除去プロセスは、金属または他の比較的反射性の下地に到達するや否や自動的に停止する。反射性のある表面は一般にレーザエネルギーをほとんど吸収しない。
 基板材料へのいかなる熱伝導の残留も重要な因子になる。この残留効果を最小化する目的で、多くのレーザ機器メーカーはパルスレーザを光源として使用する。ビーム強度(ビームスポットあたりのレーザ出力)は基板材料への熱伝導の臨界パラメータになる。パルス持続時間が数ナノ秒(ns)の非常に短いレーザパルスと非常に小さな焦点径(0.02インチ)の組合せ、あるいはミリ秒(ms)程度の比較的長いレーザパルスと比較的大きな焦点径(0.2インチ)の組合せを利用すれば、基板材料への熱伝導は最小になる。正常な動作条件と適切なプロセスパラメータの設定によって基板材料の損傷を回避できる。
 連続波(CW)レーザ装置の熱伝導率は非常に大きく、基板材料の温度を損傷温度まで高めることがある。平均レーザ出力500W(400kW以上のピーク出力)のハンドヘルド型パルスNd: YAGレーザを使った航空機用アルミニウム板でのテスト結果によれば、基板材料温度は最高170°F に達した。
 パルスレーザ装置はレーザ光源の平均出力をはるかに越えるレーザ出力レベルを発生する。150W のパルス固体レーザのピークパルス出力は160kW以上だ。この高いピーク出力と上記ビームパラメータの利用で、多くのターゲット材料を必要な生産効率で除去できる出力強度が達成される。
 現在、表面前処理用に入手可能なレーザ源には三つの種類がある。それらの主要な違いはレーザビームの発生方式と発生したビームの伝送配置である。
固体Nd:YAGレーザ──1064nm波長で動作する固体Nd:YAGレーザは、波長が光学ガラスの通過帯域幅内にあるため、ビーム伝送に光ファイバケーブルを利用できる。したがって、レーザ装置の柔軟性は劇的に高い(図2)。Nd:YAGレーザは到達し難い場所での作業にも使える。現在の最大光ファイバ長は150フィートである。Nd:YAG レーザは保守がほとんど不要であり、操作も簡単だ。表面処理に利用するパルスレーザ装置の平均レーザ出力レべルは最高1kWに達する。
TEA CO2 レーザ──横方向励起大気圧( TEA )CO2 レーザは、レーザ媒質として特定の混合ガスを使い、継続的にガスを補充する必要がある。このレーザの波長10.6μmはガラスの通過帯域幅外にあるため、短パルス放射の光ファイバ伝送が不可能であり、このことによってCO2レーザ装置の可動性と接近性が制限される。反射鏡と見通し内ビームダクトを用いた複雑なビーム伝送システムが必要になる。表面処理分野におけるCO2レーザ装置の平均レーザ出力レべルは最高2kWに達する。
ファイバレーザ──ファイバレーザは固体レーザであるが、レーザビームの発生にファイバ自身を使う。その波長1070nm は光ファイバ伝送を可能にする。パルスファイバレーザだけがレーザ表面処理に効果的であり、最高200W出力のユニットが入手可能である。しかし、20W以上のパルスファイバレーザは出力結合光学系のサイズが大きくなるため、手に持って使用することは難しい。
レーザ洗浄アプリケーション  レーザ洗浄のような多目的技術は様々なアプリケーションを実行可能にする。例えば、数千年を遡る歴史遺産の復元にも、現在のNASAスペースシャトルにも使われている。現在利用されている多くは出力範囲が150〜500Wのファイバ結合Nd:YAGレーザ装置であり、ハンドヘルド式(図3)と自動化プロセスに完全に統合されたタイプとがある。
 多くのアプリケーションでは、有機汚染層またはコーティングを基板から除去しているが、航空機産業などでは基板材料の損傷がない穏やかな除去が必要になる。レーザ装置はすでに認証されており、民間航空機メーカーによって接地/接合部付近のコーティングの精密な除去などに使われている。米国におけるレーザ塗料除去の最大の顧客の一つは米国空軍であり、主要なすべての保守基地でレーザを使った航空機の塗料除去が行われている。
 もう一つの大きな潜在的可能性をもつアプリケーションは金型の清浄である。レーザは、航空機産業の複合構造用の非常に大きなスチール金型、ゴム/プラスチック産業用の金型、食品調理用の金型の清浄にさえも使用されている。レーザ表面処理は余分な廃棄物を発生させない非常にクリーンなプロセスである。CO2ブラストとは異なり、周囲に廃棄物を撒き散らさない。さらに、レーザ清浄は、研摩洗浄法とは異なり、高価なツールの精密な幾何学形状を損なうことがない。これによって、この技術を容易に自動化あるいは既存の生産ラインに統合することが可能になる。レーザ清浄装置は、大規模な炉の中の金型の洗浄にも使用されている。炉で製品を製造しながら清浄が実行されるため、ダウンタイムがゼロになる。
 自動車産業におけるOEM業者は、完全自動化製造ラインにおいて溶接やロウ付けに先立ち、酸化物と油残留物をボディ部分から除去する目的でレーザを使用している(図4)。一流サプライヤは、接着または他の接合作業の前に、レーザで表面を洗浄する。Nd:YAGレーザのエネルギーを吸収する酸化物の除去は高い生産効率を可能にする主要なアプリケーションである。作業コストと初期投資コストが低いことと、非常に高い信頼性と均質な品質が確保されることが、自動車関連アプリケーションにおいてレーザ洗浄が採用される主な決定要因だ。
 比較的短期間に、多数のレーザ表面清浄アプリケーションが出現し、現在、250を超えるレーザ清浄装置が設置され稼動している。研究、需要、経済がレーザ清浄技術の成長する未来を可能にし、米国における大きな潜在的可能性を育んできた。新しいアプリケーションが絶えず具体化されている。

図1 Nd:YAG レーザ清浄の動作原理。

図2 可動式Nd:YAGレーザ装置には柔軟性がある。

図3 300Wレーザを使ったハンドヘルド式レーザ清浄装置。

図4 自動車部品の自動清浄。

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