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LED の生産効率を改善するレーザ加工

アルノー・ブリュレ、バーノルド・リシェルズハーゲン

ウォータジェットをガイドとするレーザ加工は、HB-LED 用の金属ヒートシンクの製造に挑戦している。

 現在の照明技術には、よく知られている「限界」がある。白熱電球は効率が非常に悪く、その90% ものエネルギーが熱となり、フィラメントから放出されている。小型蛍光灯(CFL)は寿命が長く、発光効率が良いため、優れた選択になると宣伝されているが、処分や廃棄のときに問題を引き起こす水銀が含まれているため、長期にわたって有効な解決策と見なされていない。
 一方で、一般に同意を得ているのが、高輝度発光ダイオード( HB-LED)の照明産業における将来性だ。HB-LED は高いエネルギー効率と低い電力消費、非常に長い動作寿命(最高10万時間)、直接照明によるシステム効率の向上、振動に対するロバスト性と耐久性、触れても安全な冷たい出力ビーム、鮮明で完全に飽和した色、瞬時に起動できるなどの優れた利点を備えている。
 市場調査会社の米ストラテジーズ・アンリミテッド社(Strategies Unlimited)によれば、HB-LEDの1995年からの全体市場は年率で約50%の成長を示し、照明に使われるHB-LED の過去3 年間の市場は年率60%で成長している。実装されたHB-LEDの全体市場は2008年だけで12%の増加が予想され、2012年には114億ドルの規模になると予測されている。この急速に成長する照明技術から実現可能となる応用には限りがなく、その分野は従来の住宅や産業への応用を超えて、医療装置、自動車用/建築用の照明、ディスプレイのバックライト、新しい消費者用製品のガイド機能などにまで及んでいる。
 とは言うものの、HB-LEDの製造にはいくつかの難題がある。この薄膜の成長には、物理蒸着ではなく、化学反応にもとづく結晶成長に依存する複雑なプロセスである有機金属化学蒸着法(MOCVD )などの高度なエピタキシャル成長法を使用する。HB-LED はダイオードを通して大量のパワーが励起されるため、デバイスを冷却し、放熱を効果的に行って、機能の最適化を助けるヒートシンクが必要になる。LEDの安定した性能を長期にわたり保証するには、ヒートシンクによる効率のよい冷却が重要な要素となる。ヒートシンクは高い熱伝導率をもつ金属から作られ、銅(Cu)、モリブデン(Mo)およびそれらの銅タングステン(CuW)などの合金を使用して、デバイスの寿命と最大輝度出力の維持を助けている。 しかしながら、これらの金属は優れたコスト効果で切断することが難しく、従来の切断技術は、製造工程の障害となるばかりでなく、LEDの性能と効率にも影響を及ぼす損傷と汚染が生じてしまうという問題があった。

レーザ切断によるアプローチ

 機械的切断(ダイヤモンドソー)を用いると、ヒートシンクに使われる金属が原因となって、鋸歯のダイヤモンドグレインが通常の半導体ウエハの場合よりも激しく磨耗する。これは軟質金属からダイヤモンド粒子を引き寄せ、歯の間隙が埋まるように、それぞれの粒子が樹脂で被覆されているためだ。この磨耗によって、鋸歯は切れ味が悪くなり、コストのかかる鋸歯の交換が頻繁に必要になる。また、ダイヤモンドソーには、鋸歯に固着せずに表面に戻ってしまう粒子による汚染の発生という深刻な問題がある。これが原因となり、HB-LEDデバイスの輝度は大きく減少し、発光効率が悪くなる。鋸歯は非常な高速で回転することができるが、これらの問題は鋸歯に早期の破壊をもたらし、切断品質を最適化しようとすると、回転速度は許容できないレベルまで落ちてしまう。このように、ヒートシンクを切断するために、ダイヤモンドソーを所有して使用することは、コストが高くつく選択となる。
 赤外(IR )または緑色の「ドライ」レーザは多量の熱を発生するため、HBLEDのヒートシンクに使われる軟質金属には熱損傷が発生する。これらの材料はプラズマ状態に変換されても、容易に分散せずに切り溝のなかに留まり、その切り溝の幅にわたって広がるバリまたは再鋳造がダイ分割を妨げる。ブロージェットの量を増やしても、プラズマの除去効率が増加することはなく、再鋳造はヒートシンクの切り溝からHB-LEDアレイの活性領域へと広がるため、歩留りが低下する。また、このことはデバイスの機能と効率の障害になり、デバイスメーカーによるレーザ運用のコストが増加する。
 紫外(UV)レーザは加工時の熱発生が少ないため、IR や緑色レーザよりも効率よく動作する。しかし、厚さ100〜 500μm の範囲の場合の切断速度は非常に遅くなる。またパワーが低くても、何らかの熱損傷と汚染が発生する。結論として、通常のレーザによるHBLEDの金属切断のエッジ品質は、熱影響層(HAZ)のサイズ(最大60μm)が原因となり、市場の要求仕様を満たすことができなかった。
 第3 の技術はウォータジェットでガイドするレーザを使用するものだ。この技術はスイスのシノヴァ社(Synova)により特許化され、 LaserMicroJetと名付けられた装置として製造されている。この技術は医療用途を目的にして開発され、現在は半導体と電子部品の精密マイクロ加工に使われている。非常に細いウォータジェットを使用して、レーザビームを加工物の表面に導波する技術だ。この加工プロセスの能力と性能は従来のドライレーザとはまったく異なる。第1に、ウォータジェットは円柱で、レーザビームはジェットと平行に導波されるため、切り溝の壁が平行になる。ジェットの安定な長さに対応する作動距離は、ジェットの直径に対応して数cmの距離になるため、焦点制御が不要になる。レーザはウォータジェットのなかに集束されて導波される。
 第2 に、ウォータジェットがレーザパルスによる切断エッジを冷却するため、熱損傷の問題が存在しない。切断されたエッジの温度は水温にまで急速に低下し、レーザから発生した熱が材料内部に伝達されることは全くない。その結果、加熱に伴うマイクロクラック、酸化、構造変化、ダイ破壊強度の低減などの損傷は効果的に排除され、しかもHAZのサイズは10分の1になる。
 第3 に、ウォータジェットによって汚染が大幅に減少する。その50〜500バールの圧力範囲からは、融解材料の完全な除去に役立つ高い運動エネルギーが得られる。同時に、ウォータジェットは非常に細く(直径20〜100μm)、水に加わる機械的力は無視できるほど小さい(0.1N以下)ため、この加工プロセスからはチッピングやマイクロクラックが発生しない。
 第4 に、ウォータジェットを使用すると、その大きな動的衝撃のために融解金属の切断が容易かつ高速になり、厚さが600μmの金属であっても、わずか1〜 3 秒で滑らかな切断が可能になり、明瞭で一貫性のある高品質のエッジが得られる(図1 )。ウォータジェットは四角形、円形、六角形を含むすべての形状のHB-LEDを切断できる(図2)。したがって、材料の効果的かつ経済的で無駄のない利用が可能になる。LEDは最終の用途に応じた独自の形状が必要になるが、このような形状の加工に対しても、ウォータジェットは非常に適している。さらにウォータジェットは、汚染粒子がウエハ表面に再堆積する前に、粒子を急速に冷却して洗い流すため、汚染の発生もなくなる。表は異なるサイズと厚さをもつ銅に組込まれたHB-LEDを例にして、ウォータジェットの切断能力の範囲を示している。

新しい要求への対応

 現在使われているHB-LED の製造および実装にはいくつかの方法がある。その一つは、金属ウエハ上に能動デバイスを形成し、次にウエハを個別のチップに切断する方法だ。これらの材料をIRや緑色のレーザで効率よく切断することは容易でない。いずれのレーザもガスジェットを使用して溶解材料を吹き飛ばすが、空気ジェットの運動エネルギーからは、これらの用途に対して十分なパワーを得ることができない。また、レーザ切断時のレーザから発生する高熱は、材料のエッジを燃焼させ、修復できない損傷の原因となる。
 もう一つの方法は、サファイアや炭化ケイ素( SiC )のウエハ上にLED デバイスを形成してからダイヤモンドソーで切断する。この方法は冷却プロセスが不十分になるため、HB-LEDをアレイ状に配置し、銅によるオーバーモルド工程を済ませ、その後に研磨を行う。この方法は内部に能動HB-LED が埋め込まれ、発光面のみが銅から露出した純銅ウエハが得られる。ウォータジェットで導波するレーザは、これらの封入物をもつチップの個別切断にとって理想的であり、その独自の実装と大きなヒートシンクからは、その他の方法よりも優れた損傷耐性が得られる。
 米国、および最も大きな成長が見込まれている日本、台湾、韓国、中国などのアジア諸国では、照明用LED の開発が国家プロジェクトして進行している。照明は全体のエネルギー消費の約20%を占めるため、これらのプロジェクトでは、その重点が大規模な省エネルギーの追求、消費者によるエネルギーコスト低減の支援および温室効果ガス放出の削減による環境支援に置かれている。しかし、HB-LEDの照明市場を牽引する最大の力は、従来の照明技術では明らかに不都合がある新しい用途、もしくは信頼性やその他のLEDの特徴が特に重要となる用途などに使われることから生まれるはずだ。HB-LEDは飛躍的に成長しようとしているため、ウォータジェットガイド型レーザのLaserMicroJetも、ともに力強い成長が見込まれる。

図1 このSEM写真はウォータジェットガイド型レーザで切断したHB-LEDの前面を拡大して示している。デバイスを内蔵する銅板は、エッジが鋭くきれいなエッジの状態で切断され、銀の薄い被覆に必要な加工パラメータも変化していない。

図2 これらの100 μmの円形チップは、ウォータジェットレーザを使用して切断された。他の切断法に比べると、ウォータジェットレーザは特異な形状を高速かつ正確に切断できる。

 銅箔中のHB-LEDデバイスはウォータジェットレーザにより高速かつ正確に切断できる。

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