All about Photonics

Home > Magazine > Articles

関連イベント

関連雑誌

Articles バックナンバー記事

加工法をリードするファイバレーザ

ガボール・カードス、デイビッド・グロスマン、ロナルド・D ・シェーファー

ファイバレーザには紫外(UV)レーザを上回る新しい用途が拡大している。

 ファイバレーザは活気と驚きに満ちた新方式の多機能レーザだ。ファイバレーザを使用すると、数多くの用途において収益性が向上する。1〜2μmの基本波長において数ワットから数キロワット(kW)の出力パワーが得られる多数の製品が市販されている。また、購入できるファイバレーザにはパルス幅が1nsよりもはるかに短いものから数msのものまである。ひと口にファイバレーザと言っても、このように幅広いため、ここでの議論は利用可能なUV光源と同等の出力パワーとパルス幅をもつ低出力ファイバレーザに限定するほうが妥当だと思う。
 この点を考慮して、ここで比較するレーザにはIPG YLR‐1/100/20/20イッテルビウムファイバレーザを選択した。このレーザは20 〜 80kHz の間で公称20WのQスイッチ出力と約100nsのパルス幅が得られ、その出力特性(波長を除く)はほとんどのUV半導体励起固体(DPSS)レーザと同様になる。しかし、このようなファイバレーザはDPSSレーザに比べると、非常に小さく安価で動作寿命もはるかに長い(表1)。
 米フォトマシニング社(PhotoMachining)は小さな個人企業のため、例えば「電球」に10万ドル以上のコストをかける必要がある場合、比較的短期間に大きな収益が得られることを確認しなければならない。しかし、価格が2万ドルのレーザならば、自分たちでリスクをとって投資することができる。このような価格であれば、ここで議論するいくつかの材料を加工することで、投資は数ヶ月で回収できると考えた。

レーザの構成

 上記のファイバレーザはUV DPSSレーザと同様の光学系で構成されている。つまり、レーザビームを広げて走査装置のガルバノメータScanlab hurry SCAN 10に入射すると、4インチ離れた場所で最小の集光スポットが得られる。その結果、ターゲット上で標準のUVDPSSレーザ装置と同様の約40μmの集光スポットが形成される。ファイバレーザはパルス当たりのエネルギーが大きく、ピークパワーがはるかに高いので、材料加工のいくつかの用途では、一般に赤外(IR)光子とUV光子の波長の違いによる影響の補償が必要になる。
 UV光子を使うと最高の品質を確保できるが、加工速度があまりにも遅く、装置の運転コストも非常に高くなる。したがって、より低いコストでUV 加工に近い品質が得られる方法が必要になる(加工速度はコストに直接影響する)。

薄いシリコン材料の加工

 そこで、加工のコストと速度との関係を実例で考えてみよう。われわれはある顧客から薄いシリコン材料の切断/スクライビング加工を打診された。顧客は355nmのレーザを使って、シリコン(Si)材料を約40μmのスクライビング幅でデブリのない切断加工をしていた(図1a)。われわれはこの切断法では品質が悪くなると判断し、フォトマシニング社の社内で実験することにした。10Wの355nm Aviaレーザと高速ガルバノメータによるマルチパスを使用して、切口が25μmの加工実験を行った(図1b)。実験した厚みのSi材料の加工速度は10mm/sオーダであったが、切断品質は顧客の切断よりもはるかに優れていた。
 次に、われわれは同じ材料を20Wのファイバレーザを使って切断し(図1c)、約44μmの切口を約100mm/sの切断速度で得ることができた。この場合の加工品質はわれわれの355nmの加工に比べると、メルトとデブリが確かに多かったが、顧客の切断に比べると十分に良好で、加工速度もはるかに高かった。
 図1d は固定ビームと同軸ガス支援の200Wファイバレーザによる同様の切断部を示している。この場合の切口幅は約40μ、加工速度は500mm/sのオーダであった。また、加工品質は顧客の切断に比べると同程度ないしはそれ以上に良好で、非常に高い加工速度を得ることができた。
 CVDで製造されたダイヤモンドも加工が難しい材料だ。この場合の加工は、ダイヤモンドらしい好ましい特性が損なわれないように、材料の裏面にダイヤモンドが残るよう、炭化や黒鉛化を起こさないことが重要になる。われわれは長年にわたり248nmのエキシマレーザを使ってCVDダイヤモンドの切断を行ってきたが、詳細に調べても、黒鉛化、マイクロクラック、チッピングなどの痕跡は発見されていない(図2a)。しかし、エキシマレーザは装置コストが高く、加工速度が非常に低いため、加工コストが非常に高くなる。例えば、10ミル厚のCVDダイヤモンド薄板を1/4インチの円板に切断するには10分ないしはそれ以上の時間が必要になる。
 同じ切断をQスイッチファイバレーザで試験した結果、248nmレーザと同等の切断品質が得られ、しかも数秒で切断できることが分かった(図2b)。この厚みのCVDダイヤモンドは、パルスエネルギーが低過ぎるDPSSレーザを使うと、必要な侵入深さを得ることは非常に難しくなる。
 これらの試験はすべて約100nsのパルス幅をもつ波長1μmのファイバレーザを使用して行われた。現在は、高次高調波を発生可能にし、パルス幅を短くするための開発を進めている。妥当な量のパルスエネルギーが得られるとすれば、UVを発生し、パルス幅を短くすることは、いずれも加工性能の向上にとって不可欠となる。われわれは5〜10年以内に、UVレーザが市販され、結晶系の光源と競争可能になると予測している。
 ファイバレーザは、絶えず多くの用途でNd:YAG レーザかCO2レーザのいずれかと置き換わり、その独自の特性によって、新しい用途が開拓されると言われている。ここでは短パルスファイバレーザが既存のUVレーザに置き換わる適切な選択肢であり、UVに近い加工品質をUVよりもはるかに高い加工速度で得られる応用が数多くあることを紹介した。われわれは短パルスファイバレーザ加工に役立つと考えられるさまざまな加工法を見出した。周波数がさらに高くなり、UVを放射するファイバレーザが開発されれば、ファイバレーザへの置き換えは間違いなく続くであろう。

表1 20W Q スイッチファイバレーザとUV DPSS レーザとの比較

図1a 顧客による切断

図1b 355nm での切断

図1c 20W のQ スイッチファイバレーザによる切断

図1d 100W のCW ファイバレーザによる切断

図2a CVD ダイヤモンドの248nm での切断

図2b CVD ダイヤモンドのQ スイッチファイバレーザによる切断

Cutting記事一覧へ Micro Processing一覧へ

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.