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薄いガラスの分離

ハインツ・ゲオルク・ガイスラー

革新的なレーザ切断がいくつかの産業におけるガラス切断の標準になった。

 現在のガラス製品の品質要求に応えるためには、各種材料の性質を吟味することに加えて、加工技術のさらなる精密化、微細化、クリーン化が必要である。エレクトロニクス関連市場の成長と需要の拡大に伴い、革新的なガラス切断技術の開発が急務になった。超硬工具やダイヤモンド工具を使った従来方式のガラス分離法は多数の用途に広く利用されてきた。従来方式では、切断加工は二つの工程に分けられる。第1工程で、ダイヤモンドチップまたは炭化物切断ホイールでガラスをスクライビング(溝きり)してガラス表面に線状クラックを入れ、第2工程で、このクラックに沿ってガラスを機械的にブレイク(割断)させる。
 しかし、このスクライビング+ブレイクの方法には欠点がある。材料の除去によって端面にチップや破片が発生するため、エッジ強度が低下し、ポストクリーニングが不可欠になるのだ。深いクラックは、機械的な力によって形成されるため、ガラス表面に対して垂直にならないことが多く、最終的な割断ラインも表面に非垂直になる。薄いガラスへの機械的な力の影響によって収率が低下することも欠点の一つである。
 これらのマイナス点は、張力フリーのガラスを使って破断用の工具と設備を広範囲に最適化することによって低減できる。しかし、垂直切断ラインの形成と端面チップや破片の抑制とのシステマティックな矛盾を避けることは不可能である。これらの品質問題に対する解がレーザ技術の開発だ。

レーザスクライビングと割断

 機械的な切削工具とは異なり、レーザビームのエネルギーは非接触でガラスを切断する。このエネルギーは被加工物の極めて狭い領域だけを決められた温度まで加熱する。この被加工物の迅速な加熱と続く急冷とによってガラス内に張力が発生し、この張力によって誘起された亀裂に沿って垂直クラックが破片やチップの発生なしに展開する(図1)。このクラックは機械的ではなく熱だけで形成されるため、端面にはチップやマイクロクラックが全く発生しない。従って、レーザ切断端面の強度は従来のスクラッチ+割断加工端面に比べて優れている。仕上げ処理もほとんどあるいは全く不要である。壊れたガラス破片の発生も完全に避けられる。
 レーザスクライビングは、加熱と続く冷却によってガラスに約100μm(ガラス厚みの約10%)の深さまで割れ目をいれる(図2)。ガラスは十分に方向づけられた軟化によって割断を起こす。この技術は、ガラス破片を発生させないため、エッジ強度の低下が少なく、研磨や洗浄などの後加工が不要である。このガラスは従来法で分離されたガラスパネルに比べて3倍壊れにくい。
 50μmから1mm厚のガラスならば、1工程で完全な切断が可能だ(図3)。割断工程が不要なだけでなく、洗浄、研磨などの全ての後処理が不要になる。
 エッジ強度はDIN-EN843-1を用いて標準4点曲げ試験で測定された。1片のガラスを二つのローラー上に固定する(図4)。その上部から二つの追加ローラーで規定された曲げ力をガラスに加え、ガラスが割れたときの力を測定する。この試験は、割断の確率が統計的に信頼できる値に達するまで、100回程度繰返された(図5)。
 大抵の場合、レーザスクライビングと割断が大量生産での加工用途に選択される。その利点は高い加工速度、正確さ、簡単なパラメータにある。しかし、数本の線の加工や十分に時間をかける加工に応用する場合には、ドライ冷却法であり追加工程も不要なため、フルボディカット(完全切断)が魅力的な方法になる。いずれの場合にも最高のエッジ品質が得られる。従って、レーザによるガラス切断ならば、加工時間の節約と加工品質の改善を同時に達成することも可能だ。

生産ラインにおけるレーザ切断

 高度に洗練された新技術をハイテク製品の大量生産ラインへと移転させることは容易でない。顧客の観点からすれば、大量生産ラインに組込む前に十分に検証され、自動化され、信頼性が確認され、経済的に採算がとれたソリューションになっていなければならない。事実上、革新的な技術の導入が機能するのは二つの場合においてのみだ。つまり、革新的な機能を可能にするために新たな生産法を必要とする場合、もしくは加工工程を少なくして生産コストを下げなくてはならない場合だ。既存の生産法が厳しい経済的圧力を受けている場合には、劇的に生産法を変えることも検討されるはずだ。
 フラットパネルディスプレイ産業では、いくつかのプロトタイプラインでの数千時間に及ぶ試験使用を経て、レーザ切断が生産ラインに実際に導入されるまでに約5年かかった。現在、レーザ切断は、破損の危険性がある新製品の生産や、センサ、タッチパネル、カバーガラスなどの潜在的に脆弱とみなされる薄いガラスを使った製品やガラスを含むモバイル機器を生産するエレクトロニクス産業において、日常的に利用されている。生物医学産業のようなクリーンルーム内で行なわれる加工は、従来の切断と破砕の工程で発生する粒子に極めて敏感であるため、レーザ切断が最も適している。その例としては、レーザで要素に切断されるDNAコードをコートした基板(バイオスライド)や食品試験用の基板などがある。レーザ切断の利用が有利となる次の潜在的大産業はソーラ産業と自動車産業だ。
 ガラスのレーザ切断技術は、数年前の金属産業における状況と同様に発展し、従来法に代わって広範囲の製品の生産用として確立されるであろう。しかし、大多数のガラス製品では高いエッジ品質が要求されないため、従来のガラス加工法も、主要な生産法として将来にわたり存続するであろう。
 レーザ形状切断は、エレクトロニクス、自動車、アーキテクチャなどの産業にその場所を見出すであろう革新的技術だ。ガラス加工では、レーザ加工技術は切断以外にも、穴あけ、面取り、コーティング除去など、開発/サンプル加工の全ステージにおいてその潜在能力を発揮するはずだ。これらの加工にはグリーンレーザなど、さまざまなタイプのレーザが必要とされる。
 すでに確立されたCO2レーザ切断技術は、エレクトロニクス産業におけるウエハ材料としてのセラミックなどの脆性材料にも適用されている。半導体産業における他の新材料も潜在的な候補であり、試験を経て生産ラインに導入される日もさほど遠くないであろう。

図1 被加工物の迅速な加熱と続く急速冷却によってガラス内に張力が発生し、その張力によって誘起された亀裂に沿って、垂直なクラックが破片やチップの発生なしに展開する。

図2 レーザスクライビングでは、加熱と続く急冷によってガラスに約100 μ m の深さまで切り目を入れる。その後、ガラスは正確に方向づけられた軟化によって割断を起こす。

図3 50μm から1mm 厚みのガラスでは、1 工程での完全な切断も可能である。

図4 端面強度はDIN-EN843-1 を用いた標準4 点曲げ試験において測定される。

図5 3 種類の分離法で作製した0.7mm 厚みの硼珪酸塩ガラス試験サンプル:2 タイプのホイールで切断した2 種類の試料エッジとレーザ切断した端面についての測定結果を示した。レーザ切断した端面の強度がドラマチックに高いことが明らかになった。現在は、レーザ切断ガラスを、エッジからではなく、表面の任意の弱い位置から破断させる条件もすでに確立されている。

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