All about Photonics

Home > Magazine > Articles

関連イベント

関連雑誌

Articles バックナンバー記事

錠剤の穴あけ加工

フランク・ゲブラー

医薬品の高速製造の分野では錠剤の穴あけにレーザシステムが使われているが、製造工程の経済性と加工品質にはレーザパルス特性が影響する。

 経口薬用の精密な構造をもつ錠剤とカプセルの開発によって、製薬業界は消費者に対してさまざまな効能をもつ薬剤を提供できるようになった。これらの薬剤の製造ではレーザによるマーキングと微細加工が重要な役割を果している場合がある。

最新のドラッグデリバリーシステム

 複合化した錠剤とカプセル(合せて“ドラッグデリバリーシステム”と呼ばれる)は、「薬剤が正確に制御された時間で放出される」、「水溶性が乏しいという理由で他の方法では経口投与が難しい薬剤分子を使用できる」などの利点が得られる。その一例は“浸透圧ポンプ”による方法だ。この方法では薬剤層と“押出し”層が半浸透性の膜で囲まれ、摂取されると、半浸透膜から入った水分によって、押出し層が膨張する。その結果、薬物は膜の薬剤層側の小さな開口から制御された速度で押出される(図1)。
 浸透圧ポンプの場合、標準の開口サイズは約600μmから1mmの間に設定される。穴の直径と形状の公差はかなり緩やかな場合が多く、その他の精密な製造作業の標準を満たせればよい。公称600μmの穴の直径には±100μmの公差があり、1.0〜1.5の楕円率が許される。このような直径と公差をもつ穴は純機械的な方法によっても加工できる。しかし、穴あけ以外の薬品製造工程のスループット速度との整合が得られる穴あけ加工を実行できる機械的方法は存在しない。対照的に、レーザによる錠剤の穴あけは、毎時10万個のスループット速度が得られ、必要な寸法公差と表面性状をもつ穴を容易に加工できる。

工程の概要

 図2は米コントロール・マイクロ・システムズ社(Control Micro Systems)が製造しているレーザ錠剤穴あけ加工機の主要な機能構成を示している。この特殊な配置では、2台のレーザ穴あけ加工機を使用して錠剤の片面あるいは両面に穴あけ加工を行なう。有機材料の多くは1.06μmの波長を透過してしまうが、ドラッグデリバリーシステムに使われるほとんど全ての有機材料は1.06μmの波長を十分に吸収するため、この用途では100 〜 500W の範囲のパルスCO2レーザが選択されている。これらの有機物は紫外線(UV)も十分に吸収するが、この工程に必要なスループットレベルが得られるパワーをもつUVレーザは存在しない。この用途では高いピークパワーを確保でき、高速で加工できるパルスレーザが好ましい。そのパルス動作によって、転位やデブリ形成などのすべての熱誘起効果も最小になる。
 まず、錠剤は円錐供給器からコンベヤ上のファイルの一つへ導入される。通常、浸透圧ポンプ錠剤の押出し層と薬剤層はそれぞれ異なる色に着色されており、この場合は薬剤層だけを穴あけしなければならない。錠剤の向きは製品が通過する際にカラーセンサを使って決める。次に、製品の有無を検出するプレゼンスセンサで錠剤の通過を検出し、カラーセンサの結果から錠剤の正しい側面が上にあることが分かれば、レーザ穴あけ加工のプロセスが駆動する。穴あけ加工後の錠剤はマシンビジョン検査システムを通過する。通過する個々の錠剤のデジタル画像が取得され、想定される4パターンの結果との比較が行われる(表1)。この4パターンのうちの二つでは「合格」が選択され、他の二つでは「不合格」が選択される。
 不合格の錠剤は空気圧によるブローオフシステムでコンベヤから取り除かれる。穴あけ加工に失敗した錠剤がビジョンシステムで検知されると、直ちに廃棄モードが起動するが、コンベヤには移動速度があり、ブローオフシステムには物理的応答時間があるため、不合格の製品の前の1個ないし2個の錠剤も取り除かれてしまう場合が多い。そこで、通常の合否判定ではシステムが一列になった5個の錠剤の通過を観測するまで保持され、合格基準のいずれか二つに合致するかどうかが、そこで判定されるようになっている。ブローオフシステムの下流にはもう一つのプレゼンスセンサ(図には示していない)があり、不合格条件が設定された状態のシステムには通過する錠剤がないことを確認する。このように厳密な方法でも、廃棄されてしまう良品の錠剤は発生するが、通常の場合、このシステムは98%の確率(合格の錠剤/不合格の錠剤)で動作する。
 最初のレーザ穴あけ台を通過した錠剤は反転され、2番目のレーザ穴あけ台を通過するコンベヤに載せられる。2番目のレーザ穴あけ台は最初の場合とまったく同じように動作し、最初の穴あけ台を合格で通過した際に間違った面が上にあったすべての錠剤の穴あけを行う。この加工ラインの終点では加工された錠剤が捕集容器に注入され、包装と印刷の最終工程へ向う。

オンザフライ穴あけ加工

 このシステムで毎時10万個レベルの錠剤のスループット速度を達成するには、“オンザフライ”、つまりコンベヤ上の製品の前方移動の停止や減速が発生しない錠剤の穴あけ加工が必要になる。これをレーザ穴あけ加工で実行するには二つの方法がある。第1の方法では錠剤がコンベヤ上のあらかじめ設定された場所に到達した際に、単一レーザパルスで加工を行なう。このパルスは穴あけ加工中の錠剤がそれ程移動しない間に錠剤の外部層を完全に除去してしまう十分に高いピークパワーと十分に短い継続時間を持たなければならない(そうでなければ穴ではなく、溝が形成される)。
 第2の方法では多重パルスを使用する。この方法を実行するにはコンベヤ上の錠剤の移動を光学的に追跡して、それぞれのパルスが錠剤表面の完全に同じ場所を照射するようにしなければならない。通常、これはガルバノメータ搭載ミラーと走査レンズによって実現される(図3)。走査レンズは、製品がコンベヤに沿って移動してレンズから錠剤までの距離がわずかに変化しても、そのビームは適切な焦点を維持するように構成されている。符号器フィードバックを利用し、ベルトによる錠剤のすべりを許さないコンベヤを設計することによって、それぞれのパルスは錠剤の同一の場所を精密に照射ことが保証される。
 多重パルス法はデリバリーシステムの構成が複雑になる。しかし、単一パルスの場合の約1/3 ないしは1/4 のレーザパワーで加工できる。パワーが低くなればコストも低くなり、より複雑なシステムにともなう費用の埋め合わせも十分に可能になる。1個の錠剤の加工に使用できるパルスの最大数はコンベヤの速度、走査レンズの視野およびレーザの繰返し速度によって変わる。標準の錠剤穴あけ加工では、1個の穴あけに約9個のレーザパルスが使われる。
 発生したパルスの厳密な特性が、穴あけ加工の経済性と効率に大きな影響を与える。特に、四角形状のパルスはパルス当たりの利用エネルギーが高く、より少ないパルスで加工作業を行うことができるため、三角形状のパルスよりも好ましい。必要なパルス数が少ないほど加工の範囲が広がり、柔軟性が大きくなる。また、無駄なエネルギーが減少するため、加工材料に誘起されるすべての熱損傷が最小になる。
 コントロール・マイクロ・システムズ社は米コヒレント社のDiamond Kシリーズのスラブ放電CO2レーザを錠剤穴あけ加工機の多くに使用している。DiamondKシリーズは四角波のパルス発生の利点に加えて、オンザフライ加工に適したいくつもの利点を備えている。これらのレーザから得られる“パワー・オンデマンド”機能は最も重要な利点になるはずだ。これによってレーザのパルス発生特性の実時間での制御が可能になり、必要な場合はパルス数を単一パルスのレベルに減少することも可能になる。対照的に、多数の産業用レーザは固定または可変範囲が狭い繰返し速度のパルスで動作する。さらに、その他のレーザ方式の多くは、数個のパルスによって定常状態の性能レベルに達するため、それぞれのパルスからは一貫した結果を得ることができない。しかし、スラブ放電による設計ではこのような制約がなく、完全なパルスが瞬間的に発生する。したがって、パワー・オンデマンド方式はレーザ動作を実際の製造ラインの任意(可変であっても)の送り速度に対応させることができる。コンベヤシステムの機構を調整したり、固定されたパルス速度のレーザに同期した厳密に正確な時間で錠剤を供給したりすることを考えると、非常に簡単な方法になる。
 結論を述べると、製薬はレーザ応用の一つの重要な分野であり、そこでは高いスループットとプロセスの一貫性が特に重要な意味を持つ。スラブ放電レーザがこの二つの目標の達成に必要な出力特性を備えていることは確かである。また、このレーザは技術が成熟しているため、優れた信頼性と低い消費コストを実現できる。これらの二つの実現は政治的/市場的圧力によって全体コストの低減が必須になっている製薬会社にとっては非常に重要だ。

表1 錠剤の検査結果

図1 浸透圧ポンプ錠剤の構造は半浸透膜で囲まれた薬物層と押出し層から構成されている。

図2 構成部品を図解して示した標準方式のレーザ錠剤穴あけシステム。

図3 “オンザフライ”穴あけはガルバノメータ搭載ミラーと走査レンズを使用して、コンベヤ上の錠剤の前方への移動の中断を防いでいる。

Drilling一覧へ

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.