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創業時から3D

フランツ・J ・グルーバー

VIA レーザテク社は3D レーザサービスに特化した数少ないプロバイダとして成長している。

 昔ながらのレーザジョブショップの多くが、早い段階から3次元(3D)レーザ材料加工に参入するようになり、この分野での需要も拡大してきた。しかし、常にうまく行くというわけではなかった。毎日使われる2D 装置に比べると、高価な多軸システムは据付けられているだけの場合が多い。したがって、3Dを稼動可能にするには、最低限の利用率であっても、加工を必要とする顧客に付加価値を与え、利益が得られるようにしなければならない。
 この状況は設備の利用率が3D レーザ加工だけで決まる「3D専門会社」の中でもばらつきがあり、3D加工のノウハウが蓄積されている会社もある。このことは創業当初から3D 加工だけのサービスプロバイダに特化してきたドイツのキルヒフンデムのVIAレーザテク社(VIA Lasertec)の場合にも当てはまる。VIA社にある加工装置全体と見ると、2D切断加工システムも使われているが、注意深く見てみると、他の会社に比べてヤマザキマザックのSpaceGearのZ軸による“2.5D”加工がより多く行われていることに気付く。
 VIA社の事業部長を務めるラルフ・ポリツィン氏は、「われわれも2D加工を行うが、大量に加工しているわけではない。プロトタイピング事業、つまり数量は少ないが、例えば納期が48時間以内など、納品までに最短の時間を要求される製品に重点を置いている。われわれは間違いなく3D 加工に特化しており、その80%は切断、残りが溶接になっている」と語っている。この3D加工を行うために、同社は独トルンプ社製のLasercell1005 3台とイタリアのプリマインダストリー社製のRapido 1台、計4台の多軸システムを使用している。
 VIA社は、ドイツ南ザウエルランド地方の数社の自動車部品企業によって3D加工だけを目的として1998年に設立された。この地方は多数の自動車部品企業があり、そのなかで特殊能力をもつ数社が共同購買を目的にしたイノベイティブ・オートモティブ・サプライヤーズ協会を設立していた。この協会のドイツ語の頭文字をとって名づけられたVIA社は、一方では共同購買を目的にしていたが、他方では将来性のある事業の探索を目指した活動を続けていた。その結果、その約10年後に現実の事業が生まれた。
 VIA社は、長期にわたって独立会社として自由に市場活動を行い、そのごく一部が提携企業からの受注であった。主要な顧客は金属加工に特化しているノルトハインウエストファレン地方にあったが、これが3D 加工への道につながった。3D 加工の会社はまだ少なく、特殊な3D加工に必要なノウハウと実績をもつ会社は現在でもほとんど存在していない。その結果、ドイツのすべての顧客からの特殊な発注はキルヒフンデムの同社に集中するようになった。
 レーザ加工のジョブショップに特化したVIA社にとって、レーザ切断や溶接は最も重要な加工になっている。付随する加工も全て含めた完全なシートメタル(板金)加工を探索することは難しい作業だが、VIA社にはエッジ加工、溶接、組立、塗装などを行ういくつかの関連会社がある。これは非常に重要で、VIA社へはトータルな加工の発注が可能になる。ポリツィン氏は「われわれは市場が要求するすべての加工をわれわれ自身の手で可能にしている。折畳みプレス加工が必要ならば、すぐに自社でできるようにするが、これから集中し、続けていきたいと思っているのは、3Dレーザ加工だ」と語っている。しかし、計量技術は例外で、VIA社には精密測定装置を整然と配置した部屋があり、そこでは社内ニーズの測定ばかりでなく、外部から依頼される測定サービスも行っている。
 VIA社に設置された本当の意味で最初の3D 装置は、TRUMPF TLC 1005で、その後に2台が追加され、最近の1台は1年半前に導入された。これら3台のシステムはレーザパワーを別にすれば同一のもので、最も古いレーザは2.4kWで動作し、その後の2台のレーザは5kWで動作する。5kWの2台は主に溶接用として使用され、切断用には使われていない。2.4kWのTLCは溶接にも使われる。受注した加工をすべての装置で問題なくできるようにすることは、非常に融通性が高くなることを意味する。ポリツィン氏は「このように3台の装置に融通性があることが大きな利点となり、市場への迅速な対応が可能になる。われわれの仕事の80%は3台の装置が持ち回りで行う。その結果、迅速な対応を保証できる」と語っている。
 3台のTLCの仕様は類似しているが、よく見ると、いくつかの相違点がある。第1 にレーザパワーが異なる。さらに、ポリツィン氏が「例えば、一方にはさまざまな方法で使えるサイクルテーブルがあり、他方にはパイプ加工専用装置として使える回転アクセルの機能がある」と説明する、第2の優れた付属機能がある。
 3D分野のオートメーションは現在でも微妙に難しい問題のため、VIA社では主に装置のマニュアルプログラミングが使われている。オートメーションは、例えば溶接の場合のように、加工中の製品に対して複数の固定工具を使う場合に限られる。これらの固定工具の設計と作製は社内で行われる。レーザの利用率は、オートメーションを使わなくても非常に高い。レーザセルシステムの作業室はそれぞれ分離されているため、加工製品の取り付けと取り外しは平行して適切なときに行うことができる。このことも利用率の向上に役立っている。
 ポリツィン氏によると、VIA社では2台のシステムの同時使用は毎日の作業で行われている。彼は、「われわれにはオートメーションの仕組みを大々的に導入する機会はほとんどない。その代わり、従業員がもつノウハウに大きく依存している。これまでと同様に、ロボットでは得られない多くの直感と経験が不可欠だ。われわれは一定の公差のなかで作製された部品を使って作業するため、従業員のノウハウなしで加工を成功させることはできない」と語っている。
 Rapidoは1回の受注が数百万個になる製品用の専用装置として導入された。このような場合、柔軟性は副次的な役割になる。Rapidoは同一の鋼材を終日中4kWのレーザパワーで切断する。実際のところ、数百万個もの大量の加工は例外的で、多くの場合は数千個の部品の受注になる。それでも、このような量はVIA社の日々の作業にとっては「大きなロットサイズ」としてみなされる。
 すでに述べたように、切断は車体の機能部品ばかりでなく、優美な外装部品でも主要な加工になっている。VIA社は自動車メーカーがより高強度の鋼鈑の採用へと移行し、大きな市場機会がレーザ切断に開かれようとしている事実を十分に認識している。この損耗のない加工手段は一連の製造工程に導入できるため、VIA社のような3Dサービスプロバイダに対して、将来、利益をもたらすことは明らかだ。
 自動車以外の分野でも、例えば衛生設備、白物家電、汎用機械、車両製造、食品産業、システム構築、コンテナ建造などでの3D 加工は意外なほど成長している。VIA社の製品展示室を眺めると、そこにはさまざまな3D 製品があり、3Dレーザ加工には素晴らしい将来性があることが理解できる。これを裏付けるように、ポリツィン氏は、「今年、われわれは“曲がりアーム付き固体レーザ”の機能をもつ装置をもう1台購入して、その3D性能を試験する」と述べている。
 ポリツィン氏は、以前ティュセン・レーザテクニク社(Thyssem Lasertechnik)に在籍し、現在でもロボットに関する理解は非常に深いものがある。そのため、VIA社は独自の方法で、希望の条件下でロボットの利用を開始できる。ポリツィン氏は「私は懸垂型ロボットを備えたポータルシステムを無視しているわけではないし、来年にはファイバレーザを導入するつもりだ。その結果、特に大きな加工エリアにおいて、わが社の柔軟性はさらに向上する」と語っている。
 しかし、彼が述べたように、導入の最終判断までにはいくつかの詳細を詰める必要がある。彼は「ファイバレーザが溶接に適していることは間違いない。しかし、私はファイバレーザが切断に対して何ができるかを詳しく検討するつもりだ。われわれは溶接と切断の両方に使える装置を必要としている」と述べている。これは検討項目の一部だ。他にも、彼がCO2レーザを使いこなして、そのすぐれた機能を十分に理解していることがある。間もなくキルヒフンデムで下さなくてはならない決断は容易ではないはずだ。

図1 VIA 社の事業部長を務めるラルフ・ポリツィン氏は、「われわれは間違いなく3D 加工に特化しており、その80%は切断、残りが溶接になっている」と語っている。

図2 トルンプ社のTLC 1005 が他の2 台の装置とともにVIA 社の基幹システムを構成している。

図3 Rapido は一括大量受注の専用装置として購入された。この装置は主に排気管用の部品の切断に使われている。

図4 小型のマザック装置は“2.5D”加工に使われ、2D 加工事業の突破口になっている。

図5 VIA 社を代表する事業は、例えばフォークリフトメーカー向けの部品などの成形部品切断だ。

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