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太陽電池の製造:コスト効果の高い生産のためには?

ダン・クロウリー、ペーター・クロニン

有能な製造装置とサポート基盤のタイムリーな導入は、太陽電池産業の急速な成長にとって重要だ。

 太陽エネルギーの大きなメリットに対して異議を唱える人がいるだろうか? われわれの惑星の太陽は、クリーンなエネルギーの再生可能資源を作り出す。他の多くのエネルギー資源の価格が上昇を続ける中、太陽エネルギーのコストは無料のまま固定している。このエネルギーを活かすために必要なのは、ただ一つ。太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する経済的な太陽光発電(PV)システムだ。
 太陽エネルギーのメリットは疑う余地がない。しかし、世界のエネルギー利用における割合は増加しているものの、PVが作り出せるエネルギーは比較的少ないままだ。この一因は、太陽電池の製造コストが比較的高いことにある。業界および政府による奨励が功を奏して有効原価は低減し、ひいてはPVシステムに対する要求を生み出している。しかし、最終的には、太陽電池セルが低コストで製造される必要があるという事実に行き着く。現在、効率を高めコストを低減するため、シリコン(Si)や薄膜基板などの材料研究が行われている(図1)。
 太陽電池製造のトータルコストは、二つに大別できる。材料と製造だ。多くの研究が材料開発に向けられているが、PVの製造において要求されるスケールメリットをいかに達成するかについての研究はほとんど見られない。

生産時間の節約

 PVが作り出すエネルギーに対する要求が地球規模で増加しているため、PV製造装置のニーズも増加している。市場に技術を持ち込む競争ではない。コスト効果の高い大量生産のための競争だ。有能な製造装置とサポート基盤のタイムリーな導入は、太陽電池産業の急速な成長に重要となる。
 企業は、PV製造装置のソリューションを市場に導入するために、フォトニクス、フラットパネルディスプレイ(FPD)、半導体などの産業からモーションプラットフォーム、レーザ、光学系、光学機械などの技術を取り入れてきた。これらのコンポーネントは、エッジ・アイソレーションやアイソレーション・スクライブ加工など多様な加工用途に、すぐに使用できる装置を構成する実績のある大量生産用資本設備に組込まれる。

コンポーネント

 いくつかのコンポーネントは、全ての太陽電池セルの製造に共通している。加工工程において移動する製品のためのモーションコントロール装置やモーションプラットフォーム、材料加工におけるレーザやビーム伝送光学系、太陽電池のセルの出力や性能を試験するための光源などだ。
 太陽電池セルやパネルの加工に対するモーションコントロール装置やモーションプラットフォームの要求は、他の産業で要求されるものとほぼ同じだ。様々な形状やサイズが手に入る既存のモーションコントロール/プラットフォームは、PV製造工程において移動する材料を管理するためのコスト効果の高いソリューションだ。
 たとえば、ほとんどのSi太陽電池セルのサイズは、100〜150mm。200mmのセルの製造を目指しているメーカーもある。この形状が必要とするのは、半導体やマイクロエレクトロニクス産業で使用されているものと同様のモーションプラットフォームだ。また、大型の薄膜パネルは、FPD産業で用いられるモーションプラットフォームが対応するサイズに含まれる。
 サイズに加えて、精度や速度など既存のプラットフォームの臨界パラメータは、太陽電池セルやパネルの製造装置の要求に合致する。このようなプラットフォームは、材料移動にすぐに利用できる上に、薄膜太陽電池パネルのアイソレーション・スクライブ加工のようなPV製造工程での利用に適合している。
 高性能なモーションコントロール装置は、セルやパネルの高い精度を達成するため、レーザスクライブ加工機に使用されている。スクライブ線の位置がセルの表面エリアや効率に影響するため、Si太陽電池セルには高い精度が重要になる。エッジに極力近づけてスクライブ加工することによって、太陽にさらされる重要な「地面」表面の制限が解かれる。薄膜パネルは、スクライブ加工により分割され、それが連結されてたくさんの独立したセルになる。
 通常、3回のスクライブ加工でセルの分割と相互接続を行う。3本のスクライブ線に使われるエリアは、発電には貢献しない。そのため、3本の線はできるだけ近づけて加工する必要がある。精密なモーションコントロールと安定したプラットフォームは、大きなパネルの全域で線幅を一定に保つ。
 高い精度は、注意深いプラットフォーム設計によって達成される。材料とコンポーネントの選択も全体的な精度に関係する。御影石と加工された人工の複合材料が安定性と振動減衰性のために使用される。熱的に適合するコンポーネントは、環境や加工温度の変化があっても精度を安定させる。エンコーダ、リニアモータ、プログラム可能なモーションコントロール装置は、高速で正確な動作を提供する。

レーザ加工

 レーザ加工の方法は簡単だ。レーザビームを集光し、材料除去に利用される。“アブレーション”として知られる加工だ。これは、一般にマイクロ加工と呼ばれる。レーザは、加工する材料の具体的な特性(吸収、溶融温度、熱拡散性など)に合わせて選択しなくてはならない。
 パルスレーザは、各パルスごとに非常に小さな部分を蒸発させることにより材料を除去していく。特定のスポットサイズが得られれば、パルスを重ねてスクライブ加工された材料に連続した線を作り出すようにパルス繰返し率を調整できる。繰返し率は、レーザと材料特性の相互関係を考慮することによって決まる。
 レーザのパラメータは、パワー、波長、パルス長、吸収係数、安定性など。これらの特性とパラメータが合わさって、材料除去の品質と速度が決まる。近接した材料を損傷することなく、高速にレーザスクライブ加工するには、パワー密度を最適にすることが重要になる。加工の要求、信頼性、安定性、保守性、操作コストなどを考慮すると、PVのレーザスクライブ加工には半導体励起レーザが一般的に選択される(図2、33)。
 レーザによる線はPV製造に使用されるさまざまな材料を加工することが要求される。機能が整った装置サプライヤの応用ラボは、加工レシピを開発するために有効だ。PV用には、レーザと加工の両方が、フォトニクス産業のものを利用できる。
 レーザのビーム品質は、プロセス制御と速度にとって重要だ。レーザ出力を最大限に活用するため、ビームの均一性と光の輸送効率も最大でなくてはならない。光学系は、レーザ光源から加工面へビームの効率的な伝送を可能にする。ビームは、自由空間光学系またはファイバを通じて移動する。偏光子、フィルタ、ミラーは、加工面でのビーム形状の最適化を確実にする。光学経路の最後では固定された光学系またはガルバノスキャナが、太陽電池セルまたはパネルをスクライブ加工するため、エネルギーの焦点を当て、方向を決める。レーザや材料表面での加工パラメータに適合する十分な視野と分解能をもつことがスキャナにとって重要だ。複数のレーザや分割されたビームを利用することによって、加工速度の向上をはかることができる。

統合的解決法

 すぐに使用できる資本設備が提供されることによって、統合的な解決策が得られる。この設備は、モーションコントロール、レーザ、光学系、自動化、ソフトウエアなどを集積して構成されている。各サブシステムに対する技術的挑戦と、そのサブシステムの集積が一つのサプライヤによって行われるのであれば、それはPVメーカーにとって明らかにメリットになる。同じ社内で装置の設計と製造が行われることのもう一つの大きな利点は、顧客支援のために活用できる確立されたアプリケーション・サポートと現場支援組織だ。
 PV装置を設計するにあたっては、解析、設計、ソフトウエア、制御の全ての分野における中核技術を用いた工学的能力も要求される。コスト効果の高い大量生産に向けた競争では、迅速かつ費用効率よく装置を構成し製造するため、装置サプライヤは最新の製造技術を使わなくてはならない。
 レーザ方式の加工ツールは、太陽電池セル製造に求められる複雑な加工の多くにとって画期的解決策となる。こうした装置は、高いサイクル速度を達成する。レーザのエッジ・アイソレーションとレーザ・アイソレーション・スクライブ加工装置などが一般的な例だ。
 高速レーザスクライブ加工は、大型のモノリシックな薄膜パネル製造における重要なプロセスだ。モノリシックな薄膜基板ソーラーパネルは、小さなセルへの分断と直列な相互接続を作るためにスクライブ加工が必要だ。レーザ・アイソレーション・スクライブ加工は、この直列接続を作り出すための高速スクライブ加工に用いられる。潜在的な出力パワーを最大限引き出すことによって効率的なパネルが作られる。
 Si太陽電池セルは、レーザ・エッジ・アイソレーション装置が材料を蒸発させ、基板の上面に溝を作り、側面と電気的に絶縁させる。これは、反射防止膜からのエッジ汚染が原因の高い抵抗短絡による漏損をなくす。この絶縁により、太陽電池セルの効率が上がる。
 この操作が簡単な装置は、材料搬送系、先進的なマシンビジョン、モーションコントロール/プラットフォーム、レーザ、レーザビーム伝送光学系などの多くのサブシステムで構成されている。材料搬送系は、自動的に基板を作業エリアに移動させる。搬送系の配置は、バッチ・モード、インライン(シングルレーン/デュアルレーン)、カセット・トゥ・カセット、ロール・トゥ・ロールなど、具体的なアプリケーションによって決定される。ビジョンシステムは、レーザが所望の形状からプログラムされた補正値で材料を加工できるよう、加工位置のマークや基板の角を見つけるために使用される。この装置のモーションプラットフォームは、加工面上でビーム伝送ユニットを動かし、正確に配置する。
 集光されたレーザビームは、材料を除去するツールとして使用される。レーザビーム伝送ユニットは、マイクロ加工のためにレーザを導く。加工速度を上げるために複数のレーザもしくは分割されたレーザビームが使用される。

規模の利益の達成

 PVシステムの利用を拡大するためには、その生産コストを抑えなくてはならない。他の産業の既存の製造基盤を利用することによって規模の利益を達成することが、その主な解決策になる。その一つの成功モデルは、太陽電池セル製造のための大量生産用資本設備や工程の市場に、迅速かつ首尾よくレーザや光学系など、既存の産業の部品を修正し利用したことによって実証されている。既存のアプリケーション・サポートやフィールドサービス組織を活用して顧客サポートができることは、このモデルの大きな利点である。

図1 生産量の増加に伴って、PV モジュールの価格は落ちている。

図2 レーザの波長と吸収深度の関係。

図3 1064nm で加工されたシリコン。スクライブ下部(左)とスクライブ上部(右)。

図4 光学系またはガルバノスキャナが太陽電池にレーザビームを送る。

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