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複雑な微細構造のカッティング

クラウス・ヴォルラース

新世代のレーザがステント製造の生産性と品質を後押しする。

 現在のステントの製造工程では、自動運転は僅かで、クローズドループプロセスの制御手段も欠如している。新しいステントの作製には、より均質であることが求められ、そのために著しく高度なプロセス制御が求められる。これらの目標達成に向けて重要な要件となるのが、速度、精度、そして突出したレベルのプロセス制御能力で優位性をもつ半導体励起ファイバレーザ切断装置だ。
 インターベンショナル心臓病と放射線介入治療向けの革新的な医療技術メーカーである独eucatech社のCEO、マイケル・ギース氏によると、「ステントの新世代が到来したことによって、全体としての製造工程連鎖(チェーン)の徹底的な再設計というニーズが生まれた」という。同社は、ステントシステムとそれに関連する応用装置に明確に焦点を当てている。ステントは拡張可能な金属の格子型構造をもち、たとえば詰まった凝血を取り除いた後など、弱くなった血管を固定するために使用される(図1)。このアプリケーションにおける標準的な治療では、最初に特別なカテーテルを用い、その後、拡張可能な先端部分を膨張させる。形状記憶合金を用いる代替技術も利用可能になっている。ステントは、ステンレス鋼、コバルトクロム合金のような高品質合金、またはニチノールのような形状記憶合金でできた薄壁の管から作製される。優れた拡径率を達成するための必要条件である繊細で複雑な格子構造は、精密レーザ切断技術を用いて作られる(図2)。新しい開発によって生まれた課題によって、メーカーは切断プロセス結果の安定性と均質化に注力しなくてはならなくなった。

目的は総合的な品質管理

 ギース氏は、「他の体内に挿入される異質の材料と同様に、ステントは体内環境と相互作用を起こし、治癒過程を妨害しかねない刺激を発生させる可能性がある」と明かす。そのため、新しい開発には、パクリタクセルのように、適した薬剤を挿入から8〜10週にわたって放出し続ける生分解性マトリクスから成る薬剤溶出コーティングのステントも含まれる。しかし、こうした開発には、自ずと米食品医薬局(FDA)のような機関の検証や承認が追加で必要となるため、製造工程が達成しなくてはならない要求も高くなる。適切な投薬を確実にするために、FDAはステントの総表面積に対して放出する量を厳しく制限する規定を設けている。そのため、製造上の公差は、以前の15%程度からわずか6〜8%へと狭まった。支柱の直径も、110μmからわずか60〜85μm へと、より小さくするトレンドがある。こうした要求は、同社が以前使用していたレーザ装置の精度の限界を超えていた。また、高い精度を提供する改良されたレーザ技術への切替えに合わせて、全体の工程連鎖の設計も見直さなくてはならないことが明らかになった。長期的には、マニュアル操作とオープンループのバッチ系品質保証手段を伴う現在の準工業的アプローチは、手動による支障がなく完全に自動化され制御できる、“管からステントまで”の工程連鎖によるモノリシックなIT方式の総合的品質管理システムに置き換えられざるを得なくなる。
 ターンキー方式の高精度レーザマイクロ加工機を特注専門で製造するスイスのSwissTec 社のCEO、エドワルド・ファスバインド氏は、「レーザ切断加工は、全体の工程連鎖のまさに始まりであると同時に、最高の結果を出すためには不可欠だ」と語っている。選ばれた装置は、英SPIレーザーズ社の半導体励起ファイバレーザ装置、redPower(出力50Wまたは100W)を装備したmicro-T15Fだ(図3)。このユニットは、高精度のステントの生産に対する全ての要求を工業規模で満たすよう、慎重に組立てられた。頑丈な御影石ベースの構造、直線走行のX軸、レーザ成形/集光装置に始まり、最先端のIT制御システムに至るまで、全てのコンポーネントが、事実上メンテナンス不要な年中無休/24時間体制の生産サービス用に設計されている。制御システムには、加工対象に集光するレーザビームのためのCCDカメラ監視システムなどの制御システムも含まれる。この装置が優れているのは、先行モデルの毎分150〜250mmに比べて現状毎分500〜600mmという速度を実現している点、そして10 〜 12μmという大変狭い焦点が提供可能であるという点だ。管の内部空冷機能を加えた上で、顧客と共同で行われた試験では、最高毎分2000mmの切断速度が達成されている(図4)。
 ギース氏は、「新しい装置でわれわれがもっとも歓迎している機能は、ランプ励起から半導体励起技術への移行だ」という。ランプの問題としては、耐用年数が約2000時間とかなり限られていることは別としても、そのドリフトがレーザビームの特性にも影響し、結果的に不安定な加工パラメータにつながるという点が大きい。わずか稼動後数100時間でも、頻繁に標準以下(時には許容範囲外)の結果がバッチ処理される。生産は中断しなくてはならず、その後レーザ装置が完全に再調整されるまで再開できない。この作業はゆうに1シフト時間の範囲を超え、高い技能をもつ(つまり人件費も高い)専門スタッフも関与させなくてはならない。この状況とはまったく対照的に、新しい半導体励起レーザは、通常のスタッフでも極簡単に調整可能で、非常に長時間にわたって安定していることが特徴のため、再生可能な加工結果をもたらす。非稼働時間は半分になり、装置の使いやすさも一気に90%も改善され、許容範囲外の加工品の割合は劇的に低下した。また、新しい装置の優れた加工速度によって、ステント生産のスループットは古い装置と比較して2倍になった。総合的な結果としては、全体ユニット当たり、1日当たりの出荷可能な製品の生産量が大幅に上昇した。
 ギース氏は、「新しいレーザ切断装置は、最終的に形成される完全に自動化された生産連鎖における最初の工程ブロックで、その後の検査/処理用装置とのインタフェースでもある」と説明している。もう一つの重要な工程ブロックは、100%無人でステントの内側および外側の形状を1μmの分解能で品質評価できる完全に自動化された光学検査装置だ(図4、5)。この装置は、2度にわたって使用される。最初はレーザ切断の直後にステントの形状を評価するため。2回目以降はステントが電気研磨や加熱処理などその後の製造工程を通過した後だ。
 この検査は、レーザ切断装置に素早い対応で品質管理のフィードバックを提供し、生産パラメータの継続的な最適化を可能にする。また一方で、その時の製品の形状的な特性に適切な電気研磨加工のパラメータを適応させることも可能になっている。光学検査装置へと進む第2工程の間、ステントの構造や形状が正しいかどうかの確認に加えて、表面品質の評価が十分に行われる。その後、この制御システムは、その結果を以前同社によって記録された全ての不良品タイプの知識ベースと比較する。

技術革新のための協業

 ギース氏によると「すでに工程に組入れている3 番目の工程ブロックは、高真空の熱処理装置だ」という。この工程は、ステント素材の機械特性を希望通り確実に組合せるために重要だ。ステントは、その拡径率を決める機械的強度とともに柔軟性も備えていなくてはならないが、何よりも破損に対する絶対的信頼性が要求される。
 レーザ切断装置や光学検査装置を合わせると、eucatech社は、完全自動化のステント生産連鎖という将来を決定付ける類の設備をすでに三つも稼動している。彼らが現在、共同研究所で進めている準備が、すでに将来予想される生産ラインでのレーザ装置の相対的地位を物語っている。ロボット操作システムやコンベヤシステムに加えて、更に装置を追加することによって、これを補完していくことになる。
 勿論、このような広大なビジョンを実現することは容易なことではない。その道のりも数々の予測不能な困難で覆われているはずだ。そのような状況の下、ただ単によい装置を提供すればよいというものではない。すべての関連するチームが、進行する技術革新の過程で協力することが求められる。「レーザ装置のサプライヤとしてSwissTec社を選ぶにあたっては、この点が重要な役割を果たした。この決断は、6年間の密接な協力関係の末の相互の信頼の上に成り立っている」とギース氏は語っている。

図2 写真のステントの広がりは、この構造がすばらしい拡径率を実現できていることを示している。(資料提供:クラウス・ヴォルラース)

図3 管供給器(右)とレーザユニット(上)が配置された作業エリア。(資料提供:クラウス・ヴォルラース)

図4 モニターに表示されたカメラが捕らえたレーザ切断加工の様子。( 資料提供:SwissTec 社)

図5 光学検査装置と熱処理ユニットは将来における完全自動化ステント生産連鎖のための更なる重要な工程ブロックだ。

図6 自動化された光学検査装置は、ステントの内外の形状品質の評価を行う。

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