All about Photonics

国内リポート 詳細

5G時代のフォトニクスを探る!
フォトニックデバイス・応用技術研究会、平成30年度ワークショップを開催

DSCN3699

December, 23, 2018, 東京-- 光産業技術振興協会/フォトニックデバイス・応用技術研究会(代表幹事:上智大学・理工学部教授 下村和彦氏:写真)の平成30年度ワークショップ「5G時代のフォトニクス」が12月5日(水)、東京都港区のフクラシア浜松町において開催された。
 同研究会は、フォトニックデバイスとその応用技術の現状および動向・展望を話し合い、産官学会員相互の情報交換と討論を通じて、光産業技術の育成と振興を図ることを目的に1986年、「OEIC懇親会」の名称で設立。その後、名称を現在の「フォトニックデバイス・応用技術研究会」に変更して活動を続けてきた。
 研究会では、会員の要望に沿った技術テーマで企画を行い、各方面から講師を招聘、半日の定例研究会を年に5回開催するとともに、今回のような丸一日をかけた一般公開スタイルのワークショップを年1回開催している。講演分野は光デバイスから、光通信システム、光実装、光インターコネクションなど、多岐に渡っている。

5Gに必須なフォトニクス技術
 今回取り上げられたテーマは「5G時代のフォトニクス」だ。我々の生活が劇的に変わると注目を集める5Gとさらにその先のBeyond5Gを含め、そこに関わる光通信技術の最新動向が紹介された。なお、今回のワークショップには、会員以外からも約30名の参加があったという。

 今回、基調講演は2本行われたが、最初の基調講演はKDDI総合研究所の鈴木正敏氏の「5G/Beyond5Gに向けた光通信技術」。鈴木氏は、5GおよびBeyond5Gに向けて激増するモバイルトラヒックを収容するための光伝送技術として、光空間多重による10Pbpsの光コアネットワーク技術と長距離・大容量が可能な新しいRoF(Radio over Fiber)伝送に基づく光アクセス技術を紹介。5Gおよびそれ以降のBeyond5G時代は、総トラヒックに占めるモバイル通信トラヒックの割合が著しく増加するため、光と無線およびIPネットワーク技術や最適なサーバ構成など、統合的な融合技術が重要だと述べた。
 
 次に登壇したのは、トヨタIT開発センター・社会システム研究部の羅章奕氏で、「これからのクルマ社会システム及びアジアV2X活動紹介」を講演した。羅氏は、自身の取り組むV2X活動として、大災害時における被災者救助、安否確認、生活支援など、クルマを無線基地局として活用する事例を紹介。クルマは新しい社会システムのプラットフォーム・サービスとして期待されていると述べ、交通事故が大きな問題となっているアジアにおいては、その原因を分析・把握することでクルマ側、法律、教育およびインフラ分野の対策が可能になり、国際的な標準化とガイドラインの推進によって新たな社会システム実現の可能性を拡げたいと述べていた。
 
 「5G時代に向けた光アクセス(PON)システムの標準化と技術動向」を講演したのは、三菱電機・情報技術総合研究所の吉間聡氏だ。光アクセスシステムは、40G/100GクラスのNG-PON2と100G-EPONの標準化が進行中で、トラヒックの伸長が著しい無線基地局の収容システムなど、これまでのFTTHには留まらない広範囲な適用が期待されるという。NG-PON2では商用導入に向けて低コスト化や仕様拡張が求められている状況で、一方の100G-EPONでは2020年完了を目指し、物理層を中心に標準化が進展中とのことだ。吉間氏は、5G時代を見据えた無線基地局への光収容にPONシステムを適用して行くには、伝送速度や遅延量の要求を考慮した機能拡張が必要だと指摘した。

 基調講演2本目は、総務省・総合通信基盤局移動通信課の中里学氏による「2020年の5G実現に向けた取組」。5Gの技術的な特徴やサービスイメージ、ネットワーク構成を概観した後で、2020年の5G実現に向けた総務省の三つの取り組み(①研究開発と実証実験、②国際連携・協調、③制度整備:5G周波数帯の具体化および周波数帯ごとの技術的条件の策定)を紹介。5Gが実現する未来の風景をイメージした動画も紹介した。なお同省では、今年度の「5G利活用アイデアコンテスト」で地方発の発想による利活用アイデアを募集、その結果785件ものアイデアが寄せられ、1月に東京でコンテストを開催するとのことだ。

 「サッカースタジアムでのRoFベース5G無線実験と今後の展開」を講演した三重大学・大学院工学研究科の村田博司氏は、大規模サッカースタジアムにおける5G無線通信の実証実験に世界で初めて成功した。これはアンテナ局を観客席の天井等に分散配置して、光ファイバリンクで接続・一括制御するというシステム。大勢の観客が着席している環境では、非対称ミリ波通信が有効であることを実証したもので、新たにアンテナ電極光変調器を用いたパッシブRAU(リモートアクセス局)シートを提案している。オリンピックスタジアム等で有効だという。

 早稲田大学・理工学術院の川西哲也氏は「多数の基地局をつなぐシームレスアクセスネットワーク」を講演した。今後、必要とされる膨大な数の基地局をネットワーク化するには、ミリ波やテラヘルツ波、光無線など、各種の伝送メディアを総動員する必要があるという。そのため、これら異なるメディアの境界において複雑な制御をせず、波形を直接伝える光無線融合システムに注目が集まっている。光ファイバで無線信号を送るファイバ無線技術は、古くから研究開発されているが、川西氏は鉄道や航空などの重要インフラへの応用事例を紹介、これらが先導技術としての役割を果たす可能性が高いと述べた。

 「Beyond5G時代のアクセスネットワーク技術実現に向けた取り組み」を講演した日本電信電話・NTTアクセスサービスシステム研究所の南勝也氏は、今後は様々な産業のICT利活用によって高付加価値の社会ICTサービスが普及すると指摘。Beyond5G時代に向けアクセスサービスシステム研究所の近年の取り組みとして、モバイルフロントホールへのPON適用、実スタジアム規模での協調無線LAN技術、FASA(Flexible Access System Architecture)、ネットワーク遅延制御技術があり、さらに将来的にはネットワークのエンド・トゥ・エンド管理、モバイルネットワークとアンライセンス無線の融合、アクセス・ユーザ区間における品質制御が必要だと述べた。

 「閉会の挨拶」を行った同研究会代表幹事の下村氏は、今回のワークショップ開催に当たって、5G技術がどのようなもので、我々の今後の生活にどのような変革をもたらすか、また5G技術に対し光技術がどのように関わって行くのかを深く掘り下げたいという趣旨でテーマを選定したと述べるとともに、講演が終わり、光ネットワーク・システム・デバイスが5Gにおいても非常に重要であることを認識できたと述べ、ワークショップの幕を閉じた。

研究会の今後の予定
 次回の定例研究会は1月16日(水)、「光の応用技術~光をあやつる、光であやつる~」と題して、住友電工東京本社で開催する予定だ。詳細内容は、開催日の約1か月前に決まるということなので、最新の情報は同研究会のホームページ(下記URL)で参照されたい。
 http://www.oitda.or.jp/main/study/pd/pdstudy.html

(川尻 多加志)