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バイオイメージングに適した光を放出するタマネギ状の表面

November, 19, 2015, Buffalo--斬新なタマネギ状のナノ粒子が、バイオイメージング、太陽エネルギー収集、光ベースのセキュリティ技術の新分野となる可能性がある。
 この粒子のイノベーションは、そのレイヤにある。有機色素のコーティング、ネオジウムを含む殻、コアはイッテルビウムとツリウムを含んでいる。さらに、これらの層は、不可視の近赤外光を記録的な効率でエネルギーの高い青色、UV光に変換する、これは深部組織イメージングや光誘起治療から紙幣の印刷に用いられるセキュリティインクまで、技術パフォーマンスを改善することができる秘訣となり得る。
 バイオイメージングに関しては、近赤外光は、身体の深部で発光ナノ粒子の活性化に使用することができる。セキュリティ分野では、ナノ粒子注入インクは裸眼には見えないが、低エネルギーレーザパルスを当てると青く光る。これは偽造者には再現が非常に難しい特徴である。
 「粒子の表面からコアまで効率のよいエネルギー輸送を助ける特別な層を作ることで、われわれの設計は従来技術が直面していた年来の障害克服に役立つ」とHarbin技術研究所化学教授、ILPB研究准教授、Guanying Chen氏は説明している。
 またUB化学PhD学生でプロジェクトで主要な役割を演じたJossana Damascoによると、過去に作製された同様のナノ粒子と比べると、新しい粒子の光「アップコンバーティング」は100倍程度効率がよい。論文は、Nano Lettersに発表されている。

3層それぞれの役割
プロセスは、低エネルギー光源から複数のフォトンをまとめて吸収し、そのエネルギーを統合して1個の高エネルギーフォトンを形成する。
・最外層は有機色素でコーティングされている。この色素は、低エネルギー近赤外光源からのフォトン吸収が優れている。色素は、ナノ粒子には「アンテナ」として機能し、光を集めてエネルギーを内部に輸送する。
・次の層はネオジウムを含む殻。この層はブリッジとして機能し、色素からのエネルギーを粒子の発光コアへ輸送する。
・発光コア内部では、イッテルビウムとツリウムイオンが協働する。イッテルビウムイオンはコアにエネルギーを引き入れ、そのエネルギーをツリウムイオンに送る。ツリウムイオンは、一度に3、4、5フォトンを吸収できる特性を持っており、単一の高エネルギー青色やUV光を放出する。
 研究チームの説明によると、コアだけでは外側からのフォトン吸収が非効率になる。色素を加え、ネオジウムを含む層は色素からコアへの効率的エネルギー輸送に必要になる。
 「物質の中の分子やイオンがフォトンを吸収すると、励起状態になりエネルギーを他の分子、イオンに輸送する。最も効率のよい輸送は、励起状態が同じ量のエネルギーを得る必要がある分子またはイオン間で起こるが、色素とイッテルビウムイオンの励起状態はエネルギー差が非常に大きい。したがって、励起状態が色素とツリウムの励起状態の中間にあるネオジウムを加え、両者のブリッジとして機能させた、つまりエネルギーがツリウムイオン放出にたどり着くためのハシゴにした」とOhulchanskyyは説明している。