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Science/Research 詳細

EPFL、光ファイバを使って2µmレーザを実現

October, 13, 2015, Lausanne--スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、簡素で安価な方法で波長2µmのレーザを実現した。
 波長2µmのレーザが研究者の関心を集めるようになっている。例えば、外科手術や分子検出の分野で、従来の短波長レーザと比べて2µmレーザは大きな優位性を持つ。しかし2µmレーザは初期段階であり、通信波長(1.55µm)に比べるとまだ成熟していない。さらに現在ラボで使用されている光源は一般に大きく高価である。こうした問題に対して光ファイバベースの2µmレーザが見事な解決策となる。フォトニクスシステム研究所(PHOSL)の研究者がこの分野の研究を進めている。
 EPFLのCamille Brèsのチームが、光ファイバの相互接続の仕方を変えることによってローコストでこのようなレーザを設計する方法をLight: Science & Applicationsに発表した。その新しい構成により、非常に優れた2µmレーザを実現することができ、同時に通常必要となる高価で複雑なコンポーネントも不要とした。
 2µmスペクトル領域は、医療、環境科学、産業に潜在的なアプリケーションがある。この波長ではレーザ光は簡単に水分子に吸収される。水はヒト組織の主要な成分。高精密手術では手術中にこの波長を使って水分子をターゲットにし、深く切り込むことなく組織の非常に小さな部分を切る。さらに、レーザのエネルギーが傷の血液を凝固させ、出血を防ぐ。
 2µmレーザは、長距離にわたり空気中の主要な気象データ検出にも非常に有用。様々な工業材料の加工で非常に効果的であることは言うまでもない。
 2µmファイバレーザを実現するには通常、2µmの光を増幅する利得領域を含む光ファイバリングに光を注入する。光がそのリングを周回し、利得領域を何度も通過してパワーを獲得して最終的にレーザ発振する。適切な動作をするために、このシステムは光を一方向に周回させるための高価なアイソレータを含んでいる。
 PHOSLでは、アイソレータなしで動作するツリウムドープファイバレーザを作製した。このアイデアは、光を止める代わりに、光を決まった方向に進ませるようにファイバの接続方法を変えるというものだった。「われわれは、間違った方向に行こうとする光の向きを変えるために一種の脱線をさせ、光を軌道に戻す」とCamille Brèsは説明している。つまり、アイソレータが不要になる。アイソレータは、間違った方向に行こうとする光を止める作用、いわば交通整理の警官である。
 この新しいシステムは、従来のものより安価であるばかりか、レーザ光の品質も高めることを示した。非常に特殊な方法で光がそれ自身と相互作用するのでレーザ出力が純化される。これはファイバの組成やサイズ、この特殊なレーザアーキテクチャで周回するハイパワーによるものである。「ファイバやハイパワー増幅に関連づけると通常は従来のレーザパフォーマンス劣化するが、われわれの特殊なアーキテクチャのためにこのレーザの品質は実質的に向上する」と論文の筆頭著者、Svyatoslav Kharitonovはコメントしている。