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光遺伝学にフィードバックコントロール

September, 16, 2015, Atlanta--光遺伝学には、光ベースの信号を使うだけでニューロンを活性化することによって脳を研究するための強力なツールがある。しかしこれまでは、こうした光学的刺激技術は「オープンループ」であり、ほとんどの生物学的工学的システムが着実な動作状態を維持するために用いているフィードバック制御がない。
 クローズドループ制御の工学的な例は、家庭で定常温度を維持するために使用する単純なサーモスタットである。これがないと、暖房やエアコンは、外的条件の変化に反応することなく稼働し、内部温度が劇的に変化する。
 光遺伝学技術は、感光性を示すタンパク質の遺伝子を、通常そのようなタンパク質を持たないほ乳類の細胞に挿入する。そのタンパク質が特定の波長の光で照射されると、タンパク質は細胞の挙動を変える。ある種のイオンを導入したり、細胞からイオンを押し出して電気活性を変える。しかしフィードバックループがないと、研究者は光信号が所望の効果を得ていることを仮定するだけであり、実験の最後にこうしたことが起こったと確認しようとするだけである。
 こうした問題に対処するために研究者は、光遺伝学的なシステムでループを閉じる、オプトクランプというオープンソース技術を開発した。その技術は、コンピュータを使って、光学刺激に対するニューロンの反応をリアルタイムで取得し処理する。さらに、光入力を変えて所望の発火レートを維持する。このようなフィードバックコントロールを提供することでオプトクランプは、研究者が癲癇、パーキンソン病、慢性的な痛み、抑鬱などの新しい治療の研究が容易になるようにする。
 フィードバックコントロールは、電気入力ベースの神経刺激システムにすでに存在するが、光刺激に対する同様のクローズループコントロールを提供するオプトクランプは初めてのシステムである。
 オプトクランプは、連続的、リアルタイムに光刺激を調整し、神経スパイク動作を、数秒~数日の範囲で、特定のターゲットにロックする。神経集団の発火を光学的に精密制御することで、その技術は、研究者が回路起動の原因となる変数のもつれを解くのに役立つ。
 Steve Potter研究室の研究チームは、神経系に対するオープンループ光学刺激の効果を調べ、多電極アレイおよび動物モデルのニューロンに成長した神経回路網の応答にバラツキの激しさがあることを見いだした。
 「同じ刺激パタンが生み出す活動のバラツキレベルが激しい。同じレベルの活動に必要な光刺激の量が桁違いに変動した、これは制御されている細胞数に依存するか、あるいは同じタイプの細胞や標本でも、対象が違う場合である」とジョージア工科大学ニューロエンジニアリングのPh.D学生で、オプトクランプを作製したJon Newmanは言う。
 培養皮膚神経回路では、オプトクランプは、200細胞の活動を記録するが、これを利用して、より大型の培養数、100万細胞程度で活動を計測することができる。
 「われわれはみなそのような電極を持っているので、リアルタイムでデータを処理し、培養が表現する活動量をターゲットレートと比較できる。さらに、これら2つの信号差を利用して、異なる光波長の強度を変えるように光刺激子に情報を与える」とNewmanは説明している。
 オプトクランプは、電極アレイ上で、電極が埋め込まれた生きた動物モデルで成長する細胞培養をコントロールするめたに使用できる。
 エモリー大学の研究チームと行った実験では、着実な神経発火状態を維持するオプトプランクの能力により研究チームは、神経刺激の欠如に起因する現象、恒常的適応性における重要なコントロール問題を研究することができた。研究チームの考えでは、そのような効果は細胞の発火率によって制御できるが、オプトクランプは神経伝達を禁じる薬剤を添加している間に発火を通常レベルにクランプすることができた。このことは、発火活動ではなく、神経伝達レベルが恒常的適応性の主形態を支配していることを示している。
 「事実上、通常は密接に関連している2つのものを分離することができた。シナプス可塑性の異常な形態のための治療開発に関しては、これは潜在的に非常に大きな出来事である」とNewman氏はコメントしている。潜在的なアプリケーションには、慢性痛、癲癇、耳鳴り、幻肢症候群、その他の神経系疾患で、正常なインプットの欠如に対して脳が過剰反応する疾患が含まれる。
 「クローズドループコントロールは、すべての光学的システムに織り込まれている概念だが、生物化学では見つからないことがある。実験にフィードバックコントロールを導入するときはいつでも大抵、関心対象となる変化するものの制御が容易になる。フィードバックコントロールは、ライフサイエンスにとって極めて重要な概念である」
 研究者たちは、すでに現行形態でオプトクランプを利用しているが、光信号の空間分化改善を望んでいる、それによつて実験が脳の特定領域あるいは脳細胞培養に刺激をフォーカスできるからである。光信号は、現状では培養全体、脳領域全体に影響を与える。
 「われわれは、異なる細胞を活性化するためにフォトンの送達先を精密制御したい」とNewman氏は話している。
(詳細は、www.gatech.edu)