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Science/Research 詳細

多目的センサ、フォトニック結晶ファイバ

September, 16, 2015, Erlangen--マックスプランク研究所光科学(MPL)の研究チームによると、特殊タイプの光ファイバが高精度多目的センサとして使用できる。
 MPL研究者は、微小ガラスビーズを中空コアフォトニック結晶ファイバ(PCF)内に送り込む。ガラスビーズは、電界、温度、振動などの多様な物理量を完全に検出する。微小粒子は、侵襲性の化学物質あるいは石油パイプラインのような苛酷条件でも高い空間分解能で長距離にわたり物理量を検出する。
 「最初、そのアイデアは、原子力発電所内の放射線センサ開発のためであった」とMPLのTijmen Euser氏はコメントしている。同様の仕事は、埋込光ファイバセンサを用いてよく行われている。計測されるものは、ファイバで送られる光が外的要素からどのように影響を受けるかによる。そのような光センサは、遠隔の物理量計測にも使用できる。原子炉の周囲に光センサを巻くことで光センサが原子炉表面全体を調べることができる。しかし、放射線輻射が従来のガラスファイバ内部を不明瞭にし、光が中を伝搬することができず、放射線の計測に適さなくなることが分かった。
 高速データ伝送に使用しているガラスファイバは内側が高屈折率で、それを低屈折率のクラッドが囲んだガラスでできている。その屈折率差により、光ビームは、クラッディングとの界面で反射する。
 ファイバが中空コアであることは研究チームにとって非常に重要であった。空気で満たされたキャビティは放射線輻射で不明瞭にはならないので、研究チームはPCFsを従来の光センサの代替と見なして関心を持ち、究極的には放射線を計測するために使用することを考えている。
 研究チームは、まずは電界、振動、温度の計測に用いることで中空コアPCFsがセンサに適しているかどうかを調べた。
 この目的で研究チームは、微小ガラスビーズを計測プローブとして使用し、それをPCFの細い中空チャネルに通した。これは、ファイバの各末端からレーザビームを送り込むことで達成した。微小ビーズは小さな鏡のように光を反射し、それによって両側からの圧力、つまり粒子に対する光の力によって生成する圧力を感じる。2つのレーザビームのパワー設定を変えることでビーズは一方向にわずかに押され、ファイバを特定速度で移動する。フラットベッドスキャナの照明ユニットのように粒子は、ガラスファイバに沿って1度に1パラメータを調べることができる。
 電界を計測するために研究チームは、ビーズを中空ファイバに送り込む前に他のビーズと擦れ合うことで帯電することを利用した。したがって、電界の中ではビーズはチャネルの中心から端の方に逸れ、通常の位置よりも側面に反射されるレーザ光が多くなる。この光減衰は、ファイバ片端のフォトダイオードによって計測される。ここでの損失は電界の強さに比例し、したがって遠隔から電界を判断することが可能になる。
 飛行するビーズで電界強度の空間分布がどんな分解能で計測できるかを判断するために研究チームはガラスファイバをわずか200µmの非常に小さな電極に近づけた。研究チームは実際に、そのファイバ計測装置で電極の微細構造正確に再現することに成功した。電界や振動は、耐電レベルが異なるビーズの挙動によって区別できる。
 また、そのPCFは温度も計測できることが実証されている。このためには、空気の粘性が温度の上昇とともに減少し、ファイバ内の粒子の移動速度が速くなることを利用している。そのスピードの計測には、研究チームは、ビーズに対して、追加で弱いレーザを照射する。ここではドップラー効果を利用する。
 実験では、オブンを利用してファイバの一部を加熱し、温度を数100℃まで上げた。この温度を5℃程度の誤差で計測することができた。スピードの変動は、この方法の空間精度がわずか数センチメートルであることを示していた。「しかし、回転粒子を用いること、回転周波数が空気の粘性に依存するので、マイクロメートル精度で計測可能である」と研究チームは説明している。