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Science/Research 詳細

シリコンナノ粒子、超高速オールオプティカルトランジスタの候補

September, 14, 2015, St. Petersburg--ITMO大学ナノフォトニクス・メタマテリアル学部の研究グループは、単一シリコンナノ粒子をベースにした光アナログトランジスタ実現の可能性を実証した。
 トランジスタはコンピューティング回路で最も基本的なコンポーネント。したがって、この研究成果は光コンピュータ開発にとって極めて重要。光コンピュータでは、トランジスタは、極小かつ超高速でなければならないからだ。
 信号キャリアに電子を使用する現在のコンピュータ性能は、トランジスタを発動させるのに必要な時間、通常0.1~1nsによって概ね制限されている。次世代の光コンピュータは情報のキャリアにフォトンを使用するが、これによって1秒あたりにトランジスタを通過する情報量は大幅に増加する。こうした理由から、超高速でコンパクトなオールオプティカルトランジスタの実現が光コンピューティング開発に役立つと考えられている。そのようなナノデバイスは、数ピコ秒内の外部制御ビームにより光信号の伝搬を制御することを可能にする。
 ロシアITMO大学の研究グループは、そのような光トランジスタを設計する全く新しいアプローチを提案し、1個のシリコンナノ粒子を利用してプロトタイプを作製した。
 研究グループは、強力な超短レーザパルスを照射することでシリコンナノ粒子の特性を劇的に変えられることを見いだした。レーザはコントロールビームとして働き、超高速光励起により電子-ホールプラズマの稠密、迅速再結合が実現する。ナノ粒子の光特性におけるこの急激な変化により、入力光が散乱する方向を制御することができる。例えば、ナノ粒子散乱の方向は、入力制御レーザパルスの強度に依存して、ピコ秒のタイムスケールで後方から前方に変えることができる。この超高速スイッチングのコンセプトは、オールオプティカルトランジスタ設計にとって極めて有望である。
 「一般に、この分野の研究者はナノ粒子の吸収を制御することによってナノスケールオールオプティカルトランジスタを設計することに注力している。高吸収モードでは、光信号はナノ粒子に吸収され、透過しない。一方、このモードの外では、光は伝搬してナノ粒子を通り抜ける。しかし、この方法からは決定的な成果が生まれなかった」とSergey Makarovシニア研究員は説明している。「われわれのアイデアの違いは、ナノ粒子の吸収特性を制御するのではなく、その散布図を制御する点にある。つまり、ナノ粒子は、ほぼ全ての入射光を後方に散乱するが、それをコントロールパルスで照射すると、それが変更されて光を前方に散乱し始める」。
 光トランジスタの材料としてシリコンを選択したことは偶然ではなかった。光トランジスタの作製では、量産に適しており、同時に過熱することなく数ピコ秒で光特性が変えられる安価な材料を使用する必要がある。
 「われわれのナノ粒子の動作を停止するのに数ピコ秒かかるが、一方、それをアクティブにするのに数10フェムト秒かかる。シリコンナノ粒子がオールオプティカルトランジスタの役割を果たすことを明確に示す実験データをすでに取得している。現在、新しい実験を企画しており、そこではレーザコントロールビームとともに、有効なシグナルビームを導入する予定である」とナノフォトニクス・メタマテリアル学部長、論文の共著者、Pavel Belov氏は語っている。