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ブレイクスルーオプティクスにより新たな技術に道が開かれる

August, 27, 2015, Stanford--スタンフォード大学のDr. David A.B. Millerによると、光を制御するデバイス、干渉計の組合せ構成だけで、新しい種類の素晴らしい技術が可能になる。これには、コンピューティング、通信リンクやスイッチ、実質的に他のあらゆる光コンポーネントが含まれる。これは、電子半導体が広範なデジタル技術をを作り出しているのと似た方法である。
 光技術は、コンピュータの消費電力を大幅に減らし、通信を高速化し、化学センサや生物学センサの感度を高める可能性がある。しかし、従来のオプティクスの基本的な構成要素は、ミラーとレンズであり、こうした機能をただちに実行する多様性を欠いており、多くのアプリケーションに必要となる小型化が難しい。
 根本的に新しい光技術設計へのアプローチは、マッハツェンダ干渉計(MZI)として知られる1つのデバイスをベースにしたもので、制約を克服して多様なブレイクスルーアプリケーションにつながるものである。したがって、オプティクスにエレクトロニクスと同様の全く新しい種類の技術への道を開くものである。
 「最近、光学研究者たちは、このような干渉計が汎用的なき構成要素と見なせることを理解し始めた。つまり、基本的に考えられるいかなる光学デバイスでも造れるということだ」とスタンフォード大学のDr. Millerはコメントしている。
 以前は、MZIが完璧なパフォーマンスを達成できさえすれば、このようなアプローチは可能であったが、それは実現不可能思われる目標だった。
 しかし、論文で紹介されたアプローチは、別の方途を示している。完璧な単一コンポーネントを作製するよりも研究チームは、干渉計のメッシュ、つまりアレイを造ることを提案している。適切にプログラムすれば、そのようなメッシュ干渉計は、その不完全なパーツを補償し、全体として完全なパフォーマンスを提供できる。

技術基盤となる干渉計
 干渉計は、基本的に光波を分離し再結合するいかなるデバイスにもなる。音波と同様に光波は結合され、合波される。また、光波は「干渉」したり、相互に消去し合ったりもできる。この基本的な「ON/OFF」機能により、干渉計は様々な方法で生かされ、構成されるのである。
 マッハツェンダ干渉計(MZI)は、1つまたは2つの光源からの光を分離して2つの新しいビームにし、さらにそれらを再結合するデバイスの特殊バージョンである。MZIはすでに科学的な特殊アプリケーション、光ファイバ通信のビームスイッチングに用いられている。
 しかしコンシューマや他のアプリケーションなど、より汎用的な利用は行き詰まっている、デバイスに入ってくる光が最初に分離される仕方のためである。理想的には、ビームは完全50/50対称性で分離されるが、実際の分離は理想にほど遠い。つまり干渉計が信号を再結合する時、完璧に消去することができず、エンジニアは光パスを完全に制御することができない。
 特殊経路で信号を結合またはキャンセルする機能は極めて重要な技術である。しかし、研究チームの理解によると、MZIが大規模なメッシュにアセンブリされ、制御されると、必要な完全パフォーマンスを達成するシステムが実現可能である。これによってメッシュは原理的に、任意の「線形」光学動作が可能になる。コンピュータが、半導体のON/OFF機能を制御して任意の論理的アプリケーションを実施するのと同様である。

自動制御で可能になる技術
 このプロセスを可能にする究極要素はアルゴリズムの考案であった。これは基本的に制御ソフトウエアであり、これによってメッシュは、システム内蔵の単純な光学センサによる受信信号に基づいて光経路をどのように方向付けるかを調整する「自己設定」が可能になる。
 自己修正アルゴリズムにより研究チームは、なんらかの不完全性を持つ干渉計メッシュを提案し、それが完全であるかのように振る舞わせるために補償することができる。そのアルゴリズムは干渉計の「位相シフタ」を制御し、信号の結合、キャンセルを決定する。これは、多様なディテクタで光パワーをモニタするだけでよい。
 「この開発により、これまでにエレクトロニクスで行ってきたことをオプティクスでもできるようになる」とMiller氏は話している。「少数のエレクトロニクスとアルゴリズムを使い、実際に機能する完全なカスタム光学デバイスを造ることで、オプティクスやアプリケーションを大幅に拡張できる」と同氏は説明している。
 メッシュ全体は、初めて製造した後、計算やキャリブレーションなしで、進歩的なアルゴリズムにより最適化もプログラムもできる。したがって、汎用的なフィールドプログラマブル線形アレイ光学素子は量産可能であり、プロセストレランスは高く、後に自動構成により幅広い、複雑で精巧な線形光学機能にできる。

(source: Optica Vol.2, Issue 8, pp.747-750)