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網膜細胞の活動を調べる新技術を実証

May, 12, 2015, Trieste--新しい方法で「変わった」光ファイバを用いて、先進研究国際スクール(SISSA)の国際研究チームは、ロッドの光応答、網膜の感光性細胞を調べることで、光が当たる細胞の領域にしたがって光強度が変わることを実証した。
 光を神経の電気信号に変換する過程の理解向上だけでなく、この研究は光遺伝学で将来、大きなアプリケーションに発展しそうな(光による遺伝表現の制御)新しい実験法も導入している。
 SISSA研究者、Monica Mazzolini氏は、劇場で使用される小さなスポットのようなもので、光線が数ナノメートル(nm)しかないものを考えるとわかりやすいと言う。「しかし光は所定のスポットを照らすだけで、他の全ては真っ暗。実験で使った光ファイバの使い方はこれだ」と同氏は言う。「暗室」の中で、赤外光だけでロッド、つまり網膜の感光性細胞を刺激する。この研究で、光が当たった細胞の領域によって神経の電気的応答が変わることが分かった。
 ロッドは細胞体に接続した小さな円筒構造で、これが軸索、つまり突起になっている。そこからの電気パルスが他のニューロンに伝わって視覚となる。ロッドの外側部は、スタックしたディスクでできており、個々のディスクは多様なタイプのタンパク質を含んでいる、特に感光性色素、ロドプシン。ロッドの先端を刺激すると、ベースを刺激した時よりも弱い応答が見られ、その外側部に沿って効果の勾配ができる。
 「勾配は、恐らくロッドを構成しているディスクが常に更新されているためだ。先端のディスクは古く、ベースのディスクは相対的に新しい」とSISSAのVincent Torre教授は説明している。
 視覚刺激の「変換」プロセス、つまり光を先ずは生物化学的プロセスに、最終的に神経電位への変換の理解を深めることに加えて、この研究論文が紹介しているのは新しい方法と、光遺伝学で幅広く応用される材料の画期的な利用である。
 Mazzolini氏の説明によると、1個の細胞をガラス電極の先端に吸い込む、いわゆる「電気吸引」という古典的な技術と光ファイバの利用とを組み合わせた。ここで使用した光ファイバは特殊ファイバであり、通常の中空ファイバではなく、テーパーになっていて強く閉じ込めた光スポットを供給できる。
 この材料を使うことで研究チームは、ロドプシンやホスホジエステラーゼの応答を詳細に分析できた。ロドプシンは視覚の基盤となる色素タンパク質。こうしたことから研究チームは、今後光遺伝学分野でこれが役立つと見ている。光遺伝学は、光を使って感光性を持つように遺伝子工学で処理されたニューロンを制御する。