コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

36コアすべてマルチモードの光ファイバを開発

March, 30, 2015, 東京--NICTは、住友電気工業(住友電工)、横浜国立大学、オプトクエストと共同で、世界最高の36コアで、かつ、すべてのコアがマルチモード伝搬の新型光ファイバを開発し、光信号の送受信実験に初めて成功した。
 光ファイバ1本当たりの伝送容量を拡大する次世代技術として、マルチコアファイバやマルチモードファイバ伝送が世界的に研究されている。今回、すべてのコアを3モードにし、1本の光ファイバで36×3=108の空間チャネルを実現した。実験の成功によって、1本の光ファイバで毎秒10ペタビット(10Pb/s)伝送の可能性が拓ける。
 2種類の新型光ファイバの製造技術及び疎通評価を合わせて、マルチコアファイバの各コアをマルチモード伝搬にすると、光信号の空間チャネルが大幅に増え、通信容量が飛躍的に増大する。しかし、マルチモード伝搬にするためにコア径を広くするとコアから漏れた光信号の干渉が大きくなる問題や、既存の光ファイバとの接続方式が複雑で、難しい技術が必要であるなどの問題があり、12コアで3モードの光ファイバしか実現していなかった。
 NICTは、36コアすべてがマルチ伝搬モードの新型光ファイバと、既存の光ファイバとを空間結合装置を介して接続し、「36コア×3モード=108」の空間チャネルで通信波長帯の光信号の送受信実験に成功した。
 実験では、横浜国大と住友電工が共同で「36コアマルチモードファイバ」を設計し、住友電工が製造した。また、「既存の光ファイバと接続する空間結合装置」は、NICTとオプトクエストが設計し、オプトクエストが製造した。
 これまで、NICT発表のマルチコアファイバのコア数は、シングルモードで19が最大で、限界と考えられていた。今回は、19コアを大幅に超える36コアを実現することができ、さらに、マルチモード伝搬も成功した。
 空間結合装置については、これまでマルチコアシングルモードファイバ用に開発していたものに伝搬モードの異なる光信号を合波する機能を追加し、1台でマルチコアとマルチモードに対応することができた。
 実験結果の108空間チャネルすべてに最先端光変復調技術やデジタル信号処理技術を利用すると、1本の光ファイバで毎秒10ペタビット級の超大容量伝送の可能性が拓き、今後、より安価で大容量のネットワークサービスの実現が期待できる。