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ライス大学、レーザでポリマからグラフェンエレクトロニクス作製

December, 17, 2014, Houston--ライス大学(Rice University)の研究チームは、コンピュータ制御のレーザで安価なポリマを焼くことによって、多層グラフェンの柔軟なパタンシートを作製した。このプロセスは空気中、室温ででき、熱い炉や制御環境は必要でない。また、エレクトロニクス、エネルギー蓄積に適したグラフェンが作製できる。
 顕微鏡で見ると、研究チームがレーザ誘起グラフェン(LIG)と言っているものは、完全な網状の原子グリッドには見えない。5個、6個、7個の原子リングが乱雑に相互接続したものとなっている。ペアになった5個、6個の原子リングは欠陥と考えられるが、この場合はそうではなく、特徴である。
 実際のテスト用には研究チームは、1段階描画でLIG電極を持つマイクロスケールの超コンデンサを作製した。このプロセスは拡張性があり、ナノスケールエレクトロニクスのロール・ツー・ロール製造が可能である、と同大学化学者、James Tour氏は示唆している。
 また、このプロセスは特定のポリマでしか機能しない。ミズーリ大学准教授(同グループの前ポスドク研究者)、Jian Lin氏によると、研究チームは15の異なるポリマを試し、その内の2つだけがLIGに変換できることを発見した。中でもポリイミドが最良だった。
 Tourは、「結果として得られたグラフェンは銅ほどの伝導性はないが、それは必要ない」と言う。「それは、多くのアプリケーションにとって十分な伝導性だ」。
 LIGは簡単に超コンデンサに変えられる。電池ほどではないが、高いエネルギー供給能力を持つパワー蓄積能力、急速充電を組み合わせたものとなっている。ただし、同氏によると欠陥が重要になる。
 「通常のグラフェンシートは6員環。時々、クネクネした5~7sのラインが見えるが、この新しい材料は5~7sで満たされている。これは非常に珍しい構造で、電子はここでトラップされる。もしそれが通常の(高伝導性)グラフェンだったら、電荷の蓄積はできない」(Tour氏)。
 Yakobsonのグループの計算は、バランスを保った構造によってこの材料が、金属性がより強くなり、電荷蓄積能力が強化されることを示している。
 「極めて欠陥の多いグラフェンのパフォーマンスがよいと言うのは天からの賜、オマケだ」とYakobsonは言っている。
 サンアントニオのテキサス大学物理学部チェアマン、Miguel José Yacamanは、非常に多くの欠陥を確認するために透過型電子顕微鏡イメージングを提供した。
 「われわれは、いわゆる収差修正顕微鏡を持っており、これによって欠陥を見ることができる。解像度は1Å以下、基本的に70pmであり、単一原子を見るにはこれが必要だ」(Yacaman氏)。
 Tourの研究室は、ライスのOshman Engineering Design Kitchenのマシンショップレーザを使い、ロバストなマイクロ超コンデンサを作製した。最高結果は、容量4mF/㎝2、パワー密度は約9mW/㎝2で、他のカーボンベースマイクロ超コンデンサに匹敵する、また充電/放電9000サイクル後の劣化は無視できる。このコンデンサは、安価なウエアラブル電子デバイスに十分であり、同グループはさらに改善を続けるとTourは言っている。