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Science/Research 詳細

ロスアラモス、コロイド状量子ドットレーザ技術、デバイス化間近

May, 23, 2023, Los Alamos--ロスアラモス国立研究所のチームは、コロイド量子ドット技術に基づいた、技術的に実行可能な高強度光エミッタに向けた重要課題を克服した。その結果、光励起レーザと高輝度電気駆動LEDの両方で動作するデュアル機能デバイスになった。

Advanced Materialsに発表したように、この進歩は、電気励起コロイダル量子ドットレーザ、レーザダイオードへの重要なマイルストーンである。これは、新しいタイプのデバイスであり、その影響は、集積エレクトロニクスやフォトニクス、光インタコネクト、lab-on-a-chipプラットフォーム、ウエアラブルデバイスや医療診断を含む多くの技術をカバーする。

「コロイド状量子ドットレーザの探求は、溶液処理可能材料をベースにした電気ポンプのレーザや増幅器の実現を狙う世界的な取組の一部である」とロスアラモス化学部門、:研究チームリーダー、Victor Klimovはコメントしている。「これらのデバイスは、実質的にあらゆる基板、拡張性との適合性を追求してきた。また、従来のシリコンベース回路を含むオンチップエレクトロニクスやフォトニクスへの組込容易性を追求してきた」。

標準LEDとして、チームの新しいデバイスでは、量子ドット層は、電気的に作動する光エミッタとして機能した。しかし、500A/c㎡を超える極めて高い電流密度のために、同デバイスは、100万カンデラ/㎡(カンデラは、一定方向に出力される光パワー)。この輝度により、デバイスは、昼光ディスプレイ、プロジェクタや交通信号に最適になる。

量子ドット層は、大きなネット光利得の効率的な導波路増幅器としても機能した。研究チームは、電気ポンプに必要な全電荷輸送層と他の素子をもつフル機能LEDタイプデバイススタックで狭帯域レーザ発振を達成した。この進歩は、大いに期待されている電気ポンプによるレーザ発振に扉を開く、これはコロイド量子ドットレーザ発振技術の完全なる実現を可能にする。

コロイド量子ドット
半導体ナノ結晶、つまりコロイド量子ドットは、レーザダイオードを含めレーザ発振するデバイス実現のための魅力的な材料である。これらは、中程度の温度の化学技術により原子精度で調整できる。

さらに、電子波動関数の自然な広がりに匹敵する小さな寸法のために量子ドットは、エネルギーが粒子サイズに直接依存する離散的原子のような電子状態を示す。いわゆる「量子サイズ」効果の結果は、所望の波長にレーザ発振ラインの調整、多波長レーザ発振をサポートするマルチカラー利得媒体の設計に利用できる。量子ドット電子状態の独特の原子様スペクトルから得られるさらなる利点に含まれるのは、低光利得閾値、デバイスの温度変化に対するレーザ発振特性の影響抑制である。

電気励起問題を解決するための革新的設計
ほとんどの量子ドットレーザ発振研究は、光利得媒体の励起に短パルス光を使用した。電気駆動量子ドットでレーザ発振を実現することは、極めて難しい作業である。新しいデバイスでは、研究チームは、この目標に向けて重要な一歩を踏み出した。

「課題の一つは、電気と光デバイス設計領域にある。特に、デバイスの電荷注入構造は、レーザ動作に必要な非常に高い電流密度を生成、維持できなければならない。その同じデバイスが、薄い量子ドット活性媒体に生成される利得を抑制しないように低光損失を示さなければならない」と、ポスドクフェロー、チームの主席デバイス技術者、Namyoung Ahnは話している。

光利得を強化するためにチームは、新しいナノ結晶を開発した。これは、「コンパクトな組成的に形成された量子ドット」と名付けられている。

「これらの新しい量子ドットの特徴は、組込組成勾配によるオージェ再結合の抑制である。同時に、光利得媒体として使われる細密固体にアセンブルされたとき、大きな利得係数を示すことである」と、量子ドットチームのポスドク、Clément Livacheは、コメントしている。同氏は、作製されたデバイスの分光学的研究を行った。「これは、薄い、光増幅量子ドット層が、マルチ光吸収電荷伝導層と組み合わされる複雑なエレクトロルミネセンス構造でネット光利得実現に役立つ」。

光増幅を容易にするためにチームは、デバイスの光学損失も下げた。特に、光学的損失が多い金属の様な材料をと除去して、最適化された低吸収特性の有機層で置き換えることで電荷注入構造を再設計した。加えてチームは、高吸収電荷輸送層の光電界強度を抑制し、同時に量子ドット利得媒体でそれを強化するためにデバイス横断面プロファルを設計した。

最終的に、レーザ発振を可能にするために開発されたデバイスは、電極の一つに組み込まれた周期グレーティングとして用意された光学キャビティにより補完された。このグレーティングは、いわゆる分布帰還共振器として機能し、量子ドット層の側面で光を周回させた。マルチパス増幅を可能にさせた

最終課題
レーザ発振効果は、光励起により達成された。電気ポンプを使うレーザ発振は、観察されなかった。通過電流による過度の熱でデバイス性能が劣化したからである。これは、電気駆動レーザ発振を実証するために対処する必要がある最終課題である。

わずか数年前には、電気励起コロイド量子ドットレーザは、不可能であると見なされていた。超高速オージェ減衰、量子ドットLEDsにおける不十分な電流密度、同じデバイスでエレクトロルミネセンスとレーザ発振機能を統合することの難しさのためである。ロスアラモスの量子ドットチームの成果は、これらの問題のほとんどに実用的なソリューションを実証しており、機能的量子ドットレーザダイオードが手の届くところにあることを示唆している。