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電子メタデバイス、超高速通信の障害を打破

April, 26, 2023, Lausanne--EPFLの研究チームは、サブ波長スケールでメタ構造改良に関わるエレクトロニクスへの新たなアプローチを考案した。それは、膨大なデータ量を交換する次世代超高速デバイスの着手を可能にする、6G通信以降のアプリケーションである。

今までは、エレクトロニクスデバイスを高速化する原理は単純であり、トランジスタや他のコンポーネントをスケールダウンすることである。しかし、このアプローチは、その限界に達しつつある。縮小の恩恵は、抵抗や出力低下などの有害な作用で相殺される。

EPFL工学部、Power and Wide-band-gap Electronics Research Lab (POWERlab)のElison Matioliの説明によると、さらなる微小化は、エレクトロニクス性能のさらなる向上の実行可能なソリューションではない。「ますます小さくなるデバイスを説明する新しい論文は出ているが、GaN製材料の場合、周波数に関してベストのデバイスは、すでに数年前に発表されている。その後、実際、それ以上のものは何もない。デバイスサイズが縮小されるにしたがい、われわれは本質的な限界に直面するからである。使う材料に関係なく、これは真実である」(Elison Matioli)。

この問題に応えてElison Matioliと院生、Mohammad Samizadeh Nikooは、これらの限界を克服し、新しいクラスのTHzデバイスを可能にするエレクトロニクスへの新たなアプローチを考え出した。デバイスを縮小する代わりに、チームは、それを再整理した。注目すべきことは、サブ波長の距離でメタストラクチャというパタン化されたコンタクトをGaNやInGaN製の半導体にエッチングしたことである。これらメタストラクチャにより、デバイス内の電界が制御できるようになり、自然には起こらない並外れた特性が生まれる。

重要なことに、そのデバイスは、テラヘルツ域(0.3-30THz)の電磁周波数で動作可能である。これは、今日のエレクトロニクスで使用されているGHz波よりも遙かに高速である。したがって、そのデバイス、所定の信号、周期で遙かに多くの情報量を扱えるので、6G通信以降のアプリケーションには大きな潜在力を提供する。

「微視的スケールで無線周波数場を操作することで、電子デバイスのパフォーマンスを大幅に強化できる。アグレッシブなダウンスケールに頼る必要はない」とSamizadeh Nikooは、説明している。同氏は、Natureに発表されたブレイクスルー論文の筆頭著者。

記録的な高周波、低抵抗
テラヘルツ周波数は、現在のエレクトロニクスに高速すぎて扱えず、またオプティクスアプリケーションには遅すぎるので、この範囲は、‘テラヘルツギャップ’とよく言われている。THz波を変調するためにサブ波長メタ構造を使うことは、オプティクスの世界から来た技術である。しかし、POWERlabの方法は、前例のない程度でエレクトロニクス制御を可能にする、既存のパタンに外部光ビームを照射するようなオプティクスアプローチではない。

「われわれのエレクトロニクスベースアプローチでは、誘導無線周波数の制御能力は、サブ波長パタン化コンタクト、印加電圧による電子チャネルの制御との組み合わせから来ている。つまり、われわれは、電子を誘導すること(あるいはしないこと)で、メタデバイス内の集合効果変えることができるということである」(Matioli)。

現在、市場にある最も進んだデバイスは、2THzまで到達可能であるが、POWERlabのメタデバイスは、20THzに到達可能である。同様に、THz範囲付近で動作する今日のデバイスは、2V以下でブレークダウンする傾向がある。一方、メタデバイスは、20V超をサポートできる。これは、現在可能なよりも遙かに大きなパワーと周波数でTHz信号を伝送、変調できる。

集積ソリューション
Samizadeh Nikooが説明するようにテラヘルツ波を変調することは、通信の未来にとって極めて重要である。自律走行車や6Gモバイル通信などの技術のデータ要求の増加が、今日のデバイスの限界に急速に近づいている。POWERlabで開発された電子メタデバイスは、例えば、すでにスマートフォンで使われているようなコンパクトな高周波チップを製造することで集積テラヘルツエレクトロニクスの基盤を形成できる。

「この技術は、半導体製造における既存プロセスに適合しているので、超高速通信の未来を変えることができる。われわれは、テラヘルツ周波数で100Gbpsまでのデータ伝送を実証した、これはすでに今日の5Gの10倍である」(Samizadeh Nikoo)。

そのアプローチの潜在性をフルに実現するには、Matioliによると、次のステップは、直ぐにTHz回路に集積する他のエレクトロニクスコンポーネントの開発である。

「集積テラヘルツエレクトロニクスは、コネクティッド未来にとって次のフロンティアである。とは言え、われわれの電子メタデバイスは、一つのコンポーネントに過ぎない。われわれは、この技術の潜在性をフルに実現するには、他の集積THzコンポーネントを開発する必要がある。それがわれわれのビジョンであり、目標である」。

(詳細は、https://actu.epfl.ch/)