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HIVの動的動きをリアルタイムで観察

October, 17, 2014, New York--ワイルコーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)の研究チームは、ウイルス表面での、研究者がHIVタンパク質の「ダンス」と呼んでいる動きを見ることができる技術を初めて開発した。これは、人の免疫細胞への感染方法に寄与している可能性がある。
 同大学生理学、生物物理学准教授、Dr. Scott Blanchardによると、その新しい技術基盤は、HIV感染を防ぐアプローチを考え出すための新たな可能性を開く。
 「ウイルスの外膜タンパク質がどのように振る舞うかをリアルタイムで追跡できるようにHIVの動きを可視化することによって、人の細胞との融合を防ぐためにわれわれが知る必要のあることが分かるだろう。免疫細胞へのHIVウイルス侵入を防ぐことができれば、われわれの勝ちだ」と同氏は言う。
 Dr. Blanchardは、分子スケールで距離を測るために蛍光を使用するイメージング技術、単一分子蛍光共鳴エネルギー転移(smFRET)イメージングをウイル粒子研究に適用した。研究グループは、蛍光分子(蛍光色素分子)、「ビーコン」と呼ばれているが、それを開発してウイルスの外膜に挿入した。挿入したこれら2つの特殊ビーコンで、smFRETイメージングを使って時間の経過とともに分子がどのように動くか、ウイルスのタンパク質が形態を変える時を可視化することができる。このアプローチにより、1インチの10億分の1のオーダーで、異なる色で光るビーコンの間の距離を計測する。さらに、これを使って形状の変化も検出できる。
 研究チームは、HIVウイルス表面(外膜タンパク質)のタンパク質の動きを知るためにこの技術を使った。外膜タンパク質は、CD4受容タンパク質を持つ人の免疫細胞に影響を及ぼすウイルスの能力のキーとなる(CD4受容タンパク質は、HIVが細胞と結びつくのを助ける)。外膜は、密接に寄り集まった3つのgp120とgp41で構成されており、「三量体」と呼ばれている。三量体は、CD4が存在すると花のように開き、gp41サブユニットをむき出しにする。これは、感染を起こすメカニズムの次の側面として重要である。
 「各HIV粒子の表面にそのような外膜三量体が10~20存在する。これによって一般的な免疫反応を回避する。人が効果的な免疫反応ができない理由がこれである。また、研究者がHIV外膜タンパク質を標的とするワクチンを開発する理由もここにある」とDr. Blanchardは語っている。研究チームは、異なるHIVの2株からのタンパク質を調べることができた、これらは粒子の生態を変えないビーコンを含んでいた。
 チームは、gp120タンパク質のウイルス粒子が絶えず形態を変え、その動きのタイミングと性質が両方共に同じであり、はっきりしていることを確認した。「外膜三量体の開放がどのように始動されるかという最初の大きな疑問への答となった。多くの研究者は、粒子がCD4陽性細胞を横切るまで1つの形状のままであると考えている。しかし、CD4が存在するとき、そのタンパク質はダンスする、つまり常に形状を変えることをわれわれは確認した」。
 研究チームは、合成CD4を導入した時にウイルスがどのように反応するかを観察することができた。また、一定の効果を示すことで知られている免疫体がgp120が開くのを阻止するように活動することも確認した。さらに、これらの効果がウイルスの感染力低下に関連することも確認した。研究チームが現在開発中のHIV感染防止のための小さな分子を導入したとき、同じことが起こった。
 「この技術の実質的な成果は、生体システムがどのように動くかをわれわれが理解し始めることができると言うことだ。これまで、外膜三量体の3つの異なる形態を見つけた。今度は、広範な効果が得られる治療をするのに必要な精密イメージングを実現するように技術を改善することである」とBlanchardは言っている。
(詳細は、www.cornell.edu)