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集積フォトニック回路、「テラヘルツ」ギャップ縮小に役立つ

February, 7, 2023, Lausanne--スイス連邦工科大学(EPFL)研究者は、新しい薄膜回路に関してHarvardおよびETH-Zurichの研究者と協働した。これは、レーザと接続すると、微細調整可能なテラヘルツ周波を生成する。デバイスは、オプティクスや通信で潜在的なアプリケーションの世界を開く。

EPFL工学部、ハイブリッドフォトニクス研究所(HYLAB)のCristina Benea-Chelmusをリーダーとする研究チームは、電磁スペクトルのいわゆるテラヘルツギャップ、300-30,000GHz(0.3~30 THz)活用で大きく前進した。この範囲は、現在、技術的なデッドゾーンである。このゾーンは、今日のエレクトロニクスや通信デバイスには速すぎるが、オプティクスやイメージングアプリケーションには遅すぎる。

今回、リチウムナイオベート(LN)製集積フォトニック回路を持つ極薄チップによりHYLAB研究者とETH-Zurichおよびハーバード大学の同僚は、THz波生成に成功すると共に、その周波数、波長、振幅、位相のカスタム調整のためのソリューション考案に成功した。THz放射のそのような精密制御の意味は、それが電子と光の両方の世界で、次世代アプリケーションにおける利用可能性を示している。研修成果は、Nature Communicationsに掲載された。

Alexa Herter, 現ETH ZurichPhD学生は.「そのデバイスが、われわれが予め定義した放射を発するのを見ると、われわれのモデルが正しかったことを確認できる」と話している。

「これは、リチウムナイオベート集積フォトニクス固有の特性により可能になった」と共著者、ハーバード大学、Amirhassan Shams-Ansariは付け加えている。

テレコムへの対応
Benea-Chelmusの説明によると、そのようなTHz波はラボ設定で以前に作られたが、以前のアプローチは、適切な周波数の生成をバルク結晶に依存していた。同氏のラボのLN回路利用は、ハーバード大学の研究者によりナノメートルスケールで微細にエッチングされたものであり、これが新しいアプローチを著しく簡素化する。シリコン基板の利用により、そのデバイスは、電子および光システムへの統合に好都合になっている。

「非常に高い周波数で波を生成することは、極めて挑戦的であり、固有のパタンで、そのような波を生成できる技術は非常に少ない。われわれは、今では、THz波の正確な時間形状を設計することができる、つまり、このように見える波形が欲しい、と言うことだ」と同氏は説明している。

これを達成するためにBenea-Chelmusのラボは、導波路というチップのチャネル配列を設計した。これにより微小アンテナは、光ファイバからの光で生成されたTHz波をブロードキャストする。

「われわれのデバイスがすでに標準の光信号を利用していることは、実際、利点である。と言うのは、これらのチップが従来のレーザで利用できることを意味するからである。つまり、それらは非常に良好に動作し、十分に理解されている。即ち、われわれのデバイスは、通信に適合している」とBenea-Chelmusは、強調している。さらに同氏は、THz領域で信号を送受する微小デバイスは、第6世代モバイルシステム(6G)で重要な役割を果たす、と付け加えている。

オプティクスの世界に、Benea-Chelmusは、分光学やイメージングにおける微小なLNチップの特別な可能性を見ている。非電離に加えて、テラヘルツ波は、骨でも油絵でも、材料の組成についての情報を提供するために現在使用されている多くの他のタイプの波(X線など)よりも遙かに低エネルギーである。LNチップのようなコンパクト、非破壊デバイスは、したがって、現在の分光学的技術の侵襲性の少ない代替になりうる。

「関心のある材料を通してテラヘルツ放射を送り、材料の分子構造に依存して、それが材料の反応を計測し分析することを考える。この全ては、マッチの頭よりも小さなデバイスからである」。

量子の未来
次に、Benea-Chelmusは、チップの導波路とアンテナの微調整に重点的に取り組む計画である。より大きな振幅の波形、さらに微調整された周波数と減衰率を設計するためである。同氏は、ラボで開発されたテラヘルツ技術が量子応用に役立つ可能性も考えている。

「対処すべき基本的な問題が多い。例えば、われわれがそのようなチップを使って、非常に短い時間スケールで操作可能な新しいタイプの量子放射を生成できるかどうかに関心がある。量子科学におけるそのような波は、量子オブジェクトの制御に使える」。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)