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国際研究チーム、個々の光量子を高速・高精度制御

February, 1, 2023, Munich--ドイツとスペインの研究チームは、個々の光量子を極めて高精度に制御することに成功した。
Nature Communications誌で、研究チームは、音波を利用してGHz周波数でチップ上の個々のフォトンを2つの出力間で前後に切り替える方法を説明している。この方法は、ここで初めて実証されたものだが、今では音響量子技術あるいは複雑な集積フォトニックネットワークに利用できる。

光波と音波は、現代通信の技術的バックボーンをなす。レーザ光によりガラスファイバがWorld Wide Webを形成し、チップ上のナノスケール音波は、スマートフォン、タブレットあるいはラップトップ間のワイヤレス伝送向けに、GHz周波数で信号を処理する。未来の最も緊要な問題の一つは、これらの技術がどのように量子システムに拡大でき、セキュアな量子通信ネットワークを構築できるかと言う問題である。

「光量子、つまりフォトンは、量子技術の開発で極めて重要な役割を担っている」とミュンスター大学、Hubert Krenner教授は言う。「研究チームは、親指の爪サイズのチップで個々のフォトンを生成し、それらを前例のない精度で制御することに成功し、音波により精密計時した」と、バレンシア大学、Dr. Mauricio de Limaは、話している。同氏は、ここでの研究のまとめ役。さらに同氏は、「チップの機能原理は、従来のレーザ光に関しては、分かっていたが、今回は、光量子を使い、長年望んでいた量子技術へのブレイクスルー達成に成功した」と付け加えた。

研究では、チームは、微小な「伝導路」、いわゆる導波路を備えたチップを作製した。これらは、人の髪の毛よりも30倍細い。加えて、このチップは、量子光源、つまり量子ドットを含んでいる。ミュンスター大学、Dr. Matthias Weißが光実験を行った。「数ナノメートルサイズの量子ドットは、導波路内のアイランドであり、個別フォトンとして光を発する。量子ドットは、チップに含まれているので、別の光源で個々のフォトンを生成する複雑な方法を利用する必要はない」と同氏は、付け加えている。同氏は、バレンシア大学で、Ph.Dの一環として、量子チップを設計した。さらに、その技術がいかに高速であるかを指摘し、「ナノスケール音波を使用することで、われわれは、導波路で伝播中、前例のないスピードで、チップ上のフォトンを2つの出力の間で直接前後にスイッチできる」と話している。
 Dr. Dominik Bühlerは、バレンシア大学(University of Valencia)のPh.D学生として、量子チップを設計した。

研究チームは、この成果をハイブリッド量子技術へのマイルストーンと考えている。3つの異なる量子システムを統合しているからである。量子ドットの形での量子光源、作製された光量子、フォトン(音波における量子粒子)。ハイブリッド量子チップは、バレンシア大学で設計され、Paul Drude Institute of Solid-State Electronicsで作製された。これには、ミュンヒェン工科大学で作られた量子ドットを使った。ハイブリッド量子チップは、研究チームの期待を上回る成果だった。

国際研究チームは、音響量子技術へ向けて、さらなる決定的な一歩を踏み出した。「われわれは、フォトンの量子状態を望み通りにプログラムできるように、すでに全力投球でわれわれのチップを強化しようとしている。また、4あるいはもっと多くの出力間で異なる色で複数のフォトンを制御することさえできるようにする。われわれは、ここでは、ナノスケール音波が持つ独自の力から恩恵を受けている。これらの音波は、チップ表面を実質的に損失なしで伝播するので、わずか一つの波で望み通りに多くの導波路をうまく制御できる。また、極めて高精度である」とHubert Krenner教授は、話している。
(詳細は、https://www.uni-muenster.de)