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カーネギーメロン、新しい拡張顕微鏡

January, 26, 2023, Pittsburgh--細胞や他のナノスケール構造の内部をこれまでになく見ることは、エクスパンション顕微鏡におけるイノベーションにより、今や可能になっている。この進歩は、ナノサイエンス、病理学および他の多くの生物学や医学分野における将来的洞察を可能にする。

カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)、ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)、ブラウン大学(Brown University)の協働によりNature Biotechnologyに発表された論文
“Magnify is a universal molecular anchoring strategy for expansion microscopy”( Magnifyは、エクスパンション顕微鏡の万能の分子固定戦略)は、Magnifyという新しいプロトコル(手順)を説明している。

「Magnifyは、バイオテクノロジー界にとって、強力な利用しやすいツールである」と、Eberly Family Career Development生物科学准教授、Yongxin (Leon) Zhaoは、コメントしている。

Zhaoのハイオフェトニクスラボは、エクスパンション顕微鏡として知られるプロセスでサンプルを物理的に拡大することで生物学的サンプルの超解像度イメージングを可能にする。そのプロセスで、サンプルは膨潤性ハイドロゲルに埋め込まれている、これは、分子間の距離増により優れた解像度で観察できるように均一に拡大する。これにより、以前は高価な高解像度イメージング技術を利用することで見ることができるナノスケールの生体構造が標準的な顕微鏡ツールで見ることができるようになる。

Magnifyは、エクスパンション顕微鏡の変形。これにより、研究者は、Zhaoのチームが発明した、幅広い生体分子を維持する、新しいハイドロゲルフォーミュラを使うことができる。アプリケーションの範囲は、多様な組織に広がり、直線的に11倍まで、あるいは元の容積の~1300倍まで拡大できる。

「われわれは、エクスパンション顕微鏡の長年の課題の一部を克服した。Magnifyの主要なセールスポイントの1つは、タンパク質、核酸、糖質を含め、組織の生体分子を拡張サンプル内に維持する汎用戦略である」。

Zhaoによると、様々な生体成分を無傷のまま維持することが重要である。以前のプロトコルでは、組織をまとめる多くの多様な生体分子を除去する必要があったからだ。しかし、れらの分子は、研究者にとって貴重な情報を含んでいる。

「過去において、細胞を実際に拡大できるようにするには、酵素を使ってタンパク質を消化する必要があり、最終的に、関心のあるタンパク質の場所を示すラベル付の空虚なジェルが残る」(Zhao)。新しい方法では、分子は、完全なまま維持されており、多種の生体分子が、単一サンプル内でラベルづけできる。

「以前は、それは単一選択問題のようだった。タンパク質にラベリングしたいなら、バージョンワンのプロトコルになる。核にラベル付けしたいなら、それは異なるバージョンである。同時にイメージングしたいとしても、それは難しかった。現在、Magnifyで、複数のアイテムをラベル付けできる、タンパク質、脂質、糖質など、それらをいっしょにイメージングできる」(Zhao)。

ラボの研究者、Aleksandra Klimasは、ポスドク研究者、Brendan Gallagherは、博士課程学生。二人が、論文の筆頭共同著者。

「これは、高解像度で指標をイメージングするために利用できる方法である。従来、高価な装置と特殊な試薬、さらにトレーニングが必要だった。しかし、この方法は、多くのタイプのサンプル準備に幅広く適用でき、生物学研究所にある標準的な顕微鏡で見ることができる」(Klimas)。

神経科学のバックグラウンドをもつGallagherによると、目標は、そのプロトコルを可能な限り研究者に適応可能にすること。研究者が、Magnifyをツールキットの一部として採用することから恩恵がえられるようにする。

「頭に入れておく重要コンセプトの一つは、どこにいる研究者にも対応し、可能な限り、そのプロトコルの変更を少なくすること。それが、様々な組織タイプ、固定法で機能する、保存された組織でさえも使えること。それは非常に柔軟である。Magnifyでは、実験を全く再設計する必要がないことを頭に入れておくこと。すでにある仕方で使える」(Gallagher)。

ピッツバーグ大学生物学イメージングセンタ、ピッツバークガン研究所の創始者、ディレクタSimon Watkinsのような研究者にとっては、新しいプロトコルが、保存組織セクションを含む広範な組織タイプに適合することが重要である。例えば、ほとんどのエクスパンション顕微鏡法は、脳組織に最適化されている。一方、Magnifyは、胸、脳、大腸を含む、様々な人臓器や対応する腫瘍のサンプルでテストされている。

カーネギーメロン大学、生体医用工学准教授、Xi (Charlie) Renは、肺組織、その形態形成と発病をモデル化する方法を研究している。同氏の研究の一部は、運動性繊毛の研究に関わっている。これは、人の誘導気管支の粘液を取り除く機能である。200nm径、わずか数マイクロメートル長では、その構造は、電子顕微鏡など時間集約的技術なしでは、小さすぎて見ることができない。Zhaoのラボと協力して、Renのチームは、繊毛の微細構造と機能に特殊な欠陥を持つ肺オルガノイドモデルを開発し、発表した。これにより、臨床的に関連がある繊毛病理学を可視化するMagnifyの能力を検証した。

「最新のMagnify技術で、われわれは、その肺組織を拡大し、通常の顕微鏡でさえも運動毛の超微細構造を見られるようになっている。またこれは、基礎的および臨床的研究を促進する」と同氏はコメントしている。

研究者は、遺伝的変異があることが分かっている患者特有の肺細胞における繊毛に欠陥を見つけることができた。

「肺組織エンジニアリング界は、取り組んでいる組織システムの特性を評価するよりよい方法を常に必要としている」とRenは話している。さらに同氏は、「この研究は重要な一歩である」と付け加えた。また、Zhaoのラボと協力して、さらに改良し、組織バンクで見つかる病理サンプルに適用したいと考えている。

最後に、Magnifyで使われるヒドロゲル、Zhaoラボで開発されたものは、非常に脆弱で、プロセス中に壊れる先行のものよりロバストである。

カーネギーメロン大学、生命科学Maxwell H. and Gloria C. Connan教授、Alison Barthは、シナプス接続を研究した。同氏によると、新しい方法によって得られる広範なアプリケーションは、研究者に恩恵をもたらす。

「脳は、これらの超解像度技術の恩恵を受ける大きな場所である。顕微鏡法は、シナプス表現型、様々な脳状態の分析に有用である」と、Zhao Labと協働しているBarthはコメントしている。

「この論文における主要な進歩の一つは、その方法が多くの異なるタイプの組織標本に影響を与えられることである」(Barth)。

(詳細は、https://www.cmu.edu/)