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量子物理学でイメージング法に革命

October, 1, 2014, Vienna--量子オプティクス&量子情報研究所(IQOQI)、量子科学技術ウィーンセンタ(VCQ)、ウィーン大学の研究グループは、大いに直観に反する、根本的に新しいイメージング技術を開発した。
 画像は、対象物照射に使われる光を検出することなく得られる。それでいて、画像を明らかにする光は画像化される対象物に決して触れることはない。
 一般に、対象物の画像を得るにはそれに光ビーム照射し、散乱光あるいは透過する光をカメラを使って識別しなければならない。対象物照射に使われる光のタイプは、撮像しようとする特性に依存する。残念ながら、多くの実際的な状況では、対象物照射に理想的な光に対応するカメラが存在しない。
 Natureに発表された実験は、この一見自明な限界を打破している。対象物(例えば、猫の輪郭)は、検出されずに残る光で照射される。さらに、その光とカメラに猫の像を形成する光との間に相互作用はない。この実験を理解するために研究チームは、いわゆる「エンタングルした」フォトンペアを利用する。これらのフォトンペアは、レーザが非線形結晶と相互作用する際に造られる。実験では、レーザは2つの離れた結晶を照射し、個々の結晶に一対のツインフォトンを造る(1つの赤外フォトンと1個のシスター赤色フォトンで構成)。対象物は、2つの結晶の間に置かれる。このアレンジメントでは、1つのフォトンペアが最初の結晶に造られると、赤外フォトンだけで撮像された対象物を透過する。そのパスは、次に第2の結晶を通り、そこで造られる赤外フォトンと完全に結合する。
 この重要なステップで、原理的には、どの結晶が実際にフォトンペアを造り出したかを見つけ出すことはできない。さらに、赤外フォトンに対象物に関する情報は何もない。しかし、エンタングルしたペアの量子的相関により、対象物についての情報は赤色フォトンににおいて得られる。ただし、赤色フォトンは対象物に一度も触れていない。赤色フォトンのパス(第1と第2の結晶から)をいっしょにすることで明暗パタンが作られ、それが対象物の正確な像を形成する。
 赤外フォトンの全て(対象物を照射した唯一の光)は廃棄される。画像は、対象物と相互作用しなかった赤色フォトンを検出することで得られる。この実験で使用されたカメラは、対象物と相互作用した赤外フォトンを検知できない。実際の所、微光赤外カメラは市販されていない。
 研究グループは、この新しいイメージングコンセプトに極めて多様性があり、重要な中赤外領域のイメージングを可能にすると考えている。生物学あるいは医学的イメージングなどの分野で微光イメージングが需要視されるアプリケーションが期待されている。