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Science/Research 詳細

パーキンソン病を示唆するタンパク質の形状

December, 14, 2022, Zurich--ETH-Zurichの研究者は、一組のタンパク質が、健康な人とパーキンソン病の人では脊髄液で異なる形状であることを発見した。これらは将来、この病気の新しいタイプのバイオマーカーとして利用できる。

多くの人々の病気が血液、他の体液のバイオマーカーを使って検出、診断できる。パーキンソン病は、難病である。これまで、クリニックでこの神経変性病を指摘するために使われたバイオマーカーは存在しない。

ETH-Zurich教授、Paola Picottiのチームは、今回、このギャップを埋めるのに一役買うことができる。Nature Structural and Molecular Biologyに発表された研究では、チームは、パーキンソン病の検出にバイオマーカーとして役立つかも知れない76のタンパク質を紹介している。

異なるタンパク質構造
この研究が特別なのは、潜在的なバイオマーカータンパク質は健康な人にも病気のヒトにも見つかるが、2つのグループの各々で、その分子が異なる形状で存在することである。その病気を示すあるタンパク質の存在ではなく、形状であると研究チームは推定している。体液の全てのタンパク質の構造の分析が、病気の潜在的なバイオマーカーを特定可能なことを科学者が示したのこれが初めてである。

次のステップは、見つかったマーカーを完璧にテストし、より大きな患者グループを使ってそれらを評価することである。つまり、これらの候補は、まだ臨床診断に利用できない。「しかし、われわれがこれまでに見てきたことから、それらは実際、その病気の極めて強力な指標である。構造的バイオマーカーというこの考えは、証明されると信じている」とNatalie de Souzaは、コメントしている。同氏は、Paola Picottiグループのシニア研究者、研究の共同執筆者の一人である。

構造的変化を計測
研究では、ETH-Zurichの研究者は、50名の健康な個人と50名のパーキンソン病患者の脳脊髄液を調べた。サンプル材料は、オランダの臨床医が提供したものである。

バイオマーカーを探すために研究者は、プロテオーム(サンプルの全タンパク質の総量)、いわゆるLiP-MSを計測するための特殊な方法を使用した。それは、タンパク質の構造的変化を計測でき、その変化が正確にどこに見つかるかを明らかにできる。従来のプロテオーム計測は、タンパク質の異なるタイプとその量のみを記録する傾向があるが、構造的変化は記録しない。

タンパク質の構造が、その機能(つまり、機能不全)に密接に関連しているので、研究チームは、パーキンソン病患者と健康な個人は、あるタンパク質の異なる形状を示すと仮定した。

現在の研究は、研究チームがその方法を病気に適用することに初めて成功したことを示している。

分析をさらに鋭くする
後続のステップでは、研究チームはLiP-MS法を改善して、バイオマーカー信号を増幅し、したがってその病気の検出感度を高めることを考えている。さらに、研究チームは、厳密にどのようにパーキンソン病を評価し、アルツハイマー病などの他の神経変性病との重複がないかどうか評価するためにその新しいバイオマーカーテストしたいと考えている。

将来的には、研究者はその方法を使ってパーキンソン病のサブタイプを判定し、その病気の経過についてもっと正確な予測をしたいと考えている。

厳密に、これがどのような有用な臨床診断につながるかは、まだ不確定である。De Souzaは、今後のテスト戦略は、健全なタンパク質構造と病気のタンパク質構造を区別する抗体ベースになると推定している。臨床設定で質量分析計の常用は、原理的には可能であるが、大きな課題がある、同氏は見ている。
(詳細は、https://ethz.ch)