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SEAS、オンチップ・タイムレンズ、超高速パルス生成

November, 21, 2022, Cambridge--Harvard SEASによると、新しいデバイスが、通信、量子コンピューティング、天文学のアプリケーションに扉を開く。

フェムト秒パルスレーザは、医療や製造からセンシング、時空の精密計測まで広範なアプリケーションで使用されている強力なツールである。今日、これらのレーザは、一般に高価なテーブルトップシステムである。したがって、サイズや電力消費に限りがあるアプリケーションでは利用が制限される。

オンチップフェムト秒パルス光源は、量子および光コンピューティング、天文学、光通信などで新たなアプリケーションを開く。しかし、チューナブルで高効率のパルスレーザをチップに集積するのは難しい。

ハーバード大学SEASの研究者は、妥協のないSFに見られるツール、タイムレンズを使い高性能オンチップフェムト秒光源を開発した。
 研究成果は、Natureに発表された。

「多くの光の色で構成される高強度、短パルスパルスレーザは、大きいままである。これらの光源をより実用的にするためにわれわれは、従来の、大きなフェムト秒光源実現に利用されているよく知られたアプローチを縮小することを決定した。われわれが開発した最先端の集積フォトニクスプラットフォームを活用する。重要な点は、われわれのチップが、コンピュータチップを造るために使用されているものと同じマイクロファブリケーション技術を使っていることである。つまり、コストとサイズを縮小するだけでなく、われわれのフェムト秒光源の性能と信頼性改善を確実にする」と研究のシニアオーサ、SEAS電気工学のTiantsai Lin教授、Marko Lončarは説明している。

従来のレンズは、コンタクトレンズ、あるいは拡大鏡や顕微鏡に見られるモノのように様々な方向から来る光線をその位相を変えることで曲げ、空間的に同じ位置、焦点に当たるようにしている。

他方、タイムレンズは、光ビームを同じような仕方で「曲げる」が、空間ではなく時間で光ビームの位相を変える。この方法では、光の異なる色、様々なスピードで進む波長が同時に各焦点面に当たるように時間を調整する。

フェムト秒パルスを生成するためにチームのデバイスは、一連の光導波路、カプラ、変調器、Lončar のラボが開発したLNプラットフォーム上の光グレーティングを使用する。

チームは、連続波、単色レーザビームを、タイムレンズを通過する光量を制御する振幅変調器を通すことからスタートする。これは、従来のレンズにおける開口部に類似の機能。次に光は、レンズの「曲げられる」部分、この場合は位相変調器を通る。ここで多様な色の周波数コムが生成される。

次にレーザの最終コンポーネント、導波路に沿ったフィッシュボーングレーティングが登場する。そのグレーティングが、光の異なる色のスピードを変え、それらの全てが互いに並ぶようにする。つまり、それらが同時に最終ライン(焦点面)に当たるようにするのである。

デバイスは、異なる波長の進行する速さをコントロールし、焦点面に当たる時間を制御するので、それは連続的に単色レーザビームを効果的に広範な、高強度パルス光源へ変換する。これにより超高速、520 fsバーストを作ることができる。

デバイスは、2㎝×4㎜チップに集積され、LNの電気光学特性により非常にチューナブルあり、テーブルトップ製品と比較して大幅に省エネである。

SEASの前ポスドクフェロー、研究の筆頭著者、Mengjie Yuは、「われわれは集積フォトニクスがエネルギー消費とサイズを同時改善することを示した。ここにはトレードオフは存在しない。空間と共にエネルギーも節約する。デバイスが小さくなり、集積度を高めることで性能はさらに改善される」とコメントしている。

チームは、レーザそのものとタイムレンズ技術の両方のアプリケーションの開発を目標にしている。望遠鏡のようなレンズ系、超高速信号処理や量子ネットワーキングなどである。
(詳細は、https://www.seas.harvard.edu