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微小色変換器、小型レーザベースデバイスを現実に

October, 13, 2022, New York--コロンビア大学(Columbia University)とミラノ工科大学の研究チームは、原子厚の材料を使ってレーザビームの色を変えることができるデバイスを作製した。従来の色変換器と比べてかなり小サイズのマイクロデバイスは、新しい種類の超小型光学回路チップになり、量子オプティクスを前進させる可能性がある。

今回、ミラノ工科大学の非線形オプティクス研究者、Giulio Cerulloの新研究の助けにより、コロンビア大学の研究チームは、レーザ利用デバイスを非常に小さくるデバイスをNature Photonicsに発表した。

コロンビア大学James Schuckの研究室のポスドクPh.D学生Xinyi Xuとポスドク Chiara Trovatelloは、二硫化モリブデン(MoS2)という2D材料を研究した。チームは、厚さ1µm以下のMoS2スタックから作ったデバイスが他の色を生成するために通信波長の光周波数をいかに効率的に変換するかを特性評価した。

この新しい研究は、今日チューナブルレーザで使われているミリメートル、センチメートルの標準材料を置き換えるための初の前進である。ミラノでCerulloとともにPh.Dを完了したTrovatelloは、「非線形光学は現在マクロの世界であるが、われわれは、それを極微サイズにしたい」とコメントしている。

レーザは、特別な種類のコヒレント光を放出する。つまり、ビームの全フォトンが同じ周波数、色を共有する。レーザは、特定の周波数でのみ動作するが、時には、異なるレーザ光を展開できる必要性がある。例えば、グリーンレーザポインタは、実際にはマクロな材料により可視光に変換された赤外光から作られる。研究者は、非線形光学技術を使ってレーザ光の色を変えるが、従来は効率よく色変換するには比較的厚い材料を使う必要があった。

MoS2は、新興の遷移金属カルコゲナイドの最も研究が進んだ例の一つである。これは、原子厚層を剥がすことができる。MoS2の単層は、光周波数を効率的に変換できるが、実際にデバイスを作るには薄すぎる。一方、MoS2の厚い層は、非色変換形態では、安定性が高まる傾向がある。3R-MoS2として知られる必要な結晶を作るためにチームは、商用2D材料サプライヤ、HQ Grapheneと協働した。

3R-MoS2を手にしたXuは、光をいかに効率的に変換できるかをテストするために様々な厚さのサンプルを剥がし始めた。直ぐに、結果は目を見張るものだった。「科学では、期待以上の結果が得られることを想定して始めることは滅多にない。通常は、逆である。これは稀、魔法のような例だ」とSchuckはコメントしている。通常、サンプルから生成される光を記録するには特殊なセンサが必要である。Xuによると、それをするにはある程度の時間がかかる。「3R-MoS2では、ほとんど間髪を入れず、極めて大きな前進が見られた」。特に、チームは、通信波長でこれらの変換を記録した。インターネットやTVサービスなど、可能な光通信アプリケーションには、重要な特徴である。

スキャン中の偶然で、Xuは、結晶のランダムエッジに注目し、その材料内に導波モードが存在することを示唆する縞模様を見た。導波モードは、様々な色のフォトンを同期させている。そうでないなら、フォトンは、結晶で異速度で動く。また、量子光学アプリケーションの重要成分である、いわゆるエンタングルフォトンの生成に使える可能性がある。チームは、そのデバイスを物理学者Dmitri Basovの研究所にわたし、そこでFabian Mooshammerが、彼らの予感を確認した。

現在、導波路変換とエンタングルフォトン生成で最も人気のある結晶はリチウムナイオベート。固くて頑丈な材料で、有用な変換効率達成にはかなり厚いことが必要である。3R-MoS2は同様に効率的であるが、100倍小さくて柔軟であるので、シリコンフォトニクスプラットフォームと組み合わせて、オンチップに光学回路を作製できる。ますます小さくなるエレクトロニクスの軌跡を辿ることが可能になる。

この概念実証結果で、現実的なアプリケーションへのボトルネックは、3R-MoS2の大規模製造とデバイスの高スループット構造化である。チームによると、産業が追いついてこなければならない。この研究成果で、2D材料の有望性を実証した。

(詳細は、https://www.engineering.columbia.edu)