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EPFL、フォトニックトランジスタのビルディングブロック作製

September, 12, 2014, Lausanne--スイス連邦工科大学(EPFL)の研究チームは、記録的な低エネルギーで動作するフォトニック「トランジスタ」用の初の構成要素を開発した。そのデバイスは、光回路の開発と実現で大きな前進と言える。
 電子回路と異なり、「フォトニック」回路は電気ではなく光で動作するので、10~100倍高速になる。また、熱損失が少ないのでエネルギー効率も高い。SNRも優れており、干渉耐性も高い。特に通信に使うと、光回路は微小光キャビティを「スイッチ」として使える。これは光の流れを止めたり通過させたりする機能であり、エレクトロニクスのトランジスタと同じである。EPFLの研究チームは、シリコンベースのフォトニック結晶ナノキャビティ(PCN)を作製し実験的にテストしている。PCNは、これまでになく少ないエネルギーでスイッチとして動作する。
 光回路は、電子回路が電子の流れを制御するのと同じように光を制御する。電子回路と比べて光システムは、高速性、エネルギー効率、安定性で著しく優れている。すでに光通信で使用されている応用フォトニクス分野は光回路の開発で着実に進歩しており、ナノスケールの「光キャビティ」をスイッチトして、あるいは光の流れを制御する「トランジスタ」として使用する。
 光キャビティは、光を数nmメートルの微小な空間に閉じ込める。そのような小さな空間に押し込められると少量の入力光はトラップした光の波長に小さな変化を生じさせる、これはキャビティ材料の光学特性によるものである。これらの特性は「非線形」、つまり少量の光が光キャビティを共鳴させると、より高い光強度によって、それが2つの異なる状態間で実際にスイッチする。この効果は「光双安定」と言い、最終的には光キャビティを光のスイッチとして機能させる。
 光回路の設計と開発における課題の1つは、スピードとエネルギー消費の効率であり、これら2つの特徴は相互に関連している。光回路全体の吸収パワーは、1回のスイッチ動作に必要なエネルギーに依存する。これは、1秒あたりの動作数のかけ算になる。したがって、光回路内に実装できるキャビティは最小のスイッチングエネルギーとなるように設計する必要がある。
 EPFLのRomuald HoudréとVincenzo Savonaは、ON/OFFに記録的な低エネルギーしか必要としない、PCNベースの光回路を設計、製造、テストし、成功した。PCNはシリコンスラブでできており、記録的な小サイズと高Qファクタを統合している。Qファクタとは、PCNが光を保持できる時間。新しいPCNデバイスの計測されたQファクタは50万で、これは入力フォトンが外に出るまでに50万回光キャビティ内で振動することを意味する。
 高いQファクタは、キャビティ内でフォトンが消費する時間が長いと言う意味。新しいPCNは、極めて小さく、同じエネルギーで高い光強度を生み出す。「非線形は強度に比例し、蓄積時間を長くすれば効果も強くなる。高Qファクタと小サイズの組合せは、新しいPCNがスイッチ動作で非常に低エネルギーしか必要としない理由である」とSavonaは説明している。
(詳細は、www.epfl.ch)