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LiDAR分解能向上に量子インスパイアードアプローチ

July, 22, 2022, Glasgaw--UKのグラスゴー大学の研究チームは、量子インスパイアード技術を使って従来のアプローチで可能なよりも遙かに高い深度分解能でLiDARイメージングを改善できることを示した。
 LiDARは、レーザパルスを使ってシーンあるいは物体の3D情報を取得する技術であり、通常は地形、あるいは構築された構造物などの大きな物体のイメージングに最適である。その深さ分解能が限られているからである。

「LiDARは、人の全体的な形を撮像するために使えるが、一般には顔の特徴など微細な細部を捉えることはできない。特別な深さ解像度を付加することでわれわれのアプローチは、顔の特徴だけでなく、人の指紋さえも詳細に見ることができる」とUKのグラスゴー大学、研究チームリーダー、Ashley Lyonsは説明している。

Optics Expressに発表された研究成果で、論文の主筆、Robbie Murrayは、その技術、2光子干渉LiDARイメージングについて説明している。それは、2㎜以下の間隔の反射面を区別することができ、ミクロンスケールの分解能で高解像度3D画像を作成できる。「これは、現在可能なよりも遙かに高解像度の3Dイメージングを可能にする。顔認識、微小な特徴をもつアプリケーションの追跡で有用になる。実用的には、従来のLiDARは、物体がどこにあるかの概要をつかみ、次にその物体は、われわれの方法で注意深く計測できる」(Lyons)。

古典的にエンタングルした光を利用
新しい技術は「量子インスパイアード」干渉計を利用する。これは、2つの光ビームが相互に干渉する仕方から情報を抽出する。フォトンのエンタングルペア、つまり量子光は、この種の干渉計によく使われるが、フォトンエンタングルメントに基づいたアプローチは、ハイレベルの光ロスの状況では性能が劣化しがちである。これは、ほとんどの場合LiDARの例である。この問題を克服するためにチームは、量子センシングから学んだことを古典的(非量子)光に適用した。

「量子エンタングルフォトンにより、セットアップが技術的に非常に厳しくなる前に、単位時間当たり非常に多くのフォトンペアが生成できる。これらの問題は、古典的光では存在しない。また、レーザパワーを上げることで高い損失を回避できる」(Lyons)。

2つの同じフォトンがビームスプリッタで同時に出会うとき、それらは常にくっついている、つまりエンタングルしており、同じ方向へ歩進んで行く。古典的光は、同じ挙動を示すが、その程度は低い、つまりほとんどの場合、古典的フォトンは同じ方向へ進む。研究チームは、2つのフォトンが同時にディテクタに到着する時を知ることで、1つのフォトンの極めて正確な到着時間にこの古典的光の特性を利用した。

深さ分解能を強化
「時間情報によりわれわれは、それらフォトンを3Dシーンに送ることで、そのフォトンが戻るまでにかかる時間、タイミングにより深さレンジングを実行できるようになる、したがって、2光子干渉LiDARは、従来のLiDARと全く同じように機能するが、われわれは、そのフォトンがディテクタに届くのにかかる時間を正確に知り、これが深さ分解能の向上になる」(Lyons)。

研究チームは、2光子干渉計LiDARを使って、役2㎜厚のガラスの2つの反射面を検出することで高い深さ分解能を実証した。従来のLiDARは、これら2つの面を区別できないが、チームは2つの面をはっきりと計測することができた。チームは、その方法を利用して、7µm深さ分解能で20ペンスコインの詳細な3Dマップを作成した。これは、その方法が、重要な顔の特徴、人々の他の違いを区別することができることを示している。

2光子干渉LiDARは、シングルフォトンレベルでも極めて良好に機能する。それは非見通し線、あるいは高散乱媒体を通したイメージングのために使われる、より複雑なイメージングアプローチを強化することができる。

現在、画像の取得には長い時間がかかる。3空間次元全てをスキャニングする必要があるからだ。チームは、3D情報の取得に必要なスキャニング量を減らすことでこれを高速化しようと取り組んでいる。

論文
Paper: R. Murray, A. Lyons, “Two-Photon Interference LiDAR Imaging,” Opt. Express, 30, 15 (2022)
DOI: doi.org/10.1364/OE.461248