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Science/Research 詳細

薄膜ペロブスカイト、効率25%で多用途

June, 22, 2022, Karlsruher--KIT研究者は、効率がほぼ25%のペロブスカイト/CISタンデムソーラセルを開発した。材料の組合せがモバイルアプリケーションを可能にする。

相互にスタックしているソーラセルにより効率が増す。EUプロジェクトPERCISTANDのパトナーと共に、Karlsruhe Institute of Technology (KIT)の研究者は、この技術ではこれまでの最高、効率約25%のソーラセル、ペロブスカイト/CISタンデムソーラセルを作製した。加えて、材料の組合せが、軽量と多用途を保証するので、これらタンデムソーラセルを自動車、ポータブル機器あるいは巻き取り可能な機器での利用も考えられる。研究チームは、成果をACS Energy Letters誌に発表している。

ペロブスカイトソーラセルは、わずか10年で大きく成長した。効率に関しては、すでに伝統あるSiソーラセルに匹敵する。ペロブスカイトは、特殊な結晶構造を持つ革新的材料である。世界中の研究者が現在、ペロブスカイトソーラセルを実用的アプリケーションにしようとしている。ソーラセルは、単位面積当たりで生成する電気が増えれば増えるほど、エンドユーザにはますます魅力的になる。

効率は、2以上のソーラセルをスタックすることで高めることができる。各ソーラセルが、太陽光スペクトルの異なる部分を特に効率的に吸収するなら、固有の損失は低減され、効率が増す。このことは、入射光がどの程度電気に変換されるかを示している。ペロブスカイトソーラセルは、多用途性であるので、そのようなタンデムの一部として理想的である。ペロブスカイトとシリコンとでできたタンデムソーラセルは、29%を上回る記録的な効率を達成している。これは、個別のペロブスカイト(25.7%)およびシリコン(26.7%)でできたものよりも大幅に高い効率である。

ペロブスカイトとCISの組合せ、モビリティと柔軟性
 ペロブスカイトと、銅インジウム二セレン化物(CIS)あるいは銅インジウムガリウム二セレン化物(CIGS)など他の材料との組合せは、さらる利点を約束する。これは、柔軟、軽量タンデムソーラセルを可能にし、ビルに取り付けられるだけでなく、自動車や可搬機器にも取り付けることができる。そのようなソーラセルは、必要なら折り畳んだり、巻いて保存、延ばすことが可能。たとえば、電気を生成しながら太陽から保護するブラインド、あるいは日よけなどである。

国際研究チームは、ペロブスカイト/CISタンデムソーラセルを使ってピーク効率24.9%(23.5%認定)達成に成功した。研究チーム、リーダー、Ruiz-Preciadoは、「これは、この技術で報告された最高の効率であり、ほぼガリウムフリー銅インジウム二セレン化物ソーラセル、タンデムで達成された初の高効率である」と説明している。ガリウム量を減らすことは、ほぼ1電子ボルトeVの狭いバンドギャップになり、これはタンデムのボトムソーラセルでは理想的な値0.96 eVに極めて近い。

狭バンドギャップCISソーラセル、低臭素ペロブスカイトソーラセル
 バンドギャップは、電気を生成するために、ソーラセルが吸収できる太陽スペクトルの部分を決める材料特性である。モノリシックタンデムソーラセルでは、そのバンドギャップは、最大効率達成のために、2つのセルが同じ電流を生成できるようでなければならない。低い方のセルのバンドギャップが変わると、上方セルのバンドギャップは、それにしたがって調整されなければならない、逆の場合も同様である。

効率的なタンデム統合のバンドギャップ調整のために、高臭素ペロブスカイトが一般に使われている。しかし、これは、電圧損失、位相不安定性につながることがよくある。KITとパートナーの研究者は、ボトムタンデムに狭バンドギャップCISソーラセルを使ったので、低臭素含有量のペロブスカイトからトップソーラセルを作ることができ、それらの効率は高く、安定的となっている。

「われわれの研究は、ペロブスカイト/CISタンデムソーラセルのパフォーマンス可能性を実証しており、さらに効率を改善できる今後の開発に向けた基盤を明確にしている」とKIT光技術研究所(LTI)、マイクロ構造技術研究所(IMT)のUlrich W. Paetzoldはコメントしている。「EUプロジェクトPERCISTANDにおける優れた協働、オランダの応用科学研究機関との密接な協働により、このマイルストーンに達した」。重要な予備作業も国家プロジェクトCAPITANOで実施された。これは、連邦の経済問題と天候保護省(BMWK)の助成を受けている。
(詳細は、https://www.kit.edu)