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Science/Research 詳細

テラヘルツ帯マルチビームアンテナの開発に成功

June, 1, 2022, 札幌--KDDI総合研究所(KDDI総合研究所)と名古屋工業大学は、テラヘルツ帯で電波の放射方向を変更できる、高利得マルチビームレンズアンテナと、小型平面型マルチビームアンテナの開発に世界で初めて成功した。

テラヘルツ帯を用いた移動通信の実用可能性を高めるもので、Beyond 5G/6G時代に求められる超高速・大容量通信の実現への貢献が期待される。

KDDI総合研究所と名古屋工業大学大学院工学研究科 榊原久二男教授、杉本義喜助教らの研究グループは、テラヘルツ帯(300GHz帯)でビーム方向を変更可能なマルチビームアンテナを世界で初めて開発した。高利得なマルチビームレンズアンテナと、小型な平面型マルチビームアンテナの2種類で、両アンテナとも60度の角度(アンテナ正面を0度とし、プラスマイナス30度)でビーム方向を変更できまる。

高利得なマルチビームレンズアンテナは、レンズと1次放射器(ホーンアンテナ)で構成され、接続するホーンアンテナを切り替えることによりビーム方向を変更する。レンズにテラヘルツ帯で誘電損失の小さい素材の選定およびレンズ形状とホーンアンテナの配置の最適化により、ピーク利得が27dBi(全方向に同じ電波強度で放射する等方性アンテナと比較して約500倍)、60度の範囲で利得が22dBi(等方性アンテナと比較して約160倍)以上となる高利得を達成した。

小型平面マルチビームアンテナは、マイクロストリップコムラインアンテナとビーム形成回路で構成され、ビーム形成回路の接続ポートを切り替えることで、ビーム方向を変更する。アンテナとビーム形成回路を層状に重ねた独自構造により、サイズ25mm×17mm×2mmと小型化を図った。

今回の成果により、テラヘルツ帯を使った移動通信の実用可能性が高まる。また、これらのアンテナをスマートフォンや周辺デバイスに搭載することで、「仮想化端末」が可能となり、Beyond 5G/6Gで求められる超高速・大容量通信の実現が期待される。
(詳細は、https://www.kddi-research.jp)