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Science/Research 詳細

光と音で、素早い脳活動の前例のない細部を解明

May, 31, 2022, Durham--デューク大学の研究者は、ハードウエア革新とマシンラーニングアルゴリズムの組合せを使用して、利用可能な最速光音響イメージングツールを実現しようとしている。

デューク大学バイオメディカルエンジニアは、マウス脳内の血流や酸素レベルをリアルタイムでスキャン、イメージングする方法を開発した。これは、個々の血管や脳全体の両方の活動を同時に見ることができる解像度である。

新しいイメージングアプローチは、脳のイメージング技術における長年のスピードと解像度の障害を克服し、脳卒中、認知症、急性脳損傷などの脳血管疾患に新たな洞察を開くことができる。
 研究成果は、Science & Applicationsに発表された。

脳のイメージングは両天秤策である。ツールは、ニュロンの発火、毛細血管の血流など素早いイベントを捉えられるだけの高速性が必要である。また、脳全体であろうと単一の動脈のレベルであろうと、異なるスケールで活動を示す必要がある。

デューク大学バイオメディカルエンジニアリング准教授、Junjie Yaoは、「これらのことは個別に達成できるが、その全てを達成するのは非常に難しい」と言う。「長い間、必要な全てを同時に達成する方法はなかった」。

新しい研究では、Yaoと同氏のチームは、この長年のトレードオフをどのように達成するかを検討し、超高速光音響顕微鏡、UFF-PAMを開発した。

光音響顕微鏡は、光と音の特性を利用して、身体の臓器、組織、細胞の詳細な画像を捉える。同技術はレーザを使って光を標的の組織、細胞に送り込む。レーザが細胞に当たると、それは即座に熱くなり膨張し、超音波となってセンサに戻る。

UFF-PAMは、技術向上のためにハードウエアの進歩とマシンラーニングアルゴリズムに依拠している。ハードウエア側では、ポリゴンスキャニングシステムが、より多くのレーザバーストを広いエリアに送り、同時に新しいスキャニングメカニズムによりレーザスキャナと超音波センサが同時に動作できるようになっている。Yaoによると、これらの変更により、デバイスのスピードは2倍になり、UFF-PAMは、光音響界では最速イメージング技術となっている。

研究チームは、次に、画像の解像度を改善するマシンラーニングアルゴリズムを開発した。チームは、以前の実験で収集したマウス脳の400を超える画像を使って、脈管構造を特定するようにそれをトレーニングした。個々の脳は固有であるが、そのアルゴリズムは、共通の構造を見つける方法を学習し、この知識を使って以前には欠落していたピクセル埋めることができた。

「結果としての画像は、遙かに遅くすれば通常に得られる高解像度画像として細部が見えた。また、全視野を犠牲にする必要がなかった」(Yao)。

概念実証としてチームは、UFF-PAMを使ってマウス脳の血管が、低酸素症、薬剤誘発低血圧や虚血性脳梗塞にどのように反応するかを視覚化するためにUFF-PAMを使った。低酸素症問題の間、UFF-PAMは酸素が脳をどのように動くかを追跡し、血管拡張による酸素レベルが低下することを示した。

第2の問題ではチームは、薬剤ニトロブルシトナトリウム(SNP)を使用した。これは高血圧の治療に一般に使用されている。以前は、研究者は、SNPが脳内の全ての血管を拡張させると考えていた。しかし、研究チームは、むしろ、比較的大きな血管だけが開き、それに対して小さな血管は収縮することを示した。

「われわれは、小さな血管の高解像度画像を素早く見たので、拡張は、実際には薬剤に対する普遍的な反応ではないことがわかった。これらの小血管は、十分な酸素と栄養素を組織に供給できなかったので、そのことが損傷の原因となった」(Yao)。

最終の課題でチームは、UFF-PAMを使って、脳が卒中にどのように反応し回復し始めるかを観察した。チームは、脳卒中後直ぐに、影響を受けた領域の血管が収縮するのを見た。これが原因で隣接血管も拡散脱分極波という現象で、縮小する。大きな視野と高速イメージングによりチームは、波の出発点を正確に特定し、波が脳を伝播するにともない、その動きを追跡することができた。

今後、チームは、UFF-PAMを使って、認知症、アルツハイマー病、長期COVIDなど、特別な脳疾患モデルの探求を目標にしている。そのツールの利用を脳以外にも拡張して、心臓、肝臓、骨盤などの臓器のイメージングをする計画である。これらの臓器は、伝統的にイメージングが難しかった。それらが常に動いているからである。したがって、イメージングツールは、より高速に動作する必要があった。

「この長年の障害に対処できたのだから、われわれがこの技術でできることはたくさんある。われわれは、この技術の影響を最大化するために最も難しいプロジェクトを取り上げようとしている」とYaoはコメントしている。
(詳細は、https://pratt.duke.edu)